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呼吸のあと  作者: haruki
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第十二話

初めて一曲弾けたときの感動は以外にも少なかった。ギターを買ったその日の感動に比べると大したことは無く、中二全開だった俺は「ふぅ、やっとここに来れたぜ。」と意味深な意味と中身の無い言葉を口走るくらいだった。すぐに新しい曲ではなく、同じ曲を何度も完璧に出来るまで弾き続けたからこそ、何とか今の俺は基礎くらいはちゃんと出来ているのかもしれない。


それからの半年間、俺は学校から帰るとギターを夜まで練習という日々を繰り返した。

葉月とはそれ以降も特に変化は無く、遊びに誘われるが全部断っていた。それよりもギターを弾いていたかった。


よく歌いながら弾くのは難しいと言う人がいるけれど、そうは思わなかった。不思議と歌は右手のリズムに乗って楽しく練習することが出来た。アニソンばかりを弾いていたからなのかもしれない。


そして、その頃俺は中学二年生。例によって中二病とかいう厄介なものが頭角を見せ始めた。

症状としては以下のものが挙げられる。


・未だに美味しいと感じることのないブラックコーヒーを飲み始める。

・右腕に包帯を巻く。

・髪を伸ばし右目が見えないようにした後に、左目には眼帯。右目の髪の隙間からの射界で生活。

・オリジナル曲「I Love you, for ever」を作曲。

・休日でも制服を着る。

・どんな状況でもポケットに手を入れる。走る時も。

・基本的に冷めた目をして相手を翻弄(したかった)


とまぁ、こんな具合。中でも一番痛かったのはオリジナル曲。今でも作詞作曲はするが、これは完成した当時ケータイに録音して翌日聞いてみたら本当に酷かったのでお蔵入りどころかデータは削除、歌詞はシュレッダーに入れておいた。


シュレッダー買っておいて本当によかった。




中学二年、夏。




いつも通り、ニヒルに下校中。


「しゅーちゃん。」

「葉月か。なんだよ。」

「一緒帰ろう。」

「勝手にしろよ。あと、7,8分で家着くだろ。」

「うん、勝手についてく。」


この日、久しぶりに葉月と下校した。登校は毎朝なのだけれど、俺は朝低血圧でありえないくらい元気がなくて会話する余裕がない。


「しゅーちゃん最近アニメ見てる?」

「逆だ。ギター弾く以外アニメしか見てない。…あ、あとギャルゲー。」

「相変わらずだね、安心した。」


小さい頃と変わらない笑顔の葉月を見たら、こいつもじゃねぇかと思わされた。


「もうすぐ夏休みだけど、予定ないの?」

「無い前提で聞くな。」

「じゃあ、あるの?」

「あるわけねぇだろ。」

「じゃあ、海…」

「行かない。」

「だよね。じゃあ映画見に行こうよ。」

「行かないよ。」


先ず、外に出たくない一心だったし。


「…あ、やっぱ行く。」


シロガネが映画化されるんだった。


「だよね、だと思った。」

「シロガネの映画化知ってたのか。」

「うん、やっとだよね。こんなに長く漫画も続くと思わなかった。」

「じゃあ、チケット頼むわ。」

「分かった。それじゃあ取っとくね。」


葉月と二人で映画か。周りから見たら普通のカップルに見えるかもだけど、俺達にそんな特別はなくて別の普通って感情があった。


その日、家に帰ってやっぱり俺はギター弾いてアニメ見て。弾き語りの動画を漁る。

色んな動画を見て思ったのは「俺の方が上手くね?」ってこと。


思い立ったら早い。


翌日、学校が終わったら家電量販店へ行きマイクとカメラを買い、その日のうちに3曲を録った。もちろん大した技術も無い俺は編集も何もせずに動画サイトへアップ。アップ後は一時間毎にヒット数を確認。3回目までの再生数は自分自身だった。それに気づくのに3時間掛かった。


ちなみに動画の内容はギターの手元だけを映して顔バレを防ぎ、曲もアニソンのみの弾き語りという完全にニ○ニコ動画を意識したものとなった。


三日後。


再生回数は203回となった。これが多いのか少ないのか分からないが分かったことは特別すごくはないという当たり前の事実のみとなった。



一週間が経ったその日、動画にコメントが来た。もうチェックもしていなかったので通知メールで知った。


「この曲好き~!」


もう、飛び跳ねるくらい嬉しくて、馬鹿な俺は何も考えずそのアカウントの人にメールしていた。


「コメントありがとうございます!!」


って、送って直ぐに気付いたのはミーハー過ぎる自分だった。

中身の無いメールを送信してしまったと後悔しながら何度も変わるはずの無い送信ボックスの中身を確かめる。


「…あーあ。」


やっちまった。そう思って直ぐのこと


"一件の新着メールがあります"


とブラウザには表示されていた。


「…え?嘘?」


返事が来た。しかも女の子。サムネ画像…は、可愛くない訳ではないけれどこれといって顔立ちが整っているわけでもない。どこにでもいるような、普通の女の子。

メールの内容は


「メールくれてありがとうございますw とってもいい声で感動しました!」


と、社交辞令的な感じ。でも、それでも嬉しかった。ここは押すしかないと、何故か男気を出してしまい、


「よかったらSkypeのID交換しようよ!」


と送っていた。

すぐに帰ってきたメールには


「いいですよ!」


と、その下にSkypeのIDが表示されていた。


…これは、フラグか?やっと春が来るのか?



連絡先リストに一人増えた。

ネットで出会った人は数え切れないけれど、やっと普通の女の子が俺の連絡先に追加された…。


アカウント名には「Iria」と書かれていた。由来は好きな小説の妹キャラかららしい。


その日、チャットで色んなことを話した。好きなアニメや好きなアニソン。さらには今何処に住んでいるか、生年月日や学校の名前、今度はビデオ通話しようと約束までした。



彼女の名前は伊藤 美咲。WG(ウィンドウガールズ)のヒロインと同じ名前。5月15日生まれの俺よりも一つ年下の中学一年生。


住んでいる場所もうちの最寄駅から電車で1時間ほどの所に住んでいるらしい。



勝手に運命的なものを勝手に感じていた。


そして、自分でも分かっていた。



恋をしたと。

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