episode83
「...ハァ...」
「おいおい、五十嵐。田河のヤツなんか悩ましげなため息ついてるけどなんかあったん?」
「あぁ...。オレの甥っ子が今日幼稚園に入園だったんだが...厄介な先生がいてな。」
「厄介?」
「...オレの京にガチ惚れしやがった...!!」
当の本人であるオレを放置して叶弥がクラスメイトに朝の出来事を話している。遅刻確定かと思っていたが時間をきちんと見ていなかっただけで普段通りの時間に登校することが出来た。今オレがため息をついているのは太一先生ではなく、剛が幼稚園に馴染めているかどうかが心配なだけだ。
「田河ー。お前モテるなぁ、"男"に。」
「...おい、一言余計だぞ。好きで男に言い寄られてる訳じゃない。」
男にモテて嬉しい訳がない。あぁ、まだ一日が始まったばかりだと言うのに剛の迎えに行くのが段々億劫になってきた。しかし、剛の顔を早く見て今日一日どうだったか聞いてやりたい。
「...ハァ。」
「マジで大丈夫か?」
「剛ぃー...」
「剛って?」
「オレの甥っ子。京に懐いてんだよ。」
そうしている時だった。大森が廊下から「田河ー。」と呼んできたのだ。
「?なんスか?」
「いや、里倉先生の件でな。一応学校側では"里倉先生は自己都合により急遽退職"という事になったんだが...あれから接触されたりしてないか?」
「あ、はい。それは大丈夫です。何かあっても叶弥も五十嵐組の人間もいるので。」
「...確かに心強いっちゃあ、心強いな。」
「まぁ、何かあったら遠慮なく相談しろよ?」と言うと大森はオレの頭に手を乗せてきた。
「ちょっと...大森。何京にセクハラしてんだよ?」
「セクハラって酷いな?!」
「やーい!セクハラ教師ー!」とクラス中が大森をからかい始めた。何ともまぁ、賑やかなクラスである。そうこうしているうちに始業のチャイムが鳴った。
「それじゃあ、お前ら。しっかり授業受けろよ?」
「居眠りなんて以ての外だからな?」と言うと大森は教室を後にした。オレらも席に着いて1限の開始を待つのであった。




