episode63
「ただ今帰りました。」
「ただいまー!」
「おう。京司、剛。おかえり。京司なんか汚れてんぞ?」
「あぁ...。ちょっとありまして。」
オレが言葉を濁そうとしたが、剛が「あのな、あのな!」と意気揚々と話し始めた。
「けーじ強ぇんだぜ!デカイクマみたいな男をこてんぱんにしたんだ!かっこよかった!」
「...京司。また絡まれたんか。」
「...ハイ。」
「まったくお前は...」と凛太朗さんは呆れ返って、「まだここらでお前に喧嘩売るバカがいるのか。」と口にした。
「剛の前ではしたくなかったんですけどね...。変に剛に危害を加えられるよりはまだ...。」
「たしかにな。」
「あのな、あのな!オレもケンカおぼえたい!」
「「え」」
「強くなって、今度はオレがけーじを守るんだ!」
「剛...」
オレは剛の可愛らしい申し出に愛しさを覚えた。もしかしてこれが母性本能ってやつか...?
「あのな、剛。ケンカってのはしない方がいいんだぞ?たしかに京司が強くてかっこいいから憧れるのは分かるがな。本当は暴力以外で解決しなきゃならねぇんだ。分かるか?」
「...でも、オレ強くなりたい。」
「なら、柔道とか空手を習うのはどうだ?それならオレは反対しない。どうだ?」
「..!強くなれる?」
「あぁ。なれるさ。」
凛太朗さんはそう言うと剛の頭をポンポンと叩いた。剛はその手に目を細めながら笑うと凛太朗さんに抱きついた。
「オジさん!オレ、じゅーどーとからてやりたい!」
「分かった。でもまずは幼稚園に通わないとな。」
「ようちえん?」
「そうだ。同い年の友達いっぱい出来るぞ?」
「友達...!!」
剛は凛太朗さんの言葉に目をキラキラさせながらオウム返しした。たしかに組にずっといると世話が出来るヤツが限られてくる。オレと叶弥も学校があるから相手をしてやることが出来ない。だから幼稚園に通うのは賛成だ。
「剛。幼稚園は楽しいぞ?友達が出来るのもそうだし、園には色んな遊具がある。それに給食だって出るんだぞ?」
「けーじも行ってたのか?」
「あ。好きだったよ。男の子とも女の子とも仲良くなれるし、組にはいないような優しい先生もいる。それに、オレも平日は学校があるから剛と遊んであげられないんだ。」
「え...。けーじと遊べないのか...?」
オレの言葉に剛はショックを受けたようで、ションボリしてしまった。
「オレも剛と離れるのは寂しいけど、新しい世界を見るのは大切な事だぞ?送り迎えはしてやるから。な?」
そう言うと剛は「それなら...。行く!」と元気よく言った。それに安堵したオレと凛太朗さんであった。




