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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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53/66

episode53

それから午前の競技は赤組のぶっちぎりの高得点で終えた。応援団の皆からは応援団長を筆頭に「田河のお陰だ!」「出来ればごごもお願いしたかった...」と口々に声が上がった。オレは速攻でウィッグを取り、叶弥の手を引き教室へと戻った。そして人目を気にすることなく、チア衣装からジャージへと着替えたのであった。周囲からは「もったいない...」と言う声が漏れたのには聞こえないふりをした。叶弥は叶弥で写真部のヤツに「京のチア撮ったよな?いくら欲しい?ネガごと買い取ってやる。」と意味不明なことをしていた。そこへドタドタと廊下から走ってくる音が聞こえてきた。...言わずもがな財前である。


「京司さん!あの格好はなんなんすか?!ってもう着替えてる?!もったいない...」

「財前、お前もか...」


おれは財前にそう言いながら蹴りを入れた。


「いやいや!だって京司さんの女装なんてレア過ぎて...」

「もういい黙れ。」

「おい、財前。京の女装を見ていいのはオレだけだ。」

「...叶弥、お前も何意味不明なことほざいてんだ...」


財前だけでなく、叶弥にも呆れながらオレは弁当を食べ始めた。それにならって叶弥も弁当を広げた。


「いいなぁ、京司さんの手作り弁当...」

「やんねぇぞ。これはオレの特権だからな。っておい、京、何玉子焼き食わせてんだよ。」

「別に良いじゃねえか。オレの弁当なんだし。」

「メッチャ美味いッス!」

「京の弁当が不味い訳ねぇだろ。」

「...なんでお前がドヤってんだよ。ホラ、財前。早く昼メシ食いに教室戻れ。」


オレがそう言うと、財前は名残惜しそうに「...ッス」と声を漏らし教室から去って行った。


「...いやぁ、それにしてもあのケンカ狂の財前先輩を意図も簡単にあしらうとは流石田河だな。五十嵐の妻なだけある。」

「...おい、なんだつまって。」

「え?だってお前ら夫婦だろ?」

「お前...わかってんなぁ。」


夫婦扱いしたクラスメイトにオレは不服を申し出し、叶弥は感心した言葉を投げかけた。


「オレらが夫婦ってことは、京の舎弟の財前はペットだな。」

「あんな手のかかるペットは飼いたくねぇ。」

「だからって子供にはしたくねぇな。お前のこと取り合いになりそうだし。」

「...ペットもさほど変わりなくね?」

「それもそーだな...」


叶弥は弁当を食べていた手を止め真剣に考えていた。


「おい。何そんなに考えてんだよ。財前の立ち位置はどうでもいいんだよ。」

「いや、財前だけじゃなくてさ。お前って組のヤツらにも世話焼くし、最早"オカン"だなって思ってさ。」

「お前らみたいなデカくてヤンチャが過ぎるガキいてたまるか!」


「あ、怒るのはそこなのね」とクラスメイトは声を上げ、オレはそれに対し、「い、いや、オカン扱いも嫌だからな!」と言い返した。


「まぁ、カッカすんなや。早くメシ食わねぇと間に合わなくなるぞ?」

「くそっ...叶弥に諭されるなんて...」


オレは肩を落とし、残りの弁当に手をつけた。

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