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呼吸のあと  作者: haruki
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第十一話

4年前。中学一年生。


「しゅーちゃん。」


いつからこの呼び名に変わったのかは覚えてないが、中学に入ってからは葉月は完全にこう呼ぶようになっていた。シロガネをきっかけに会話が普通に出来るようになった俺達は、この頃になると どこにでもいる幼馴染みのようにある程度雑な感じで言葉を投げても気にならない間柄になっていた。


「ねぇ、今度の日曜日暇?」

「馬鹿か。暇に決まってんだろ。あ、でもやることが…」

「どうせアニメ見たり、ゲームしたりするだけでしょ?」


まぁ、そうなんだけど。


「だったら何だよ。」

「買い物行くから一緒に行こうよ。」

「どこ行くんだよ?」

「駅前の商店街。自転車と、Mp3プレイヤーと食料品、あとドラッグストアと100円ショップと…

「多過ぎ、パス。」

「じゃあ、自転車だけ。」

「思いきったな。ア○メイトも行くなら許可する。」

「いいよ、」

「じゃあ日曜日ね。」


日曜日の昼頃葉月は迎えに来た。


…が、


「いこ、しゅーちゃん。」

「わり、準備してなかった。」

「待ってる。上がってていい?」

「おう、リビングでテレビ見ててくれ。」


家族ぐるみの付き合いになると家に入るのに遠慮っていうものの概念すらなくなってくる。


10分後、


「お待たせ。」

「うん。」


買い物事態はすんなり終わった。

アーケード街を自転車を押して歩く葉月と、ラノベの新巻を持って歩く俺。


「帰るか。」


俺がそう言った直後、当時好きだったギャルゲー原作のアニメ「渚の彼方」のアニメ版のオープニング曲のワンフレーズが聞こえた。でも、街中でこんな曲が流れる筈がない。


「…ごめん。」

「ちょ…しゅーちゃん!」


気が付いたら走り出していた。胸が熱く込み上げてくるこれは何だろう。その時の俺は何も分からず、ただ音の鳴る方へ走っていた。


楽器屋っていう場所に来たのはその時が初めてで、何を見ればいいのかわからなかった。ただ、音の鳴る方へ来ただけだから。


その音が何処から鳴っていたのか、俺が探し出すのにそう時間は掛からなかった。


「…ギター」


このとき、初めてマトモにギターを弾く人を見た。

衝撃的な出会い。運命的な出会いを感じた。


「いらっしゃい。」


暫く店員さんに話し掛けられたのが自分だと気付かなくて、辺りをキョロキョロしてしまった。


「えっと、あの…」

「ギター好きなの?」


少し髪の長いイケメン風な店員さんだったこともあってか、余計に喋り辛かったのかもしれない。

普段だったらもう逃げ出している。でも、


「…あの曲、」


ギターを試奏している人を指差してそう言った。


「あのギター弾いてる人の?」


俺は頷いた。

あれがエレキギターだと知ったのはそれからすぐの事。店員さんは話してみると予想通りとても優しくて、ギターについての説明を一通りしてくれた。


別のコーナーに置いてあるアコギを指差して「あれは何ですか?」と聞くと丁寧にアコギについても説明してくれた。


「しゅーちゃん!」

「…あ、」


忘れてた。


「帰るよ!」


珍しく怒られた。

その日は葉月に悪いと思う気持ちもあったから帰路へ。


弾き語りという言葉を初めて聞いた俺はネットで弾き語りの動画を貪るように見ていた。


翌日、楽器屋に行って自分の貯めてきたお年玉貯金で買える一番いいギターを買った。このとき買ったのが今のアコギだ。


教えてくれる人はもちろんいなかったので動画サイトが俺の先生だった。


毎朝の葉月との登校は変わらなかったが、毎朝の会話の内容は次第に変わっていった。


「こう、Fがさ、難しいんだよ。」

「しゅーちゃん最近ギターの話ばっかり。」

「いいだろ。」

「まぁ、いいけどね。」


ふてくされたように葉月は答える。

でも、あまり気にしない。このなんてことない時間が、会話が、俺達なんだと、どこかで安心していた。

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