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子は宝

ガルドさんの話を聞く限りは浅い洞窟で、入口付近しか使わないようだった。

だが、少し気になる事もあり、奥のほうまで進んで調べてみることにした。


言われていた通り、入口は広いのだが、奥に進むとすぐに道が狭くなる。

ただ、立って通れるくらいの高さと、人が二人くらいはならんで歩ける幅がある。

普段は使っていないというだけで、実は奥の方も使えるのではないかと考えていた。


『この先に空気の流れを感知しました。』

「空気が流れているっちゅうことは…。」


恐らくだが、この先でどこか外に通じているところがあると思われる。

空気が流れるということは、吹き溜まりにはなっておらず、通過できる状況ということだろう。

そのまま少し歩いて行くと、突然、地面が崩れている部分が現れた。


「エコ、これに気付いとった?」

『いえ、ユートと同じタイミングで気づきました。』


エコが嘘をつくというのも考えにくかったので、この暗がりで見えなかったのだろうと納得しておくことにした。

そもそも見るということができるのかどうかという疑問は残るが、こちらに来てからのエコは感覚器を持っていそうに感じる。

なので、それはそんなものと流しておくことにした。


『ユート、この穴の下に空間が広がっています。』

「どうやって分かるんや?」

『空気の流れを感知しています。』

「降りた方がええかな?」

『はい、少し遠くに熱源を感知しましたので、急行することをお勧めします。』

「それを早よ言え!」


ガルドさんに崩れた地面の向こうに空間がある事、その向こうに子供がいる気がするということを伝えて急行する。

崩落した地面を降りてみると、その横には川が流れており、そこに土砂が徐々に流れ込む形になっていた。

その川の流れを遡り、人が居そうなところを探す。

実際にはエコに熱源の方向を確認しながら、子供が閉じ込められているところに向かっていた。


流石にこちらの世界の住人であるガルドさんの足は速い。

日頃、運動不足に悩まされる自分とは違うなと思った。

足がもつれたりしながら、上流の方に向かって行くと、壁際のくぼみに子供の姿を見つけた。

が、それと同時に大きなモグラのような動物が横にいるのも目に入った。


「まさか、魔物が?!」


ガルドさんが慌てて武器を構える。

ただ、そのモグラは慌てるような動作をするばかりで、特に襲ってくる気配はない。

それどころか、子供が懐いているような雰囲気さえ感じる。


『モグラは子供を保護しているようです。交戦は回避してください。』

「ん?魔物が子供を保護しているっちゅうことか?」

『事実関係としてはそうなります。行動原理については理解できません。』

「分からんのかい。」

『私の行動予測モデルと一致しません。』


エコが混乱しているところ悪いかとは思ったが、ガルドさんがモグラに襲い掛かりそうなので、一先ずそちらを優先する。

ガルドさんにモグラに敵意が見られないことを説明し、攻撃を止めることができた。

その時に子供の様子を見てもらい、大きなけがもなく、モグラと仲良くしていることを認識してもらう。

そこまで来て、このモグラの魔物らしきやつは、子供を保護しているのだという結論になった。


「おーい、無事かー?」


そのモグラの傍らにいたのは、行方不明になった子供らしかった。

ガルドさんが声をかけると、二人してこちらに寄ってくる。

モグラもそれを止めたりする様子はなく、自分には友好的に映った。


「エコ、このモグラが何か言ってるみたいなやけど…」

『何を言っているかが分かりました。翻訳しますか?』

「え?そんな機能あったっけ?」

『いえ、標準搭載しておりません。今回の原理は不明ですが、必要そうなので許容します。』


何やら、エコの翻訳機能は元居た世界の言語だけではなく、こちらの世界の言語にも対応しているようだった。

モグラの話しているのを言語というのかどうかわからないが、そこはそっとしておくことにする。


「ああ、頼むわ。」

『はい、それではモグラの言葉を伝えます。』


モグラはもともとこの洞窟をねぐらにしていた動物で、特に人を襲ったりはしないらしい。

主に地中にいるミミズの魔物などを捕食し、基本的に人間を襲うことは無いらしい。

また、どの種族の子供でも「子は宝」という信念で行動しているらしく、この子供たちも保護していたとのこと。

ただ、地面の崩落に巻き込まれて滑落した関係で、小さい方の子供が足を怪我したため、動けなかったそうだ。


この内容については、自分のスキルで理解できていることにした。

エコの存在は、まだ誰にも話さない方がいい。

自分にしか見えず、聞こえない存在を説明しても、信じてもらえるとは思えなかった。


この穴の中の通路を見ていくことで色々と分かってきた。

先ほどの崩落はきっかけで、そこから流れている川に徐々にだが、土砂が流れ込むようになっていた。

ただ、徐々にとはいえ、洞窟の中ではここだけがであれば、土砂が川の水質に影響するというのは考えにくかった。


「エコ、この砂利の流出元は?」

『砂利自体の流出元と言っていいかは分かりませんが、川の両方から少しずつ崩れているようです。』

「止める方法はある?」

『木材による支保工を構築することで崩落を軽減できると思われます。』

「昔のトンネル工事みたいやな。」


なるほど、確かに昔のトンネル工事では、木材で支保工を作る。

今はそれがないので、今回のような地殻変動のようなことが起こると、どこかから崩れ始めるということだろう。


「ガルドさん、井戸の水が汚れるのはこいつが原因ですよ。」

「どういうことですか?」

「また、村に戻ったら説明しますんで、今は子供の方を…」

「あ、すいません!任せてください!!」


ガルドさんに子供を任せ、来た道を戻っていく。

村の人に子供を見せて喜ばせてあげたいと、それだけを考えていた。


翌日以降、トンネル工事の基礎から教えることになるので大変だなぁと思った。

だが、安全のために必要な工事なので大工の皆さんに説明することにした。


これでようやく、水不足から救われるのかな。

そんなことを考えながら、村に帰ることにした。


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