episode60
「たく...。なんなんだあのクソガキは...」
「...叶弥、そろそろ痛ェんだけど...」
叶弥は剛が口づけてきたオレの頬をゴシゴシと拭いながら剛が去っていった方へと睨みをきかせていた。
「それにしても...オレに叔母がいるなんて知らなかったぞ。」
「わるいな。あいつ、高校卒業してから姿を眩ませたからな。オレもガキが出来てたのは知らなかったんだわ。」
「でも、なんで縁を切った実家に我が子を預けたんですかね?」
「さぁな...」と凛太朗さんは食後のお茶を飲みながら遠くを見た。
「でもホントにウチの血を継いでるガキなんか?ホントにその叔母ののガキって言う証拠は?」
「オレも最初は疑ったんだが、見れば見るほど妹...涼香のヤツに似ててな...。それに手紙と一緒に妹一家の写った写真が入ってたからな。」
「確実な証拠ですね。」
「それにしても...なんかやけに京に懐いたな。ほんの数分しか会ってないのに。」
「あぁ...。多分だが京司が涼香の雰囲気に似てるんだよ。」
オレは思わず「えっ...」と声を漏らした。たしかに成長するにつれ、凛太朗さんの俺を見る目がなんだか懐かしいものを見る目になってきていたのには気づいていた。成程。それが理由だったわけか。
「そんなにその涼香さんに似てるんですか?」
「纏ってる優しい雰囲気がな。あと、そんな中にもある姐御肌とかな。」
「凛太朗さん。オレ、女じゃないです。」
「ハハッ。悪い悪い。でもホント、オレも涼香の面影を感じることがあるからさ。出来なかった分、お前を甘やかしてやりたくなる。」
凛太朗さんはそう言うと、オレの頭を撫でてきた。オレはそれが擽ったくってついつい、「子供扱いはやめてくださいよ。」と言ってしまった。でも、オレの顔はふにゃふにゃになっていたらしく、凛太朗さんは「ガハハ」と笑いオレの頬をムニムニと弄んだのだった。それを見た叶弥は面白くないと言わんばかりにオレと凛太朗さんを引き離した。
「オヤジ...京に手ェ出すんじゃねぇよ。京も京だ。オヤジに好きにさせてんじゃねぇよ。」
「何言ってんだよ叶弥。オレは将来の息子の嫁さんにスキンシップをとってるだけだ。なぁ?京司。」
「...凛太朗さん、だからオレを女扱いしないでくださいよ。」
「京司はホントに可愛いなぁ。五十嵐の女に近づいてきてるぞ?涼香もだし、亡き妻にも似てきてる。」
凛太朗さんの"亡き妻"発言に叶弥は反応を示した。
「...オレのお袋にも似てんの?」
「ん?あぁ。勝気な所とか笑った所とかな。」
「ふーん...」
「まぁ、京司も組に染まってきたってことだな。ガキの頃から率先して家事してくれてるから、もう京司のメシじゃねぇと満足できねぇわ。」
凛太朗さんはいつもオレにとって嬉しい言葉をかけてくれる。だが、恥ずかしさが勝っているので顔は火照りっぱなしであった。




