episode57
体育祭の代休として、休みになった月曜日。オレは窮屈さに目を覚ますと、身体をガッチリホールドされているのに気がついた。その正体は言わずもがな叶弥である。オレはそのホールドを無理矢理とき、叶弥をベッドから蹴り落とす。
「...痛ェ...」
「なんで毎日毎日オレのベッドに入り込むかな...」
「恋人なんだし、良いじゃねぇか。それに休みだ。もう少しゆっくりしても...」
「皆の朝メシ作らなきゃだし、オレもう行くな。」
「おい...」
オレは叶弥を軽くいなして部屋を後にし、キッチンへと向かう。キッチンには当番の若衆も来ていて、「おはよう」と挨拶すると、「京司さん!おはようございます!」と朝から元気のいい返事が返ってきた。オレはエプロンを身につけ調理を始めた。しばらく若衆らと雑談しながら料理をしていると、キッチンに叶弥と凛太朗さんが顔を出してきた。
「おはようさん。今日もいい匂いさせてんなぁ。京司、まるで若妻みてぇだな...。どうだ?今からオレの嫁さんになるか?」
「おい、オヤジ。京はオレの嫁なの。変な目でみるなよ。」
「心の狭い男は逃げられるぞ?な、京司?」
「...いや、凛太朗さんも冗談が過ぎますよ。叶弥も本気にすんなよ。って、二人してオレのケツ撫で回すのやめて貰えますかね...!」
「「そこに良いケツがあったから。」」
「...ハァ...もういいです。もう少しでメシ出来ますから広間で待っていてください。」
オレはそう言うと二人をキッチンから追い出した。
そして調理を終えると他の若衆らも呼び、料理を運ぶように指示を出した。そして広間に料理と若衆らが揃うと、朝メシを食べ始めた。
「叶弥に京司。今日は何か予定あるか?」
「いや、ねぇけど。な、京。」
「はい。今のところはなにも。」
そう言うと凛太朗さんは「それは丁度いい!」と言って言葉を続けた。
「実はお前たちに頼みたいことが...」
そう話しをしようとした次の瞬間、廊下からドタドタと走る音が聞こえてきた。
「なんかいい匂いがするー!オレもたべるー!!」
「「?!」」
「おい、剛。こっちに来い。」
「?ハーイ!」
凛太朗さんがそう言うとその子供を呼び寄せた。
「オヤジ、そのガキは?まさか...隠し子?!」
「んな訳あるか。バカが。こいつは剛。オレの年の離れた妹の子供...まぁ、甥っ子だ。」
「え?!オヤジ妹いたんか?!」
「あぁ...。極道の家が嫌だと言って自分勝手に縁を切っていたんだが...手紙によると剛の父親が亡くなって、一人で育てられないから...と。」
「...ウチに置いてったってことか?」
「あぁ...」
凛太朗さんと叶弥はオレを見た。親を亡くした経験があるオレに気を使っているらしい。オレは席を立ち、凛太朗さんの横にいる剛と目線を合わせると、
「一緒に朝メシ食うか?」
とできるだけ優しい笑みで問うた。




