87.オリジナルロッド
■シベル大森林
~第7次派遣3日目~
ワグナーのロッド材料が置いてある北の小屋には昼過ぎに着いた。
道中でタケルはもっと戦いたかったが、残念ながら魔獣に襲われることは無かった。
小屋は切り立った崖に挟まれた小さな谷に建っている。
ワグナーが言うには、風が吹き抜けるので乾燥させるのに最適との事だ。
小屋の中のロッド材料は50本ぐらいある。
少し種類が違うようだが、タケルが見てもその違いは判らなかった。
全てをワグナーの用意した袋に詰めて、転移でワグナーの小屋まで戻った。
光聖教石(転移用)が使い捨てになるが、あきらめるしかないだろう。
ワグナーには、全部で4本のオリジナルロッドを作ってもらうことにした。
ナカジー用に
炎聖教石+風聖教石+楓の木=火炎風ロッド(風重視)
光聖教石+ニワトコの木=治療魔法用ロッド
タケル用に
水聖教石+光聖教石+ニワトコの木=雷魔法用ロッド(雷重視)
水聖教石+風聖教石+モミの木=氷魔法用ロッド(氷重視)
二つの魔法のうち、術者の力が弱いと思う魔法に適した素材を使うことにしてある。
雷と氷はまだ使ったことが無いがタケルはできると確信していた。
次回の派遣で受け取りに来る約束をしてワグナーの小屋を後にした。
複合魔法をロッドで使うのが今から楽しみだ。
もう武術の訓練は必要ないかもしれない。
馬を馬車につないで途中の村を目指した。
14時過ぎなので日暮れ前には村へ着く事ができるだろう。
だが、タケルの考えは甘かった。
馬車が進み出すとすぐに左右から氷獣化した熊が現れた。
「ロブさん、右をお願いします。アキラさん、私と左へ。ナカジー馬車を守っといて!」
全員馬車を飛び降りた。
タケルは炎と風の聖教石を右手に握り締め、左手には炎の槍を持っている。
熊に気づくのが遅かったせいで距離が10メートルも離れていない。
すぐに右手を挙げてイメージを描く。
「ファイアウィンド!」
火炎風が熊の顔面を襲い炎に包まれる!
-グゥオーッオ!!-
後ろ足で立ち上がり、顔の炎を前足で払おうとしたがその足ごと炎が包む。
アキラさんが火炎風ををくぐって立ち上がった熊に走りこんだ。
熊の腹に向けて右拳を真っ直ぐ突き出す!
-バキャッ!-グェゴェー!-
氷が割れる音と、熊の断末魔が重なって聞こえる。
熊の腹部が弾け飛んで大きな穴が開いている
ロブの方向へ振り向くと、馬車の向こうで熊が倒れているのが見えた。
炎の刀で一撃だったようだ。
(やはり武器の方が素早く致命傷を与えられる)
ナカジーは馬車をしっかり守ってくれていた。
「これからも沢山出てくるかもしれないので、アキラさんとナカジーも後ろと左右に目配りをお願いします」
二人からは真剣な表情で頷きが帰って来た。
(これも神の試練だろう、どんどん相手が強くなるはずだ)
タケルの予想通り、複数の獣が組み合わせで何度も襲って来た。
熊とイノシシ、そして狼のコンボだ。
タケルは馬車を守るため、魔獣を見つけるとまずは炎魔法で離れた場所に相手を釘付けにすることにした。
その間にロブとアキラさんが大物をカバーしに行ってくれる。
その後でタケルは数が多そうなほうへ行って焼き払った。
パーティーが役割分担でしっかり機能していた。
ナカジーが帰還した16時までに5回襲われた。
最後に村の周りで50匹ぐらいの狼が待っていた。
遠巻きにしていた輪を段々絞って来ていたようだ。
辺りはすっかり日が落ちている。
だが、狼だけならロブもアキラさんも全く意に介していない。
前後に分かれて進んで行き、片っ端から切って、殴って、やっつけている。
左右から近寄る狼は火炎風で焼き払うと馬車には近づかなくなった。
20匹ぐらい倒したところで狼達があきらめたようだ。
ロブは刀を鞘に戻して、笑顔で戻ってくる。
「狼では、この剣がもったいないですな。手応えがありません」
(その刀はダイスケ用ですから、ちゃんと返してくださいよ)
タケルの心配をよそに、ロブは笑顔のまま馬車を走らせ始めた。
村はすぐそこに見えている。




