episode66
風呂から上がり、剛に寝巻きを着せ、頭をドライヤーで乾かしているうちに剛はコクリコクリと船を漕いでいた。
「ほら、剛。まだ寝ないの。」
「んー...うん。」
「あと少しだからなー。」
そうして、剛の頭を乾かし終えると剛はもう目が開いていなかった。オレは仕方ない、と思い剛を抱き上げると叶弥に声をかけ自室へと向かった。そして剛をベッドに寝かせると、オレもその横に横たわって目を瞑った。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。グスッグスッと言う音に目を覚ました。横にいる剛を見ると、涙を流していた。
「...さ、ん...おかあさん...」
剛の口からは母を呼ぶ声が漏れていた。それはそうだろう。突然母がいなくなり、知らない人ばかりがいる、知らない場所に置いていかれたのだから。オレも経験が無い訳ではない。けれどオレの場合と剛の場合、年齢が違う。小学生であったオレも寂しさに泣くことが無かった訳ではないが、オレには同い年の叶弥がほぼ常に隣にいてくれた。でも剛には年の離れた人間しかいない。それにここには、母親代わりになるような女性もいないのだから。
「剛...大丈夫だからな。」
オレはそう言うと、剛をそっと抱きしめた。すると無意識か、オレの服をギュッと掴んできた。そして、静かな寝息が聞こえてきた。オレはそれにホッと安堵すると、再び眠りについた。
翌朝、オレはいつも通りに目を覚ますと剛を起こさないようにそっとベッドを抜け出し、制服へ着替えキッチンへと行こうとした。か、しかし剛が起きた時オレがいないと不安になるだろうと思い、少し早いが剛を起こす事にした。
「剛。朝だぞ、起きれるか?」
「んー...けーじ?あさぁ?」
「あぁ。オレは朝メシと弁当を作りに行かなくちゃいけないんだが...」
オレが言葉を続けようとしたその時だった。部屋のドアが開かれ、叶弥が入ってきた。
「京、はよ。メシの仕度あんだろ?剛はオレが見とくから行ってこいよ。」
「え?いいのか?大丈夫?」
「心配いらねぇよ。ホラ。行ってこい。」
そう叶弥に言われ剛を叶弥に任せると、オレはキッチンへと向かった。すると朝メシの当番だった若衆がオレの姿を見るなり「おはようございます!」と声をかけてきた。オレはそれに応えると早速料理へと取り掛かったのだった。




