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第十五章



『彼』は業火の中を歩いていた。 



 熊谷の口から放射される炎が教室を焼いている。


 警官達が必死に取り押さえようと奮戦しているが、肌を肉を骨を焼く火の壁に手も足も出な


い。


「くそっ」一人の警官が、ぱちぱち爆ぜる火の粉を両手で遮りながら悪態を付く。


「どけっ、邪魔だ」


『彼』は警官の背を押しのけるように蹴った。


「うわ、なん……」警官の舌が止まるが構わない、『彼』は警官の目に自分がどう写っている


か知っている。


 夜故に、鏡のように世界を反射する廊下の窓に、己の姿が映っている。


 数年前まで使われていた時計塔高校の旧学生服、両手には鈍色に光るグラブ、足にはやはり


鈍色のブーツ、そして顔には……髑髏の仮面。



『髑髏の王様!』



 山本なら彼を一目見てそう叫ぶだろう。


「なん、だ? キサマは」


 警官達が口々に誰何してくる。答えてやる義務はない。


「やかましい、失せろ」


『彼』は近寄ろうとする者を眼光で射すくめ、躊躇無く炎の中へと歩を進めた。


 生物を徹頭徹尾拒否する赤とオレンジの渦の中心に、目標はいた。酒ビンに入ったガソリン


を喉を鳴らして飲み、新たな死の息を吹く熊谷剛。


 だが、その熱も煙も発生するガスも歪む空気も、『彼』には関係なかった。


「おい」


「……うが?」熊谷剛の動きが止まる。


「外に出ろ。こんな所で死なれたら掃除が大変だ」


 嘲笑う『彼』に、熊谷はくるっと背を向けた。そのまま自らが張った火の壁を突っ切って逃


げていく。


「ゴミがっ!」


 苛立った『彼』が拳を叩きつけると、コンクリの壁に大穴が開いた。




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