表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呼吸のあと  作者: haruki
15/31

第十五話

「ハル君ってさ、好きな人いるの?」


お前だよ…なんて答えれるわけねぇだろ。家に帰ってもSkype越しに話す俺と美咲。しかし、昨日今日会った相手だ、落ち着け。話を無理矢理今日の映画の話題に変える。そうしないと理性が保てずに気持ちを伝えてしまいそうだった。


そんな何気ないいつも通りの会話の中、


「あのさ、今度オフ会行かない?」


美咲から思わぬ誘いだった。なんでもアニソンのみ歌うカラオケオフ会らしい。オフ会なんて行ったことないし、ネット上で知り合った人と…あ、会ってるか。

不安は少しあったが、美咲からの誘いなら行かない理由は無い。


「いいね!行きたい!」


本当はそこまでの気持ちはないけれど。


「8月の2日なんだけど、大丈夫かな?」

「余裕で暇っすw」

「よかった!じゃあ、場所はなるべく近いところに設定しておくから!」

「おう!」


…設定?


「じゃあ詳しいことはまたチャットでね。今日はちょっと疲れたので寝ます!w また明日ね。」

「うん、おやすみー。」


「また明日」という言葉の響きのよさになんとも言えない感動を覚え、ギターを掻き鳴らす。


数分後親に怒られた。夜の10時だもんね、そりゃそうだよ。



翌日、正午。


ピンポーン。


誰だ、俺の休日を脅かすのは。気だるげにドアを開けると葉月がいた。


「…あ、」

「10分で準備できる?」

「…おう。」


二日連続で同じ映画を同じ劇場で見るとは思わなかった。隣には違う女の子。葉月だけど。


「しゅーちゃん、楽しみだね!映画館って久しぶりだしね。しゅーちゃんも?」

「え、あ…おう。久しぶりでテンション上がりまくりよ。」

「なんか今日のしゅーちゃんへんなの。ま、いっか。」


大丈夫、バレてない。流石に「昨日女の子と見ちゃったんだよねぇ~wwwwww」なんて言えない。

今日は昨日と違って時間30分前には映画館についた。


「ねぇ、しゅーちゃん!ポップコーン!ポップコーン買ってよ!!」

「分かってるって。飲みもんは?」

「メロンソーダ!!」

「はいはいっと。」


ホント、楽しそうだな。いつも通りの俺達二人。これはこれで俺が安心できるものだと思えた。葉月と二人っていうこともあって映画に集中することが出来た。クロガネの登場シーンで葉月は泣いていた。感極まったのか、純粋に可愛らしいなと思えた。


この日常こそが俺達なんだな。


映画が終わったあと葉月は氷の溶けきったメロンソーダを一気飲みして気合を入れたらしく、パンフレットを買いに行っていた。


「見て!パンフレット!!」

「分かってるってw」

「嬉しいんだもん!」

「…あ、葉月今日うち来いよ。」

「え?しゅーちゃん家?」




長谷川家、春也の部屋。


「昨日は悪かったな。ほら、これ。」


クロガネのフィギュアを渡された葉月は放心状態の如くぼーっとしている。


「…葉月?」

「…初めてだ。」

「何が?」

「しゅーちゃんに初めてプレゼントもらった。…初めて。」


葉月は下を向き、手が震えている。


「…しゅーちゃん。ありがと。」


そう言った葉月は目に沢山の涙を溜めていた。

昨日のことなんて言える訳もないし、この「ありがとう」に対して胸が痛かった。葉月に対してどんな言葉で返せばいいのか分からなかったし、罪悪感で胸が詰まった。


「…帰るね。」

「…おう。」


いつも通り。

俺達はいつも通りあっさりとした別れだった。


「…あーあ。」


葉月が帰ったあと、ベッドに横になっていたらチャットの通知音。美咲からオフ会の詳細が届いた。

気分は乗らないけれど、「美咲のことが好きなんだから」と、自分に言い聞かせるようにチャットを見た。


<8月2日 14時~

会費 : 1,500円(5時間ドリンクバー付き)

会場 : 歌カラ倶楽部 ○○店

集合場所 : △△駅(13時半遅刻厳禁!!!)>


うちから4駅先か。


「<了解です!>っと。」

<待ってるねー!>


美咲は返事が早い。

タイピングの検定でも持っているのだろうか。


今日はもう疲れた。


ギターの練習…今日はいっか。


買ってから一日も休んで無かったんだけどなぁ。


「…あーあ。」



葉月、ごめんな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ