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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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89/92

episode89

女性は急いで立ち上がると逃げるように走り出した。しかし、いち早く叶弥が反応し、女性の後を追いかけた。そして、叶弥が女性に追いつき、腕を掴むと女性はピタリと動きを止めた。


「アンタ...もしかして剛の母親の"涼香さん"か?」

「...」

「黙りか?無言は肯定ととらえるぜ?」


女性は、"涼香さん"は叶弥の問いかけに一切応えない。オレは剛を連れ二人の元へと近寄ると、剛は...静かにオレの手を離した。そしてゆっくりと涼香さんに歩み寄り、「お母さん」と呼んだ。その瞬間、涼香さんはバッと剛を見て涙を流した。


「つ...つよし...!」

「お母さん!!」


剛と涼香は涙しながら抱き合って離れる事がなかった。


「...オレ前園に連絡するわ。」

「あぁ、よろしく。」


叶弥が前園に連絡を入れると、すぐさまリムジンが此方に向かってきた。そしてオレ達の前で停ると、中から凛太朗さんが現れた。


「涼香!!」

「に、兄さん...」

「お前、一体剛を置いて何していたんだ!」

「ご、ごめんなさい!!生活が苦しくて...!剛だけでも平穏な所で暮らして欲しくて...!!」


「家出した身でお願いするのが忍びなくて...」と涼香さんは涙ながらに話し始めた。すると凛太朗さんは涼香さんにビンタをしたのだった。オレ達が驚き固まっていると凛太朗さんは涙を流しながら「バカヤロー!」と叫んだ。


「いくら家出してようがな、家族は家族なんだよ!今の今まで心配しない日は無かった!辛いなら頼って欲しかったぞ!...今からでも遅くない。ウチに帰ろう。な?」

「でも、でも借金が...」

「どうせ駆け落ち相手がこさえたモンなんだろう?」

「...剛の父親でもあるの。...でももう亡くなってしまっていて...」

「なんでそん時に頼ってくれなかったんだ?」


凛太朗さんがそう尋ねると涼香さんは「ごめんなさい」と言うばかり。すると、剛が凛太朗さんと涼香さんの間に入って涼香さんを庇うように両手を広げた。


「おじさん!お母さんをしからないで!お願い!!」

「剛...」


剛の健気な姿に凛太朗さんも叶弥もオレもどうする事が出来なかった。


「...とりあえず組に帰るぞ。全員車に乗れ。」


全員、凛太朗さんの指示に従うしか無かった。果たしてこれからどうなってしまうのか...。

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