第二十八話
午後13時。
俺の顔面スレスレを軟式テニスボールが横切る。
「…あぶねぇ。」
マジで、死ぬかと思った。
「君もやるねぇ、今のを避けるなんて。」
え?
*
30分前。
神前が昨日、学園もののアニメを見たらしく、その手の詩が書きたいと言っていたので(っていうかもう作曲は諦めているみたい)、部活の見学をして回っていた。
「っていうかさ、もうオリジナル曲でやる方向なのな。」
「だって、私がやりたい曲全部却下されちゃったし。」
「当たり前だろ!エロゲの曲しかねぇじゃねぇか!」
「ひひw」
「はぁ…。」
笑ってんじゃねぇっての。
「じゃ、気を取り直して行くわよ!」
*
第二体育館
「ねぇ、長谷川君。運動神経悪い貴方には分からないだろうけど、あの人は高校生活をバスケに、青春をバスケに捧げている、私達からしたら残念極まりない人よ。よく見た方がいいわ。」
「悪口が含まってんぞ。」
いや、悪意しかないかも。
「ほら!マネージャーがタオルと飲み物持って来た!…ありゃあ、出来てまっせ」
「取材するならきちんと青春リサーチしろ!」
ほんと、神前って何でこう中身が残念なんだろうか。
「えっと、次は…テニス部行こうぜ。」
「…え、あ…テニス部は…いいんじゃない?」
「どうした?なんかあるのか?」
「いやぁ…ほら、時間も、」
「まだ一時前だけど。」
なんかある。
この神前早苗の隠されたなにかが…。
「よし、行くぞ。」
「らめぇええええ!!!!」
面白い!
神前がこんなに弱まっているなんて!
こいつのHPをこんなにドレインできているなんて!
*
テニスコート前。
誰もいない。
今日テニス部休みなのかなぁ。
神前はホッとした顔をしている。
「ねぇ、君達何してるの?」
「「!?」」
いつの間にか真後ろにいた顔の濃いキャラに声を掛けられた。
「えっと…」
ザ・スポーツマンで色黒で歯が白い見た目の彼はラケットを持っている。
「テニス部の方ですか?」
「そうだけど。…あれ?神前さんじゃん!」
なんだ、知り合いなのか。
「やっと僕の元に来てくれたんだね!」
え?
「…。」
「いいんだよ!僕の胸に飛び込んでおいで!」
神前は何も言わずに俺の影に潜んだ。
あー。
「やっと僕がした告白の返事をくれるんだね!」
あれだ。
「イエスか、はいか、大好きか、愛してるのどれでもいいよ!」
これ、ヤバい人だ。そして、残念な人を好きになった残念な人だ。
そして、神前は
「私、今この人と良い感じだから!」
…え?
「ごめんなさい、今市君。この人長谷川君っていうの。私、長谷川と色々やってるから。ほんと、良い感じだから!だから、ごめんなさい!」
ふわりと俺を色々濁して使って逃げやがった!
「…分かったよ。」
スポーツマンは物分かりが
「ねぇ、君。僕と神前さんを掛けて勝負だ!」
いいわけねぇよな…。
あーもう、目キラキラしてるよ。だから、熱血とか根性とか嫌いなんだよ。
神前は、と。
「…。」
何で目を反らしてラケット俺に渡してんだよ。
…そしてそして。
謎の第一回 神前杯が始まる。
「じゃあ、手加減は抜きだ。」
そう言うと今市はボールを垂直に高く投げた。彼がラケットを降り下ろした直後のこと。
俺の顔面スレスレを軟式テニスボールが横切る。
「…あぶねぇ。」
マジで、死ぬかと思った。
「君もやるねぇ、今のを避けるなんて。」
え?
俺、死ぬの?
ヤバい人はテニスもヤバかった。
何でこうなってんだよ!
「…あーあ。」




