第十六話
「ハル君が好き。付き合ってください。」
イヤフォン越しに聞こえたこの言葉が何度も頭の中でループする。
夏休み、8月1日。
いよいよ人生初オフ会が明日に迫ったそんな日の昼。美咲が通話をしたいというので、テンション上がりっぱなしの中、「あのね、映画一緒に行ったじゃん。あれからハル君のことで頭ん中埋まっちゃって。」からの「それでね、ずっと言えなかったんだけど」。
そして、
「ハル君が好き。付き合ってください。」
「…。」
何も言えなかった。というか何も考えれなかった。ラノベで、アニメで何度もそういう場面を見てきた筈なのに自分のこととなると頭が真っ白になった。
「やっぱ、ダメかな?ごめん、やっぱ今の忘れて。」
「…ダメじゃない」
「…え、それって」
頭を切り替えて。
ちゃんと答えなくちゃ。
「俺も出会う前から好きでした。付き合ってください。」
8月1日。俺に初めての彼女が出来た。
その晩は互いに変なテンションになってしまって、深夜1時までビデオ通話をしていた。思い出すのも恥ずかしいくらい「好き」という言葉を言い合って、終始寿命が縮まるんじゃないかというレベルで心臓が脈打っていた。
「じゃあ、また明日ね。」
「おう、おやすみ。」
8月2日。
集合時間30分前には着いていた。気合入れすぎたな…。
「ハルくーん!」
あの日と同じだ。白いワンピースで小走りで俺の方へ向かってくる。一つ違うのはそのあと俺の胸に飛び込んでくること。
「ハル君、会いたかったよ。」
「俺もだよ、美咲。」
えへへと笑う美咲が愛しくて仕方なかった。
二人で喋っていると時間が経つのが早いもので、いつの間にか集合時間になった。
男女2人ずつ。俺達を含む計6人でのオフ会。
その中でもアニメとギャルゲーの趣味がかなり近かったケイタ君という男の子と仲良くなった。本人曰く、本名ではないらしい。なんと驚くことに年も同じならケイタ君も弾き語りをするらしく、会話を始めて15分くらいで打ち解けてしまった。しかし見た目はイケメン。髪も茶髪で服装もお洒落。ストリート系っていうのかな、そんな感じ。身長はそんなに変わらないんだけどなぁ。
…なんだ、俺いけるじゃん。
カラオケについてから俺はノリノリ。ケイタ君はおとなしめの曲をちょろちょろと。しかも上手い。
美咲は…予想を超える音痴だった。
「ケイタ君はオフ会とかよく来るの?」
「前に行ったカラオケオフでIriaと仲良くなってさ。そっからあいつに誘ってもらってるくらいかなぁー」
「二人は結構付き合い長いの?」
「いやぁ、まぁちょっとかなぁ。前のオフ会メンバーの時からだと半年くらい?…あ、ごめんトイレ行くわ。」
「え、ケイタ君!」
このオフ会のことを聞き込み調査していたらいきなりケイタ君がトイレへ。
前を向くと美咲がマイクを持っていた。
「あー、そゆことね。」
美咲は叫ぶように歌っていた。
5時間後。
歌い過ぎて疲れ果てた俺達の姿がそこにあった。なんでもここら辺は中学生の補導が厳しいらしく大人しく帰宅することに。
「しかし、楽しかったなぁ。」なんていいながら皆で歩いていたら美咲が俺の手を握った。他の4人に見せ付けるように。そして極めつけの俺の頬へキス。
「…。」
告白された時と同じ、いやそれ以上に頭が真っ白になった。無だ。
なんだよ、このリア充展開。幸せかよ。
「…ふざけんなよ。」
声を上げたのはケイタ君だった。
気付いたら殴られていた。
「!?」
美咲はどうしたらいいか分からないらしく、俺の元へ駆け寄ってきた。
「大丈夫!?ハル君!!」
殴られてだっさい転び方をした俺にケイタ君は手を伸ばしてきた。
「…ごめん、今のは流石になかった。本当にごめん。」
殴られて、直ぐに謝られた俺。何これ、誰得だよ。
「で、何で俺殴られたの?」
声を震わせながら美咲が答える。
「私のせいなの。」
「え?」
「あのね、ケイタは悪く無くてね。」
「分かんないよ、俺に分かるように言ってくれよ。」
ケイタ君が口を開く。
「俺達、二ヶ月前まで付き合ってたんだ。」
もう分かった。
もういいや。
「…あーあ。」




