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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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80/92

episode80

それから日々は過ぎ、月曜日。つまり剛の幼稚園入園の日がやってきた。剛は朝からソワソワと落ち着かない様子だ。その証拠に朝メシがなかなか進んでいなかった。


「剛、早く食わないと幼稚園に遅れるぞ?」

「!だ、大丈夫だ!今食う!」

「お前でも一丁前に緊張するんだな。」

「き、緊張じゃねーし!」


剛は叶弥に発破をかけられ一気にメシをかき込んだ。そう言えばここに来る前は幼稚園などには通っていなかったのだろうか?ふと疑問に思ってしまい、オレはつい剛に問いかけてしまった。


「剛、もしかして幼稚園初めてか?」

「!」

「?だってコイツの親働いてただろ?幼稚園行かせないでどうするんだ?」

「...ない。」

「え?」

「...お母さん、働いてない。せーかつほご?ってやつもらってた。」


オレはしくじった、と思った。どうやら触れてはいけないところに触れてしまったらしい。何故なら剛の顔が曇ったからだ。オレはなんて声をかけたらいいか分からないでいた。しかし、それも一瞬で、剛はニパッと笑うと「緊張はするけど楽しみなんだ!」と言ってのけた。


「...男前だな、おまえは。」

「!おう!オレは強いからな!」

「"つよし"だけにってか?」

「...叶弥、寒い。」

「さむーい!」

「んだと、コラ。」


そうしていつも通りの朝メシの光景に戻るとオレは安心した。オレ達が朝メシを食い終えた頃、前園がオレ達の元へとやって来た。


「若、京司さん。もし良ければ剛坊ちゃんの送迎をお願い出来ませんか?」

「別にいいけど...何かあったのか?」

「いえ...何かあったと言う訳では無いのですが...その、私達が行くとカタギの皆さんを驚かせてしまって、剛坊ちゃんの友達作りに支障が出てしまうのではないかと...。」

「なる程な。分かった。剛の事はオレ達に任せてくれ。」


そう言うと前園は安心したようで「よろしくお願いします。」と言って剛をオレ達に託すと仕事へと向かっていった。


「それじゃ、オレ達も行くか。剛、準備は出来てるか?」

「おう!完ぺきだぜ!」


オレは剛の手を取り玄関から出る。すると、剛と繋いでいない方の手を叶弥が握ってきた。


「...オイ、叶弥。何してるんだ?」

「何って。手ェ繋いでる。」

「子供じゃないんだから離せ。剛に笑われるぞ?」

「京と手を繋ぎたいと思うのは男として当たり前の事だ。な?剛。」

「きょーや、大人は子供と手を繋ぐんだぞ!ホラ!オレが手ェ繋いでやる!」


剛の発言に、鳩が豆鉄砲を食らったかのように目を丸くした叶弥は「ハイハイ。」と言って、オレの手を離し、剛と手を繋いだ。剛はそれが嬉しいようで、叶弥も満更でもない様子だ。


「まるで本当の親子みたいだな。」


そう言ったのは見送りに来た凛太朗さんであったのだった。

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