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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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85/92

episode85

帰り道、剛はとてもご機嫌であった。今日は〇〇君と〇〇ちゃんと何して遊んだ、初めて食べる給食は美味しかった、などなど。オレの心配は杞憂に終わったようだ。手を繋ぎながら歩いていると、とあるママさん集団がオレ達3人を見ながらヒソヒソしている。...なんだか良くない感じがする。オレが其方をみているのに気付いたママさんのうちの一人が近付いて来た。


「こんにちはぁ。今日から入園してきた剛君、だったかしら?」

「あ、はい。こんにちは。」

「こんにちは!」

「あら元気が良い事。...ところで、"五十嵐"ってもしかしてあのヤクザの"五十嵐組"の方かしら?」


ビンゴ。考えていない訳ではなかった。ママさんの中には極道をよく思っていない人もいるだろう、と。


「ちゃんと躾てらっしゃる?ヤクザって乱暴でしょう?ウチの子に影響がないか心配だわぁ。それに、」

「...それに?」

「父親も母親もいない子なんて、ねぇ?」

「...黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがって...!」

「だって本当の事でしょう?それに朝、太一先生に言ってたのが聞こえたけれど...貴方達、恋人同士なんですって?男同士で...嫌だわぁ...。」


このママさんを囲っていたママさん達も、うんうんと頷いている。...どうやら彼女がここのボスママさんのようだ。


「けーじ?きょーや?」

「剛。大丈夫だからな。」

「実の親がいないから親子ごっこするには持ってこいなのかしらねぇ?」


...言わせておけば言いたい放題。オレも叶弥も我慢の限界に達していた。オレ達が言葉を発そうとした時、騒ぎを聞きつけた園長先生と太一先生がやって来た。


「一体なんですか?...あぁ、また貴方達でしたか。他の保護者の方のご迷惑になる事はしないように言いましたよね?」

「で、ですが子供の教育に悪いじゃないですか!」

「いつの時代の話しをしているのですか?今は多様性の時代ですよ?それに同性カップルなんて珍しくも無いです。」

「そうですよ!それに、ぶっちゃけ貴方達より京司さんの方が魅力的ですよ!」

「...太一。」

「おっと、失礼いたしました。」


園長先生と太一先生の迫力のお陰もあってか、ボスママさん達は顔を真っ青にして「す、すみませんでした!」とそそくさと去って行った。


「けーじ、きょーや、お話し終わったか...?」

「!剛。ごめんな?怖かったよな。」

「ううん。オレは大丈夫。でも、けーじもきょーやも悲しそうな顔してる。」


子供は目ざといな。そう思っていると、園長先生がオレ達に声をかけてきた。


「叶弥君、京司君。何も気にする事はありません。私達は貴方達を応援しますよ。ね、皆さん。」


園長先生がそう言うと園に残っていたママさん達は「もちろんですよ!」「むしろありがとう!」と声をかけてくれたのであった。...「ありがとう」とはどういう事だろうか?気にしてはいけない気がしてオレ達は皆さんに挨拶をして組へと三人仲良く手を繋いで帰った。

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