第73回路 それぞれの克己
【ビライド城 謁見の間】
パチパチパチ
「ようやく来たな、トリウィア。
外壁が塗り終えるまで待って、
来なければ行ってやろうと考えていたのだ」
「悪趣味な色ね」
ミズキはツッコんだ
「バカな。わざわざお前らのためにわかりやすい色にしてやったのだ」
イロハニールが言った
「えー?そうだったの?
ノリノリでこのピンクと白と茶色を選んでいたから
てっきりお菓子の城でもイメージしてるのかと思って…」
扇子が飛んで来たのを間一髪で避けた
「貴様!余計なことをベラベラと…」
サティスディーナはキレている
「サティス、構わん、そんなことは。
さて、トリウィアもう一度聞こう。
お前が我々についてくるというのであれば
この場は穏便に済ませよう。
拒絶するのであれば…」
パンッ
ドラキュラの顔が…吹き飛び
再生していく
「マーニ様、おやめ下さい。いくら戻るとは言っても
あまり気持ちいいものではありません」
ドラキュラはそう言った
「すまぬ、少しコイツらにわからせてやらねばと…」
「やばい、やっぱりやばい…一瞬怖しいほどの魔力…」
リョンリョンは怯えている
言葉が出ない…マーニ…俺…なのか?
なんだ、この複雑な感覚…しかも勝てる気が全くしない
子供が関取に向かっていく…そんなイメージしか湧かない
ドラキュラ?よく見るとリードさんに見える
髪型と肌の色、服装は違うが…
それにサティス…ミポポじゃないか?緑頭は…リョンリョン?
ドラキュラ、サティスディーナも言葉を失う
闘技場で遠目に見ていたが生き写し、いや本人だ
イロハニールはその空気について来れない
「伯爵?どうしたの?サティス?
ちょっとー私ド近眼だから見えないんだけど、メガネメガネ…」
イロハニールはメガネをかけた
「何よ!2人とも…いったい…」
マーニだけは平然としているようだ
「神のイタズラ…」
サティスは呟いた
「マーニ様は知っていらした?いえ、何か知っておられるのですか?」
「わからぬ、ただ名前を聞いた時に少し動揺したが。
まぁそんなことはどうでもよい…トリウィアがいればそれで良い、それで全て終わりだ」
ミズキは口を開いた、涙を流しながら…
「ごめんなさい、みんな…
本当に今までありがとう…
さっきの力見たでしょう?
私たちに勝ち目はないわ
でも…もう、これしかない…これしかないの…
私はここに来ると決めた時から
覚悟していたから…
ミポポ
あなたの前向きなシンの強さに何度も元気づけられた
リョンリョン
カタブツだったあなたがこんなに感情的だったなんて
素直にならなきゃって思ったのはあなたのおかげ
リードさん
いつも周りを見て冷静な判断を下して文字通りリードしてくれてありがとう
デンク
私がこっちにリスとして転生して
あの大きな木の下でミズキって名付けられた時から
今こうやっていられるのはあなたのおかげ
大好きだよ、デンク」
みんな泣いていた、この旅を思い出して
そして、彼女の覚悟を拒絶しながら必死で受け止めようと…
「ダメだ…ミズキ…行くな…」
俺は声にならない声を絞り出した
「え?」
ミズキはキョトンとしている
「ダメだよ…ミズキ…行かないでー!」
ミポポも心の叫び
「え?」
「悲しい別れだな、トリウィア
皆も送り出してくれている、さぁ」
「え?」
ミズキは顔を真っ赤にして
「あ…あのー
言いづらいんですけどー
私は私のわがままでアッチには行かないから
ごめんね、一緒に闘ってっていう意味なんですけど…」
「はーーー?」
たぶんここにいる全員が履き違えた
「マーニは破滅を目指している、ついて行ったらみんな消える。
なら、精一杯最後まで悔いのない生き方をしたいの!
私のわがまま、ごめんなさい」
「そういうことなら、やるしかないな」
リードさんは仕切り直した
「そうか、答えは出たようだな。私の城を汚させるわけには行かんのでな」
マーニは両手を天にかざした
まばゆい光が空間を歪める
気がつくと荒野に出ていた
「ここはあの展示会場…」
「仮想現実だが、懐かしいな。最後に相応しい」
マーニは行った
「行くぞ!俺の相手はお前だ!」
リードさんは伯爵に向かって行った
「ミポポ、私が相手だ!」
サティスディーナはミポポに向かってくる
「この雰囲気だとアンタが私の相手ってことね」
イロハニールはリョンリョンを指さした
「マーニ、あなたの相手は私よ!」
「まぁ、そうだな。他は相手にならんからな」
確かに…今直接闘ったところでマーニには勝てない
状況を見極めて…
「アァーーーッ」
「リョンリョン!」
彼女は実戦向きじゃない
ほとんど慣れてないだろう
加勢しないと…
リョンリョンは体勢を立て直し
弓矢を構える
「いっけーーーっ」
「そんなの当たらないよ」
「そんなのわかっているわよ」
リョンリョンは矢尻に魔力を送る
青色の魔方陣が矢尻の前に現れた
「バーニングフレア!」
炎の波がイロハニールを襲う
「マジ?」
火だるまになった
「ハァハァ…
まともに食らっちゃった…」
「ウルシバラ、こっちは大丈夫だ!」
魔槍と刀の剣戟音が響く
そして距離ををとって魔法の攻防
ミポポとサティスディーナだ
リードさんはガントリックと剣を使った接近戦を繰り広げる
間合いをとると魔力では勝てないと踏んだのだろう
とてつもない魔力のぶつかり合い
ほとんど最上位魔法以外使っていない
たぶん他に邪魔しないようにか空中でのせめぎ合い
俺は?…俺は…
「リョンリョン?あなた楽しいことある?」
接近戦、短剣同士が火花を散らす
「何よ、こんな時に!」
「欲望を抑えて、優等生を演じて、自分はこうじゃなきゃいけないとか本来の自分を隠して…」
「そうね、以前はそうだったかもしれないわ。ただ今は違う!
自分がしたいこと、やりたいことができるように成ってきた」
「成ってきた?ってことはまだ成れてないんじゃない」
「人は変われる。ただ急には変われない、幼虫から蛹になって最後は羽ばたくのよ!」
「怖くないの?自分が自分でなくなってしまうかも知れないのに。
無駄な努力をすることで後悔しないの?」
「あなたまるでわかってないわね。やった後悔よりやらない後悔の方がよっぽど後引くのよ。だから、私は変わる、変われる、変わるように努める!」
イロハニールは少し間をおいた
剣と槍が激しくぶつかり合う
「あなた、そんな色気も素っ気もない作業着では殿方を満足させられそうにないわね」
「はぁ?私にはそんなものは必要ない!私は…ただ1人、その人だけ振り向いてくれればそれでいい」
「その1人も振り向かせられないんじゃない?」
「貴様には関係ないっ!」
「あら、そう?その自信のなさが自分の首を絞めていることに気づいてないのかしら」
学生時代から剣の道を歩み、職人として冒険者として…
可愛いんだけどなんか色気がないんだよな
気が強くてガードが固そうなんてよく言われた
男まさりで恋愛には無頓着…それでいいと思っていた
■■■
「ミポポさん、僕と結婚してください。幸せな家庭を築きましょう!」
「心配すんな!」
ミポポの体はフッと持ち上がり上昇している
■■■
なんだろう、あの人の言葉だけが頭を離れない
自信はない、でも今変えなきゃ、変わらなきゃ…
「何をボーッとしているの?こんな時に。終わらせましょ、あなたは私に勝てない」
「色気なんていらない、あるがままの自分を認めてくれる、そんな人の剣にでも盾にでもなるわ!」
「色気は選択肢を増やす方法の一つよ。そんな狭い門をくぐろうとしかも自分を認めてもらおうなんて、なんて傲慢な女なのかしら」
「いいえ、違うわ!お互いを高め合って、認め合って、愛し合う。
選択肢を広げて選り好みする方がよっぽど傲慢よ。私はあなたに勝つ!私自信のためにね!」




