女の売り方。
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
本作では一人称で描写される登場人物の固有名詞を使いません。
他の登場人物も複数ある役職名やアダナ等で呼ばれます。
文節の大半は一人称となりそれが次々と入れ替わります。
よって、以下の特徴で誰視点であるのか、ご確認ください。
・一人称部分の視点変更時には一行目を【】で区切ります。
・【語る人間の居場所/誰視点】とします。
・「誰視点か」の部分は「青龍の貴族」「魔女っ娘」など代表的な呼称(役職名やアダナ)を入れます。
・次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/一人称】『僕』
地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》
?歳/男性
:太守領の最有力者、五大家の当主。太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。昔は相当な札付きであったようだが、今は特定の相手以外には紳士的。
【登場人物/三人称】
『バカ女』
:太守領を実質的に統治する参事会の議長。最有力氏族五家の筆頭だったが絶賛没落中。それでも氏族内で最も重視される惣領娘であり女系社会の異世界では彼女が産んだ子供が氏族を引き継ぐ立場なのだが、御付きのメイドをたった一人連れて独りで他氏族当主の元へ亡命中。
元々考えなしで祖父母に甘やかされたダメ人間扱いだったが祖父母が失脚、その最中に異世界からの侵略者日本人の支配者主人公の前に誰にも判らない理由で立ちはだかり屋内で催涙ガス浸けにされた後で馬の水場に放り込まれ吊り上げられて対面した直後に異世界からの侵略者地球人類の支配者軍政司令官にタメ口を利いて同席した昔馴染みに殴り伏せられている。
………その後も殺されずに活躍しました。
初出は第114話。第三章「掃討戦/文化大虐殺」より「視線/化学戦考察」から。
何百万文字ぶりくらいに再登場したキャラクターって新キャラ扱いでもいいかもしれない。
なお第一話の伏線が八百万文字くらい後に回収されたらふと言っていいのやら?
『不妊』
:欠陥を個性と主張出来る社会で何故か治療対象とされているのが精神疾患。ともあれ今は健康保険の対象です。つまり不妊は糺すべき異常だと法的に認められました。そもそも老人が産めないのは当たり前なんですがそれは……。
以下より本文、始まります。
人類史で考えましょう。
血族に意味を付ける集団を氏族と呼びます。
人類史に置いて最大1%未満を含む5%程度。
総人口に占める割合です。
ここ百年ほどの間に急速に増加しました。
人類史が400万年ほどですが。
全史の0.000025%まあ例外っと。
なんと現代では血統に意味を付けるのは総人口の10%に!
5~10倍です!
まあ、頭打ちですが。
メリットが無いのに、凄い数字ですよ?
異世界では、どうか。
割合は一般的ですね。
運用は、より合理的。
宗教がなかったから、か。
宗教が成らない理由、か。
魔法や奇跡が起こせるから、なのは間違いありません。
異世界の氏族社会でも血統を重んじます。
地球の先進国とは全く違う方向性ですが。
血統内で優秀な肉体を造ろうとしてます。
理由は簡単ですね。
血統で優れた組織を造る。
血統で優れた個体を造る。
全く同じ地盤です。
やれるならやればいい。
メリットしかないのだから。
――――――――――宗教とは全く逆の発想。
だから人間の品種改良にも熱心です。
血統の改良は出生の前から。
個体の改良は出産の前から。
肉体的に優れた個体を掛け合わせる。
肉体的に優れた母体から出産させる。
はい?
出産時の品質に種は無関係ですから。
優れた血統でも出産事故で台無しです。
だから、母体を重んじる。
血統に意味を付ける氏族では、です。
母体が十代後半に産んだ子供。
ファーストフラッシュと呼んでいます。
お茶の春摘みに例えてるんですね。
最も高値で質が佳い茶葉が採れます。
女性の肉体的最盛期は十代後半。
一番、状態が佳い母体から品質が一番に佳い子供が産まれる。
母体が二十代前半に産んだ子供。
セカンドフラッシュと呼んでいます。
お茶の夏摘みに例えているんですね。
便利な言葉、個性的な茶葉が採れます。
女性の成長は十代半ばで終了。
以降、五年ほどの最盛期。
以後は老衰するだけです。
この時期の母体から産まれた子供は予備役。
直系に数えられません。
母の血統で氏族内の位階が決まります。
が、セカンドは考慮されないんです。
だから、でしょう。
異世界の95%の大衆には無関係。
大衆の場合。
男性は二十代には世に出ます。
女性は十代後半に世に出ます。
成長完了後、最盛期に社会を支える訳です。
まあ、女性の場合は、出産で中断するのが多数。
不妊の女性は歓迎され出世することが多い。
そりゃキャリアの中断が無いから当たり前です。
まあ、例外なんですけれども。
普通に過ごしていれば妊娠するので。
大衆なら母体が誰かすら気が付かれないので、幾つで産んだ産まれたも気にされません。
・・・・・・・・・・血統に意味が無いですからね。
優れた個体は偶々、産まれる。
ほどなく血統へ、氏族に迎えられますが。
子育ても、なんなら老人介護も、社会が担います。
総人口の5%未満な上流階級なら血族が。
それ以外の圧倒的大多数は村や町、街区の人々。
地縁か血縁。
つまり社会。
それだけ。
現代の10%、そのさらに三分の一。
西欧では、それに回帰しつつありました。
子育ての社会化
平たく言えば家族の解体。
さておき。
異世界のお話。
最初から血統を最重要にしないと組織が保てない氏族。
男性は同じですね。
女性は十代後半を出産で過ごします。
ここでも不妊は希少価値。
大歓迎されます。
誰かが産めば良いので。
代わりは幾らでもいます。
二十代になると自由裁量になります。
産みたければどうぞ。
大抵、産まれます。
普通に過ごせば、そりゃね。
だから。
女性向けの役目。
希少な不妊。
しかも優れた肉体の高貴な血筋。
――――――――――とくれば、歓迎されない訳がない。
さて。
ここまでが異世界生殖事情でした。
質
・・・・・・・・・・ああ。
ま、医学的な無理強いが出来ませんから。
死が身近な大衆はともかく。
特権階級で。
二十代後半以降。
子供を産みたがる女性は、居ません。
孕んだら怒られますね。
自分の体を粗末にするな!
って。
―――――――――――――――母体と子供に与える自殺行為/殺人未遂は、今も昔も変わりませんが。
まあ、健康保険の適用外、な理由。
《国際連合開示情報に基づくオンライン異世界講座の一つより》
【大陸東北部/元太守領/現青龍の私物/元王城/今青龍の巣/外郭/五つの塔の一つ/中層階/五大家当主執務室/若い参事】
僕の意思ではないが当主たる、僕。
二番目に必要。
そろそろか。
「お前が十歳な」
「嫌です」
当主たる僕の意志を真っ向、拒否。
惣領娘たる妹は最も重要。
この通り。
「当主の、愛する兄の意志を遮る、って何様?」
「もし今この刻に十歳でも承知は致しません!」
噛み合ってない
・・・・・・・・・・頼もしいやら、危なげやら。
無視されたことに気付かないマヌケには無意味。
同格の範囲に成る五大家の惣領娘同士なんだが。
自分の価値を守る為に形だけは尊重しておけよ。
――――――――――それどころじゃない、のか。
自分を投げすぎ。
青龍の貴族に求められたら、世界ごと自決しそうだ。
我が妹ながら頭がおかしい。
娘も息子も失敗。
親父はどんな教育をしやがったのか。
「貴女、惣領娘だからって何?」
「ご領主様に惣領娘を奪われた家もありますが」
五大家最古参にして両替を司る有力家系の惣領娘は、文字通り青龍の腹の上。
「あの姫を拐かし逐電に駈け落ち呼ばわりしているのは父兄だけでしょ」
だんだんと認めていって認めたくはない。
「惣領娘を孕ませて」
「常に愛されていますから程なく」
いただけるのだからツキがある、とは言えなかった、遮られて。
バカ女。
「春摘みが一番よねぇ♪︎」
若葉に過ぎるが。
妹。
「夏摘みはともあれ」
言われてるぞ。
「あれはあれで好きよ?春が一番だけど」
気付いてない。
「各家が黒髪の跡取りに対抗して画策してます」
お嬢様に対するとは、家を賭ける無謀なことを。
「十前後の惣領娘なんて一人しかいないのにね」
王城控えは見目で選んだ幼い娘でいっぱいだ。
「黒髪を産んだら猶子にでもするのでしょう」
質が佳ければ直系に合わせる、か。
「世代を重ねて確かめて、は佳い方法かと」
あれだけ幼いと、長じてどうか判らん。
「毎日〃可愛がられたら、すぐよねぇ~~~~」
頬擦りするな。
「後先の問題ではありませんから幸いにして」
すれ違うのか合ってるのか。
「あれ?青龍って、そういうの好きだっけ?」
港街の騒ぎはコイツでも知っている。
「今回は因果を含めた令嬢ではありません」
無視と応えの中間を探っているのか。
とはいえ、十歳前後か。
身一つで成り上がりたい者は幾らでもいる。
憧れ。
羨望。
好奇心。
その中、女から選んだ、か。
普通なら十代半ばから選ぶ。
とはいえ、盗賊ギルドのやること。
選ぶ前から目星は付けてあるだろう。
成長し間違い無しと確かめて誘う。
それまで放置じゃ先んじられる。
それまで抱えりゃ無駄かもしれぬ。
だからこそ。
常に備えている。
既に成り上がった娼婦夫の出身地は一巡り。
見た目が佳い者は出身が重なり易い。
行商人が巡り歩く町々村々の話も聞き出す。
見目が佳い者は噂に流れる確かめる。
見目よい種は、儲け種。
話の種にも楽しければ、集めるのも楽なもの。
――――――――――――――それを視て確かめ伝を執るのは、役目柄だろうが。
だから、だ。
すぐに応えられる。
十歳の見目佳い娘を探しだせ。
自ら望むように誘って来い。
成功の為なら何でもする娘を。
既に在る流れを使うだけで。
刻と金を掛ければ容易いこと。
お嬢様の父兄は焦り過ぎた。
それを参考に、五大家の二家が動いたか。
盗賊ギルドの頭目。
青龍の家臣にして、その女が儲けているということは
――――――――――
「我が家も娘を用意しますか」
「ならうちのも」
「要らん」
「今すぐだって女で男を使えばいくない?」
「・・・・・・・・・・」
そろそろ教える。
「無駄だ」
「なんで」
「・・・・・・・・・・」
「美しさは者に拠る」
「だから?」
「――――――――――」
「壊せるが奪えない」
「だから?」
「なるほど」
「だから?」
「自分にしかない魅力を誰に売るか決められるのは、本人だけだ」
「だから!」
「青龍ほど高値を出せる男がいないのですから、美しい女は青龍に自分を売るでしょう」
「皆が一人〃競い合い、青龍の貴族、その独りに忠節を尽くして悦ばせて、もっとも大きな利益を狙う」
「贈り込んだ家さえも、売り飛ばされるだろうよ」
自分を頼む者は、他者への借りを返す必要など、無い。
「青龍の貴族に尽くせば尽くすほど利は膨らみ危険は全く無い、ならば」
妹が頷いた。
天井知らずの怖さを知らない、五大家ども。
・・・・・・・・・・比喩ではない天井知らずは、青龍だけだから。
青龍の貴族に女を差し出す?
その手駒を増やすだけ。
しかも利用出来るつもりだ。
利用されるだけだろう。
身一つでの成功を夢見る者。
容姿の価値を知ってる。
もし、差し出した娘が、青龍に獲り入れたら?
五大家は邦の支配者に非ず。
邦を動かしているだけ。
青龍が必要としていない邦。
取り引きにさえならぬ。
大家は娼婦に金を暮れて恩に着せたつもり。
借りが返されるのは証文があるからじゃない。
紙を焼いても金は返されるものだ。
――――――――――力が在れば――――――――――
無ければ証文など焚きつけにしかならぬ。
商いの基本を忘れるのは、失わずに没落した元商人に有りがちなこと。
実際、港街で青龍の貴族に差し出された幼娘たち。
自分の家を支配してしまった。
郎党も血族の強者に従う。
父母は弊履と棄てられ死んだ。
どう死んだのかは知らん。
差し出す手配をした、お嬢の兄は無事なのだが。
直接には関わっていないから、恨まれ難かろう。
なにより妹の、お嬢が青龍の貴族に愛されてる。
それでも尚、妹の奪回を切望しているかのだが。
反って青龍の貴族が、お嬢様を手離さない理由。
逃げられそうに視えるから、逃げないと示せる。
そりゃ信用も増すわなぁ。
何が幸いするか解らない。
だが、決めるのは、力だ。
世界の持ち主に逆らって魅せる余地は、うちに無い。
「では」
うちは魔女に賭けた。
青龍の貴族が最も可愛がっている女。
エルフも魔女を見捨てない。
お嬢様も魔女の親友なのだ。
魔女自身が二人を好いてる。
しかも、頭が可笑しい程に、義理堅い魔女。
あれは踏み倒す刻に謝るだろう。
――――――――――こんな希少品だからこそ、投資になる。
「・・・・・・・・・・愛は勝つ、ってことよね!」




