第二十四話
文化祭。
高校生ならおそらく誰もが参加するであろうイベントの一つ。青春を謳歌するという目的の元、友達との友情を再確認や高めあうという美しい、むしろ眩しいイベントの一つ。そんな言葉がちらほらと聞こえてきたそんな3月3日。
「早すぎだよ。」
WG3のイベントの一つに好感度の一番高いキャラと文化祭デートをするというイベントがある。そのイベントシーンを見て、神前は文化祭デートではなく、文化祭というものに憧れを持ち始めた。
「準備は早いに越したことないよ!さ、文化祭で演奏する曲決めようか。何のエロゲの曲が…」
「待て。」
「何?」
何故、真顔で言えるし。
「文化祭で何かしようというその心意気はとてもいい。とても美しい。」
「でしょ!じゃあ早速どのエロゲの曲か…」
「エロゲから離れろ!」
「…ギャルゲがよかった?」
「そういう事じゃねぇよ!なんかあるだろ、普通のJ-Popとか。」
「好きじゃないからだめ。」
「…だよな。」
んーっと言いながら神前は悩む。ひたすらに悩む。悩んだ末に
「やっぱ、エロゲ。うん、今日の放課後一緒にエロゲしながら考えよう。」
「何でだよ!」
「え?だって、長谷川君もエロゲ好きでしょ?」
「いや、好きだけども。っつーか、文化祭なんか気が早過ぎんだろ。そして、俺は文化祭なんかに出る気はない。」
「いいじゃん、私だって軽音部辞めちゃったし。だから、」
「…え、辞めたのかよ、軽音部」
「この前、退部届け出してきた。だって、もう皆の中にいると私は置いていかれた気持ちになるから。」
「…。」
「だからもう自分で青春作るしかないんだよ!さぁ、行くぞ!青春の向こう側へ!そして、エロゲの彼方へ!」
「神前、お前なぁ…」
本当に自分勝手に俺のこと巻き込みやがって。毎年俺は文化祭なんかクラスの展示物ちょこっと手伝って終わりだ。そんな俺が文化祭で演奏?マジかよ。
その前にエロゲエロゲと何度も連呼しやがって…
「ここは教室なんだぞ!!!!!!!!!」
さっきから周りの女子生徒に変な目で見られている。
きっと俺がそんな卑猥な単語を言わせていると勘違いされているに違いない。
「…あーあ。」
「その口癖やめた方がいいよ。」
「原因が言うな。」
「どういうこと?」
純粋な顔でそんなこと聞くな、アホ。
「いや、悪い、忘れてくれ。」
※
放課後、神前家リビング。
「で、集まってもらったわけだけど。」
「いつも通り俺とお前の二人だけど。」
「文化祭に向けて準備を進めましょう。うちの高校の文化祭は9月3日。あと半年後。今から準備すればかなりいいものができるはずよ!」
「で、やるやらない別として。やるなら何やるんだよ。」
「長谷川君の意見を尊重してエロゲの曲はやめておくわ。」
「当たり前だボケ。」
「だから、作っちゃえばいいのよ。」
「お前はどこの涼宮ハ○ヒだよ!」
「一曲は出来てるから。せめてもう一曲よね。」
「『さよならのあと』…やるのか?」
ドヤ顔で神前は言う。
「私、好きなものとか、手にしたものって周りに自慢したくなるタイプなのよね。」
「…はい、はい。」
呆れた顔で返事をする。
「じゃ、これに曲つけたいから。作り方教えて。」
「なんだよ、新しいの書いたのか。ちょっと見るぞ。」
さよならのあとを書いた、神前の新作を実のところ心待ちにしていた俺がいた。
…しかし、
「神前…これ…ボツ。」
「んな!!!!」
前回のような心揺さぶられるような感じが一切ない。っていうか、タイトルが「愛の蜜」って何だよ。エロゲ要素ここで持ってきてどうするし。
「ねぇ!何が悪かったのか正直に教えて!!」
「なんつーのかな、」
迷いに迷った末俺が出した言葉。
「エロい上につまんねぇ。」
「ぶは!!!!!!!!!!!!!」
「あと、これなんのパクり?」
悪気はない、少ししか。
「何を焦ってんだよ。」
「相手をやる気の渦に巻き込まないと、私も本気になれないの!だから、」
「だから、まずは手頃な相手からってわけか。」
「そう。」
「やかましいわ!!」
少しの反省タイム。
「でもさ、正直俺もっといいもの書けると思うんだ、神前なら。だから、そんなに焦んなよ。まだ半年だからさ。」
「じゃあ、ここに名前書いてよ。」
「名前?」
「うん。まぁ、焦らず粘り強く頑張るぞって意思表示の紙。別にどうってことないよ、部屋に誓いの紙を張るだけだから。」
「まぁ…いいけど。」
渡された紙に俺は名前を書いた。
「ありがとう、これで…」
神前の表情が変わる。
何故だろう、さっきまでの落ち込んでいた顔と全然違う。
笑いを堪えきれないような…
「ふふwwwwwwこれ、何だと思う?wwwwwww」
さっき俺が名前を書いた紙。
さっき神前の手で隠されていたから見えなかった部分には
「『アニメ…同好会…入会届け』?」
「ようこそ!アニメ同好会へ!!!」
「くそ!!!てめぇ図ったな!!!!!!」
「これで、同好会として文化祭も出れるし、学校で堂々とギャルゲーなり、アニメなり、オタ活できるね!おめでとう、長谷川君!!!」
「くそ、返せ!こら!」
「ごめんね、(パシャ)。もう顧問の先生に送っちゃいましたっと。」
またこいつに壁を崩壊させられた。
いつもより多めに空気を吸い込んで、
「…あーあ。」




