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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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episode69

「昨日、剛のヤツ大丈夫だったか?」

「え?」


学校へと向かう道すがら、叶弥からまさか剛の名前が出るとは思わなかったため驚いてしまった。


「あ?なんだよ、"え?"って。」

「いや...まさかお前の方から剛の事を気にかける言葉が出てくるとは思わなくて...。」

「あー...。なんつーか、京もガキの頃に両親亡くしたじゃん?だから、少し面影が重なってな...。」

「叶弥...」


本当に叶弥の"生"はオレを中心に回っているなと思った。それが申し訳なくも嬉しくもある。そんなオレはズルい男であろうか...。まぁ、そんなオレも叶弥が中心になっている事はバレないようにしなくては。小っ恥ずかしいからな。


「まぁ、夜に母親を想って泣いてたな。でも抱きしめたら落ち着いたみたいですぐ泣き止んだよ。」

「そうか...。て、抱きしめる必要はねぇだろ!」

「それが一番手っ取り早いだろ?」

「...。」

「ん?どうした?」

「いや。オレも泣けば京が抱きしめてくれるかと。」

「こんな公衆の面前で出来るか!」


なんともまぁ、子供じみた言い分であろうか。子供ならまだしも、男子高校生の言う事では無いだろう。オレは呆れながら声を荒らげた。


「...お前も大人になったと思ったんだけどなぁ...。オレの気の所為だったか...。」

「あ?なんだよ。ガキではねぇよ。」

「...いや、剛といい勝負だと思うけど。」

「んだと?!」

「オーッス。五十嵐に田河。朝から夫婦喧嘩か?」

「いや、夫婦漫才かもよ?」


気付いたら学校の近くまで来ていたようで、クラスメイトから声をかけられた。


「お前ら...なんでそう"夫婦"で一括りにするんだよ...。」

「何言ってんだよ京。オレらはどっからどう見ても"夫婦"だろうが。」

「もう好きに言ってろ...。」

「あら、奥さん。もう反抗はやめたんですね?」

「認めるのはいいことですわよ?」


クラスメイトは悪ふざけの口調でオレを煽ってきた。だが、オレは逆に冷静になり、叶弥とクラスメイトを置いて校門をくぐった。


「おーい、置いてくなよ京ー!」

「知るか。」


オレは目を伏せながら歩いていた。その時だった。"ドン"と誰かとぶつかってしまったのである。


「痛ってぇ...。すみません。大丈夫ですか?」

「こちらこそ。申し訳ないのですが校長室はどこでしょうか?」

「...えっと...」

「あ、すみません。私は"里倉 久"と言います。今日からこの学校に赴任して来ました。」


どうやらぶつかったのは新任の教師らしい。たしか産休に入る教師の代わりが来る予定と聞いていたが今日からだったとは。


「良かったら案内します。」

「それは助かります。...えっと...」

「1年の田河です。」

「...田河?」

「?ハイ。」


里倉はオレの名を口にすると、オレを上から下まで見てきた。それを不審に感じた叶弥がオレと里倉を引き離した。


「おい。何ジロジロ見てるんだよ?」

「あぁ、ごめんよ。田河君、もしかしてお父さんの名前は明斗、お母さんは都じゃないかい?」

「え...。そうですけど...。」

「てことは京司だね?!私は君のお母さんの弟で君の叔父だよ!」


その言葉にオレと叶弥は絶句したのだった。

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