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呼吸のあと  作者: haruki
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第二十五話

翌日、放課後、校舎内のとある教室にて。



「部室確保!これで念願の学校の中にプライベートルームを設けることが出来たわ。あ、でもこの場合は同好会だから会室?まぁ、部屋が手に入ったってことで!」

「…。」


まさに絶句。本当に行動が早い。


「なぁ、神前。」

「何?」

「よくこんなに早く空いてる教室の使用許可が下りたよな。」

「そこはまぁ、日頃の行いというか。」

「お前、出席日数足りてねぇ不登校生だったじゃねぇか。」

「いや、それでも一応保健室登校してたり、課題は毎回遅れる事無く出したり、期末中間テストは毎回上から15番目迄には入ってるし。一応、書面だけ見れば出席日数以外は最低限以上のことはやっている優等生やってるんだよ。しかも学校も体が弱いのは知ってるから出席日数まではうるさく言わないし。」


知らなかった。俺は神前早苗という女子を完全にただの思いつきロマンチックメンヘル馬鹿だと思っていたがこんなにも普通に優等生をやっていたことを知らなかった。


あ、そうか。その普通が欲しかったのか。


でも、何か腑に落ちない。


「なぁ、神前。でもここ防音じゃないぞ?ギターとか歌の練習って、ちょっと厳しくないか?」


ぽかんとした顔で神前は答える。


「何でここで練習するの?」


一瞬何を言われたのか分からなかった。


「いや。だからさ、文化祭に出る為にこの同好会に俺を入れたんだろうが。んで、練習するから部室を借りたんだろ?」

「違う、違う。何のためって、学校でギャルゲーを全力で楽しむためでしょうが。」

「…は?」

「いや、だって学校でプレイすれば文化祭イベントも雰囲気増して創作意欲が湧くというか。さらに、部室があるおかげで頑張って学校へ行こうという意志も生まれると。」


全力で言葉を失った。

つまり、放課後は学校でギャルゲーを全力で楽しみ、そのあと神前宅でギターや歌の練習。


「神前、お前…」

「なに!?」

「天才かよ。」


WGシリーズだけではない。他のギャルゲーも持って来よう。そして、部屋中をフィギュアやポスター、タペストリーにラノベ、DVDで一杯にしよう。


城の完成だ。。。


「でも、今日は同好会活動はおしまい。その代わりに、」


鞄の中をがさがさと漁る神前。少し前に気付いたけれど、神前の片付けのセンスの無さや、物の配置の乱雑さは一般の人間のそれを完全に凌駕している。例によって鞄の中もビッグバン状態なのだが、


「あ、あった。これ読んで。新曲。」


そう言って渡された紙はくっしゃくしゃだった。


「この前さ、色々言われてからもう一回まっさらな気持ちで自分の書いた詩読んでみたんだ。そしたら恥ずかしいのなんのって。あんなものを自慢げに見せたんだなって思っちゃった。」


つい最近の出来事をアルバムでも捲っているかのように、そんな優しい笑みを含んだ声だった。


「それでね、もう一度書いてみた。素直な私の気持ち書いたから。読んで。」

「おう。」


タイトルには「overflow」と書かれていた。水が溢れるとかそんな意味だったともう。

何度も読み返して少し一曲の歌詞を読むには長すぎる時間が経った。


「なぁ、神前。これって、」

「私だよ。」

「だよな。」

「溢れそうな、溢れてしまった分の私。それを書いたの。」


自分の心の許容範囲をオーバーしていた、その溢れ出した神前早苗がくしゃくしゃになったプリントの裏にあった。


「だから、長谷川君は私を助けるんでしょ?」

「え、あ…あぁ。。。」


恥ずかしいこと思い出させるな。


「中二なんでしょ?」

「…。」


死にたいw死にたいw死にたいw死にたいwwwwww


「じゃあさ、その溢れ出した私にもう一度命を吹き込んでよ。」


こいつも恥ずかしい言葉をぬけぬけと…。


「わかったよ。任せとけ、馬鹿。」


今まで見たことが無いくらい、神前は笑って


「ありがとね。」


そう、言った。こんな俺に。


「しかし、お前本当に片付けとか物の扱い下手糞だな。」

「いやぁ、そこはなんとも言えませぬ。」

「だってさ、この詩もプリントの裏だろ。」

「あはははwだってねぇ、今日ノート忘れてきちゃってw」

「え…プリント…。」

「どうかした?」

「なぁ、今日一日でプリントって一枚しか配られてないよな。」

「…え、あ…うん…。そう…だね。。。」

「しかも、それも提出は放課後迄だから基本的に全員提出している筈。」

「へー…ソウダッタンダー…。」


確信犯らしい。


恐る恐るプリントを裏返してみる。やっぱりだ。

そのプリント用紙を神前に突き出した。



「お前、ここになんて書いてるか読んでみろ。」


「…進路希望調査書。」

「出せよ!ドアホ!」

「だって、進路より今はこっちが大事で…。」

「優等生はどこに行ったよ。」

「さぁ、何処でしょうね。」


少し低い声で俺は怒ってしまった。


「絶対出せよ。」

「うっす。」


舎弟復活の瞬間だった。

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