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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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90/92

episode90

「それで?今になって剛の前に姿を現したのには何か意味があるのか?」


凛太朗さんが涼香さんにそう尋ねると涼香さんは口をもごもごと動かし言いづらそうにしていた。


「...私は...私はただ、剛の様子が見たくって...」

「オレはホンネを聞きたいのだが?」

「そ、それは...」

「当ててやろうか?剛を引取りに来たんだろう?」

「「?!」」


オレと叶弥は驚愕した。剛が来てまだそんなに経っていない。一体どういう事なのか...。


「い、今お付き合いを始めた男性がいるの。本当、ごく最近。それで彼、不妊症らしくって自分の子が持てないんですって。...剛の話しをしたら是非養子に迎えたい、と...」


「借金もどうにかしてくれるって。だから!」と涼香さんは顔を明るくして凛太朗さんに近寄った。


「だから、なんだ?お前は自分の勝手で剛をウチに置き去りにしたんだぞ?」

「でも彼と結婚したら、剛には父親が出来るわ!やっぱり本当の家族と一緒にいるのが一番いいに決まっているわ!そうよ、ね?剛?!」


カンペキに目がイッてしまっている。そんな顔の母親を見た剛は怯えてしまっていた。先程までの優しい面影が無くなっていた。


「剛!お母さんと一緒に新しいお父さんと暮らしましょう?前よりも...ううん。今よりもうんと幸せに暮らせるわ!」


そう言いながら涼香さんは剛に詰め寄った。...剛はそんな母親に、涼香さんに恐怖心を抱いたのか、オレの後ろへと隠れてしまった。


「剛...?どうして隠れるの...?お母さんに会いたかったでしょう?」

「今のお母さん怖い!オレ、ここにいる!けーじときょーやとおじさんと一緒にいる!!」


剛の発言に涼香さんはカッとなり、顔を赤く染めながら怒り任せに剛を叩こうとした。...しかし、間一髪。オレがその手を取ったのだ。


「!離して!...離しなさい孤児の癖して!興信所使って調べたから知っているのよ!どうやって兄さん達に取り入ったか知らないけれど、私は騙されな...!!」


涼香さんが全部言い切る前に叶弥が涼香さんにビンタをかました。


「...アンタも駆け落ち相手が死んだんだから分かるはずだろ?京司は両親を亡くしたんだ。...今までどれだけ辛い思いをしたと思ってやがる...!!」

「涼香。オレもお前の言葉は許せない。...いつからそんな風になっちまったのか...。悪いが剛はお前さんに渡せない。」

「そ、そんな...ねぇ、剛?剛はお母さんと一緒にいたいわよね...?!」


涼香さんはそう剛に言い寄り手を伸ばした。が、剛の小さな手はその手を取ることなく、弾き返したのだった。


「けーじに..."オレの家族"にそんな酷い事言うヤツはオレのお母さんじゃない!」


剛の拒絶の言葉に、涼香さんはただただ絶望したのであった。

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