episode32
二人して外出するために玄関へと向かうと、奥の方からバタバタと足音が聞こえてきた。
「若!京司さん!お出かけッスか?」
「良ければ車出しますよ!」
そう若衆達が賑やかにしていると、凛太朗さんまで出てきた。
「おうおう。二人揃ってって事はデートでも行くんかい?」
「「デートぉ?!」」
凛太朗さんが"デート"と言う単語を出すと、若衆達は大声を出して驚き始めた。「若と京司さんが...デート...」「なんて羨ましい...」などと言う声が聞こえたが、叶弥がオレの手を取り、その手を上げながら「おう、親父。」と言い言葉を続けた。
「付き合って初めての記念デートなんだ。お前ら絶対邪魔すんなよ?」
そう言うと握って上げた手に口付けて見せた。すると玄関は阿鼻叫喚。「若ァ...」だの「女神がァ...」だのと騒ぎになったので、オレは唖然としていると、叶弥は「ほっといて行こうぜ。」と手を引いて外へと出た。行きざまに凛太朗さんが「気ぃつけてな。」と言っていたので、オレは「行ってきます!」と声を上げた。そうして、オレ達は屋敷を離れ学校へ行く時とは逆方向に歩みを進める。それでオレは行き先を察した。きっと目的地は駅だ。ここの駅周辺には色んな店が揃っている。アパレルショップに喫茶店、映画館にゲームセンターなどなど。オレが却下した物ばかりではあるが、ここらでデートするとなるとこの駅周辺が定番となっている。
「まずは服でも見ようぜ?お前に似合う服をコーディネートしたい。」
「お前のチョイスかぁ...。あんま派手にすんなよ?」
「京がシンプルすぎるってか、無頓着なんだよ。」
叶弥にそう言われれば、オレはぐうの音も出ない。たしかに叶弥の服は若干派手目なのが多いが、センスは悪くない。むしろ男のオレから見ても、叶弥の魅力を醸し出すくらいオシャレだと思う。それに比べてオレは機能性重視で動きやすく、シンプルな物が多い。
「京の服装も悪くないってか、似合ってるから別にいいんだけど、オレ好みの服を着てるとこも見てみたいんだよな。」
「オレの服がシンプルで動きやすさ重視になったのは、お前といる時チンピラに絡まれてケンカに発展する事が多いせいだからなんだけど?」
「あー...。悪い。」
叶弥は悪いと言っているが、全く気持ちが込められていない。オレ達二人が揃っていると、何かと変なヤツに目をつけられる事が多い。なんと言っても"五十嵐組の跡取り"とその"番犬"であるからだ。この地域はチンピラが多いため、血気盛んな連中にとってオレ達は丁度いいケンカ相手と捉えられている。また、オレの場合一人でいると何故か男にナンパされるので、それをあしらう必要もある。何ともまぁ、屈辱的な理由であるが、背に腹はかえられない。
「そういや中学の頃、親父が酔ってふざけて京に女物の服買って着せたりした事もあったよな。その時は若衆のほとんどのスマホの待ち受けがその写真になったり...」
「やめろ。あれは黒歴史すぎる。あれに関しては凛太朗さんを許してはいない。」
そんな会話を続けていると、段々と人通りが多い場所へと出てきた。今日のデートは平和に終わることを祈る。...せめてナンパにだけはあいませんように。




