第71回路 ハッピーエンドの恋
リードさんとミポポがお互いの恋愛観について話している
「俺はなんだかんだ一途なんだよ。ただ一途になる前に振られちゃうから始まりもしないんだけど…」
リードさんは嘆いている
「っていうか初対面にプロポーズするのやめれば?」
ミポポははっきり言ってやった
「なんで?」
「いや、最初は友達からでしょ?普通は。そこからお互いの気持ちを探り合って、好きかな?好きじゃないのかな?なんて駆け引きがあって恋人同士になって…」
「それって、ゴールはどこになる?」
「…結婚かな…」
「だろ?そうじゃないんだよ。そんなだからみんな、あれ?結婚したらこの人変わったとか、昔はこんなじゃなかったとか悲観して最後になんか価値観が違うとか言って別々の道を歩き出しちゃうわけだろ?」
「…うん…確かにそれはあるかも…」
「俺にとって結婚がスタートなんだよ。そこから子供が生まれたり喧嘩もしながらお互いを支えたり、許し合って…」
「ゴールは?」
「そんなの死ぬ時だろ。最後の瞬間にこの人と出会えてよかった、この人と一緒でよかったって思えること、ここが全てのゴールだと思うんだよ。だから、俺はプロポーズから始めるんだ!」
「…なんかただ結婚願望が強いだけのバカだと思ってたけど、意外と深くてちょっと衝撃」
「だろ?わかったら俺と結婚してくれ!」
「…うーーん…なんかちょっと色々考える…」
ーー翌日朝ーー
ギルド裏には見慣れた竜車とダガポートさんがいた
「おはようございます、ダガポートさん!」
「はぁ…またあなた達ですか…」
なんか不満そうだ
「なんか嫌なことでもありました?」
「…これから嫌なことがあるんじゃないかと不安でしょうがないんですっ!」
確かにモノリーへの旅では怖い思いをさせてしまったからな…
「今回はデオビス山脈の国境までの予定なので危険はないと思います、たぶん…」
「はぁ、あれ?この方は?初めまして?」
「ミズキです!この前はリスだったと思います。
今回も宜しくお願いします!」
ダガポートさんの表情が変わった?
「は…はい!全力で頑張ります!」
荷物を積んで竜車は走り出した
あの大きな木を左手に森に入り、湖を超えた
「あのー」
ダガポートさんが後部席に声をかけた
「どうしました?」
ミポポは聞き返した
「あまりにも順調すぎて…全然私としては有難いんですが…」
「なんかフラグ立ててない?この人」
ミポポが言う。リョンリョンが答える
「それ気になる?周りに魔物がいなくはないよ。
でも、ある一定の距離から近づいてこないんだよね」
「俺たちが強くなったからか?」
リードさんは得意げだが
「いや、ある1人の魔力がすごくて近づけないんだよ」
「?」
ミズキがキョトンとして誰のことだろうみたいな顔をしている
お前だよ!ってツッコミたかったが、敢えて触れなかった
夕方には検問所に辿り着いた
その手前には宿や食堂、バーなどがいくつか軒を並べていた
「今日はここで泊まって、明日の朝国境を抜けよう!」
宿でチェックインを済ませて
街に出た
焼き鳥と書かれた暖簾と香ばしい香りに誘われた
【居酒屋若葉】
「いらっしゃいませ!」
息子とお母さんだろうか
20坪弱くらいの座敷のあるお店
冒険者と国境警備隊らしき人たちで賑わっている
「いらっしゃいませ!お飲み物どうされますか?」
「とりあえずビール5つとお兄さん!」
「あいよ!ってごめん、仕事終わるまで待ってもらえます?」
ノリのいいお兄さんだ
待っている間にお品書きに目を通した
「お待たせしました!」
「焼き鳥の盛り合わせと鶏めし!」
あとはそれぞれ食べたいものを頼んだ
焼酎のボトルを開けて
いい感じで店を出た
なんかギターの音と女性の歌声が聞こえる
【Bar LIttle Time】
30坪くらいのお店。奥にステージ、手前に8人くらい座れるカウンターとテーブルがステージを囲むように並べられている
マスターが音響を担当していて
ホールは2人で回しているようだ
飲み物はカウンターで頼むらしい
この雰囲気はウィスキーだな
それぞれカクテルやら好きなものを頼んで座った
ちょうど歌い手が変わるところだった
♫ハッピーエンドの恋 一度だけでも
触れていたい 感じていたい
このままいつまでも ずっと♫
男性のギター弾き語りスタイルだ
「いい声だね、なんか聞き覚えのあるような」
ミズキは言う
「なんか守ってあげたくなるような…」
ミポポは聞き惚れている
「本当だね…ってあれ?ダガポートさん?」
「えーーー」
ステージ中なので控えめにみんなビックリした
「あの人、何やってんの?どういうこと?」
ダガポートさんの歌を聞きながら呟いた
ステージが終わってダガポートさんをとっ捕まえ
テーブルに連れてきた
「何やってるんですか?」
「えっ?見てください、壁の貼り紙」
〈飛び込みOK〉
「だからって…」
「実は竜車乗りの傍ら流しをやってるんです。
それでこの店に入ったらあの貼り紙を見て…」
「竜車乗りも大変なんだね」
ミポポは同情した
「いやいや、そんな副業とかじゃなくて趣味みたいなもんですから」
「すごくいい声でした!なんか泣きそうになっちゃった」
ミズキは言った
「えっ、本当ですか?
ミズキさんにそんなこと言われたら…
僕、頑張ります!」
人は見かけによらないものだ




