episode36
「ふぅー、食った食ったー。」
「LLセットとか...。見てるこっちが腹いっぱいになるわ。」
「お前だって普段、弁当作ってやってるのに「足らねー」って言って、購買でパン買ってんじゃねぇか。」
「そりゃお前...。頭使ってるから腹減るんだよ。」
「...の割にはテストの点数は如何なものですか?」
「あー、あー。聞こえねぇなー!」
「フフッ」
「さてと、まだ14時か。他行きてぇとこあるか?」
特に行き先も決めずにワックを後にしたオレ達は目的も無くぶらついていた。すると叶弥が一つの店の前で足を止めた。メンズ物のアクセサリーショップである。
「へぇ...。こんな店あったんだ。っておい叶弥!待てって!」
感心しているオレを他所に、叶弥はつかつかと店へ入っていく。後からオレも早足て追いかけるように叶弥に続いた。
「何見たいんだよ?」
「んー?折角丁度いい店見つけたからさ。」
「...丁度いい?」
「そう。ホラ、京。左手出せ。」
「?おう。」
オレが言われた通り左手を差し出すと、叶弥は薬指に指輪をはめてきた。
「...おい。これって...」
「ジュエリーとかだとお前また無駄遣いー!って言うだろ?これくらいのだったら別に良くねぇか?」
叶弥が選んだのは、黒みがかったシルバーのシンプルな指輪だった。その指輪をはめたオレの左手を見ると、叶弥は満足そうに頷いた。
「うん。コレ良いな。京に似合ってるし、サイズもオレと京のサイズ両方ある。...お、刻印もしてもらえるみたいだぜ?入れてもらうか?」
「待て待て。買うとは言ってない!」
「お前にはオレのだって印着けておいてもらわねぇと困るんだよ、オレが。首輪じゃないだけいいと思え。あ、もしかして...首輪の方がよかったか?"番犬"だもんな?」
「んなわけあるか!...ハァ。良いよ指輪で。」
「OK。イニシャルでも入れてもらうか。もちろん、互いのヤツな。」
叶弥はそう言うと店員を呼び話しをつける。刻印はすぐに出来上がるそうなので、店内を見ながら待つことにした。
「京ってあんまアクセ着けねぇよな。」
「お前がピアスバチバチに着けすぎなんだよ。教師らお前に直接注意するのが怖いからって、オレに言ってくるんだよ。」
「あー...ご面倒をおかけしまして?」
「反省してねぇだろ...。まぁ、オレはもう諦めてるけど。」
オレがそう言っているにも関わらず、オレの話を2、3割くらいしか耳に入れていない様子で、何かを真剣な目で見ていた。
「?何見てんだよ?」
「いや、指輪が着けられねぇ時のためのチェーン見てんの。指に着けられなくても身に着けてくれればそれでいいし。」
「...バカか。」
そんなやり取りをしている間に刻印が終わり、チェーンを含めて会計をし、オレ達はこのショップを出た。




