第49回路 記憶と記録
通常の会話は「」魔法での会話は〈〉
みんなで声を合わせる時は〈「」〉となっております。
ーー1週間前ーー
【とある宮殿】
もはや千羽鶴…いや千羽竜に達そうかというくらい玉座の周りは折り紙でいっぱいだ
シュイーン
「サティスか?」
「はい、主人様」
「で、どうだ?捜索の方は進んでおるか?」
顔を上げずに折り紙を織り続けている
「ドラゴンが見つかりましてございます。ただ…」
男は手を止めた
「ただ、なんだ?」
「ここ300年眠ったままでございます」
「ならば起こせばよかろう」
「住処が休火山のため、起こしようがないというか…」
「えーーまた、行くの?俺」
「も…申し訳ございません。なんとか主人様の手を煩わせないようにと幹部とも話したのですが手の出しようがないというか、手の施しようがないというか…」
「わかった、わかった…もう良い。それで場所は?」
【セキオーク山内部】
シュイーン
「こちらにございます」
サティスディーナは周辺の岩と同化している塊に視線を送った。うずくまって眠っているにも関わらず10mはあろうかという巨体。
羽を広げれば20m以上になるだろう
「これは、これは…」
◾️◾️◾️
男は紫色の魔法陣を竜の頭上に描き
ゴゴゴゴ…バゴーーンッ!
周りの岩が爆発してその大きな破片が
その巨体を標的に落ちていく
「…誰じゃ?わしの眠りを妨げる不届きものは?
ん?貴様かーーーっ」
ものすごい剣幕でその男に向かっていく…ー
◾️◾️◾️
なんてめんどくさい…
しかも大事な素材を傷づけることになる
どうすれば…
眠っている竜…
眠りを覚ますもの…アラームか
『自然の書物は数学の言語で書かれている』
ガリレオ・ガリレイの言葉を思い出した
ならばフィボナッチ数列の第7項以降を60で割った
その余りを時間に当てはめて…
うん、これで行こう
休火山の地下深くマグマに向かって水属性魔法を放ち
マグマ水蒸気爆発を起こす
それこそがこの巨大な竜を起こすアラームとなる
さぁ、何度目のアラームで起きるか楽しみでしょうがない
ーーーーーー
【冒険者ギルドーモノリー】
「魔法陣のことも気になるわね。ここからセキオーク島まで30kmくらい、流石にわたしのセンサーには反応しないかな」
〈魔物の感知ができれば、その魔法陣と地震の因果関係が掴めるかもしれないよね〉
「だったらあの島に行けばいいじゃないか。考えていてもしょうがない!善は急げだ!」
リードさんが提案した。善ではないが行動あるのみだ
「そうだよね、行こうよ!」
ミポポは楽しそうだ
「ソフィニールさん、先ほどおっしゃっていた船はお借りできますか?明日にでもセキオーク島に行ってみます!」
「ありがとうございます。早速船は手配させます。いつでも行けるように港に水色の船を準備させておきます」
港の場所を教えてもらい、5人はギルドを出た。
ギルドで紹介してもらった宿は海沿いだった
そこでチェックインを済ませるためにみんなで向かった
「すごい香ばしいいい匂いがする!これはエビかな?」
リョンリョンははしゃいでいる
いくつか屋台が出ていてそこからいい匂いが漂っている
「イカよ、イカと焦げた醤油の匂いもする!」
ミポポも足取りが軽い
「お待たせ!ほら、このエビ、このデカさこれは食べ応えあるぞ!
こっちはイカの姿焼き、この香ばしい香り、たまらん!」
リードさん、いつの間に…
みんなで海の幸を楽しみながら宿に歩いて行った
友達と3人で走り回っている子供がいる
こっちに気がついたようだ
「なんだよー悪いことしてねーぞ!」
さっきの男の子だ
「おぉ、そうだな!」
リードさんは笑顔で答えた
「子供にも色々あるんだよ!」
「そうだな、同じように大人にも色々あるんだぞ!」
ガタガタガタ
地震だ
子供たちは怖がっている
「大丈夫、大丈夫よ、お姉さんがいるからね」
ミポポは3人を抱きしめている
それを羨ましそうに見ているリードさんに
さっきの男の子は不敵な笑みを浮かべた
「あのヤロー…」
「ま、まあまあ相手は子供ですから…」
【海沿いの旅館】
男性陣と女性陣で2部屋に分かれた
2部屋とも海を挟んでセキオーク山が見えるロケーションだった
日も傾き、華麗なオレンジが恥ずかしそうに赤くなって山に隠れようとしていた
「この瞬間、写真に撮ってSNSにアップしたい…」
旅行好きのリョンリョンはそんな生活を送っていたのだろう
あの頃のカタブツ現場監督の裏側で…
写真か…
単純に写真が嫌いだった
写真を撮った次の瞬間を切り取られる感覚
ページをめくるたび次の自分、次の自分とどんどん変化していくその1ページを剥ぎ取られる、そんな気がして。
「はい、ポーズ!」
なんてやっている時間もその時作る笑顔もなんて無駄なんだと。
子供のころの写真を見て
「この頃は可愛かったねー」
なんて親言われるのも好きじゃなかった
そんな記憶を呼び覚まして感傷的になるのはただのエゴだと…
〈デンクと写真…一緒に撮りたいな…〉
はっとした。こんなに近くにいるのに…この刹那は心の中にしか残らない。そしていつしか色褪せ、朧げにしか浮かんでこない
物心ついたころから俺はミズキと一緒に写真を撮ることはなかった
中学の卒業式が最後か…その最後の写真も俺はカメラを背けていた
ハッキリと記憶を焼き付けたい、そう思っても次第に消えゆく儚さ
「そうだね…」
一雫の涙が流れ落ちた
あれ、なんだろ、なんでだろ
必死で右目を擦って悟られないように…
この旅館にはお風呂はあるが温泉ではないらしい
食事は用意されていた
焼き魚、煮魚、料理はどれも絶品だ
お酒と料理を堪能して
寝る前に風呂に行くことにした
女性陣3人はいい感じに酒に酔い、お互いの恋愛観などを話してるっぽいのをリードさんとお湯に浸かりながら聞き耳を立てていた
《ピーポーピーポー》
「デンリュウ、俺は上がるけどお前はどうする?」
「お、俺はもう少し入ってます」
「そうか」
のぼせる前に出て部屋に戻った
R7.8.20 加筆




