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その番犬、狂暴につきまして。  作者: 朱音小夏


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episode39

オレは目を覚ますとベッドの上に寝かされ、手を縛り頭上で固定され、口には枷がされていた。辺りを見渡すと部屋は暗く、ロウソクの火で照らされているだけであった。すると、近くで湊先輩が誰かに電話しているのが聞こえた。耳をすませると、湊先輩の口から"五十嵐 叶弥"と聞こえたので、オレは塞がれた口で必死に声を上げようとする。だが、ただただ唸り声しか出せないでいた。するとそんなオレの様子に気がついたのか、湊が近づいてきて、口の枷を外した。外された瞬間、オレはとっさに「叶弥!」と声を上げた。湊先輩の口ぶりからオレの声は叶弥に届いたらしく、オレは少し安堵した。


「ムダだよ。君の声は京司君に聞かせない。これか二人で再会のお祝いをするんだ。」


その言葉にオレは身の毛がよだつのを感じた。湊先輩は叶弥との通話を終わらせると、ベッドへと腰かけオレの頬を撫でてきた。


「あぁ、京司君。やっと僕の所に来てくれたね。嬉しいよ。シェイクスピアは悲劇で終わったけど、僕達は幸せになろうね?僕のジュリエット...」

「...誰がお前のジュリエットだ。...虫唾が走る。」

「...ダメだよ京司君。自分の運命の人に対してそんな事言うなんて。君は僕のジュリエットで、僕は君のロミオなんだ。結ばれなかった二人がようやく結ばれる喜劇になるんだ。君は僕だけを見ていれば良いんだよ。」

「...オレが想うのは昔も今も"五十嵐 叶弥"。そいつだけだ。絶対にお前の思い通りにはならない。」

「...しくじったなぁ...。やっぱりあの時殺しておくんだった。」


湊先輩はそう言って立ち上がったかと思うと、オレの上に馬乗りになり覆いかぶさってきた。そしてオレの顔に自身の顔を近づけてきたので、オレは思わず顔を背けた。するとそれを面白く思わなかったのか、オレの頬にビンタをおくってきた。


「ダメじゃないか、京司君。折角口づけをしてあげようとしたのに...。思わず叩いてしまったじゃないか。」

「お前にキスなんかされるくらいならビンタのがマシだ。オレの口も身体も心も...全部お前にはやらない。オレの全ては叶弥だけのものだ...!!」


オレがそう言うと、湊先輩はベッドから降り、部屋をグルグルと回りながら、ブツブツと「面白くない面白くない面白くない」と壊れたラジをの様に繰り返していた。


「京司君!君はもう僕の物になったんだよ?!僕はもう写真の中の君だけじゃなくて生身の君を手に入れたんだ!いい加減僕をみろ!!」


そう言いながら再び俺の元へやって来たかと思うと、オレの頭を掴み、自分に向けさせた。


「そう言いながら本当は怖いんだろ?オレに手を出すのが。...五十嵐組の報復を受けるのは恐ろしいもんな。」

「?!黙れ黙れ!!」


湊先輩は襲いかかろうとしてきたが、オレは自由の効く足で思いっきり腹を蹴り、ヤツを壁までぶっ飛ばした。そうしたら上手い事いき、ヤツは頭を壁に打ちつけて気を失った。オレはそれを見ると少し安堵して、助けが来るのを待った。叶弥のことだ。組を上げてオレを探してくれるだろう。そう信じて、オレは張っていた気を少し緩めた。

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