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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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88/92

episode88

それから一週間、一ヶ月と経ち、剛も問題なく幼稚園に通っている。オレの方も叶弥のペアリング攻撃のお陰で太一先生から「悔しいけれど...お二人を応援します...!」と言われ、晴れて好き好きアタックから開放されたのであった。今日も今日とて、オレと叶弥で剛を迎えに幼稚園へとやってきた。幼稚園のママさん達との関係は良好で、「今日も仲が良いわねぇ」「ラブラブで羨ましいわぁ」と声をかけられるようになった。


「太一先生、こんにちは。」

「あぁ!京司さん、叶弥さん!学校お疲れ様です!」

「剛、今日はどうでしたか?」

「それはもう元気いっぱいでしたよ!剛くーん!お迎えだよー!」


太一先生が声を上げると遊具で遊んでいた剛がこちらに気がつき笑顔で駆け寄ってきた。するとオレの足に抱きついて、「けーじ!きょーや!おかえりなさい!」と言ってくれた。なんともまぁ、癒される...。


「剛。先生とお友達にさよならしような?」

「先生!皆!また明日ー!」

「バイバイつよしくん!」

「バイバーイ!」


こうしてオレ達は幼稚園を後にした。...しかし、その時だった。何やら視線を感じたのである。オレはバッと後ろを振り向くが...誰もいない。


「京?どうした??」

「いや、何か視線が...」

「視線?」

「...気のせいだ。悪い。」


オレがそう言うと叶弥も後ろを見た。


「...たしかに誰もいねぇな?」

「だから悪かったって。」

「別に責めてるわけじゃねぇよ?」


「お前が間違えるなんて珍しいな」と叶弥がそう言うと、自画自賛では無いがオレでもそう思う。


「まぁ、早く帰って夕メシの支度してくれよ。今日の夕メシはなんだ?」

「今日は肉じゃが。凜汰朗さんからのリクエストなんだよ。」


...そうなんでもない会話をしながら前を向く。そしてオレは道端に落ちている石を拾うと後ろに向かって投げつけた。すると「キャッ!」と言う声とドサリと座り込む音が聞こえた。やはり感じた視線は勘違いでは無かったようだ。オレ達は後ろを振り向くと先程までいなかった女性が姿を現した。


「誰だ、アンタ?」

「ヒッ」

「おい、叶弥凄むなって。」

「...さん?」

「え?」


オレと叶弥が女性に詰め寄っていると、剛が目をまん丸に見開きながら呟いた。"お母さん"、と。

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