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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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62/65

episode62

「剛、昼メシ何食べたい?」

「んーと...オムライス!」

「オムライスか。いいな。...剛?」

「...」


スーパーに辿り着いた時は元気よく歩いていたし、何を食べたいか聞いた時もハキハキと明るく応えていた。しかし、スーパーは親子連れが多い。剛の視線の先にいたのは母親とその子供だった。その光景を見る剛はなんだか寂しそうで...やばり母親が恋しいのだろう。オレは出来るだけ優しい声で「剛。」と名前を呼んだ。すると剛はハッとして「なんだ?!」と元気に聞いてきた。オレは剛の頭を撫で、剛の手を取りアイス売り場に来た。


「好きなアイス選んでいいぞ?」

「!...で、でもごはんの前に食べたら昼メシ食えなくなる...。」


これは涼香さんの教育の賜物だろう。そんな剛にオレは「今日だけ特別。オレも食べたいなー。でも一人で食べるのはなぁー」と言うと、剛は「し、仕方ねぇ!けーじが食いたいなら一緒に食ってやる!」そう言うと剛が選んだのはふたつに分けて食べられる物だった。「これなら一緒に食えるだろ!」とドヤ顔で言ってきた。


「剛は優しいなぁ。俺の事も考えてくれたのか?」


そう言うと、剛は顔を赤くし小さく頷いた。その様子がとても可愛らしくて、おれはしゃがみながら剛を抱きしめ頬づりをした。


「けーじ!さすがに恥ずかしいぞ!」

「いいじゃないか。オレがしたいの。」

「だったら...おりゃ!」

「!」


剛はオレを思いっきり抱きしめ返してきた。そんなオレ達を周囲の人々は温かい目で見守っていた。それはオレ達を隠れて護衛している若衆もであった。そうして買い物を終わらせ、アイスを食べて家路についているところだった。後ろから「オイ」と声をかけられた。


「お前、五十嵐の女だよなぁ?」

「...女じゃねぇよ。」

「悪い悪い。ま、でも女みたいなもんだろう?五十嵐 叶弥とデキてるってここらじゃ有名だぜ?」

「...なら、オレの二つ名も知ってるよな?」

「"五十嵐組の番犬"、だろ?まさかこんなヒョロいヤツがケンカ出来るとは思わねぇがな!」


声をかけてきた男は思いっきり走り出し、その勢いのままオレに殴りかかろうとしてきた。オレは買い物袋を地面に置くと、遅れてきた護衛の若衆が剛を抱き抱えたのを見届ける。と、その拳を受け止め、腕を引き腹に思いっきり蹴りを入れた。すると男の仲間らしきヤツらが続々と出て来たので、次々と薙ぎ払っていく。そして屍の山が出来上がるとオレは身体のホコリをはらった。剛を怖がらせたかな...と思ったが、剛はオレをキラキラした目で見てきて、「スゲェ!スゲェ!」とはしゃいでいた。


「剛、怖くなかったか?」

「全然!けーじ、強ぇんだな!」


そう言うと剛は思いっきり俺に抱きついてきた。


「京司さん、スンマセン...お役に立てず...」

「いや、剛を守ってくれてありがとな。」


そうして屍の山を放置し、帰路へとついたのだった。

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