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88.雲の作り方

■スタートス聖教会   

~第7次派遣4日目~


ロブと北方大教会まで戻って来たタケルはノックスの部屋へ向かった。

帰還の時間まであと1時間ほどだが最後の時間を有効に使いたい。


「ノックスさん、雨の降らせ方を教えてください」


「雨ですか?」


怪訝な顔で問い返されたが、タケルを連れて裏の空き地へ出てきてくれた。


「ノックスさんは、どんなを頭の中で描いて雲を作るのですか?」


「・・・それは、あまり人に教えておりませんが、細かい水の粒を集めていくことを神にお祈りしております」


(なるほど、水滴が集まって雲になることを理解していると言うことか)

(ノックスにとっては固有魔法だったのか)


「ですので、空気が乾いておる日だと小さな雲しか出来ません」


「今日はどうでしょう?」


「いまなら・・・、ほどほどの雲なら出せるでしょう」


ノックスはそう言って両手を空に突き上げ、目を瞑って顔も天に向けた。


10秒ぐらいたっても何も起こらなかった、だがそのまま見上げているタケルの目には空に霞がかかって来たのがわかった!


霞が段々濃くなり空が覆われていく、そして雲と言える厚みの形に変わった。


ノックスはまだ同じ姿勢のままだ。


空の雲はどんどん厚みを増して行き、やがて辺りが暗くなった頃に水滴が落ち出した。


雨だ!


時間は3分以上掛ったとは思うが晴れていた空から本当に雨が降り出した。

小雨程度に感じた時にノックスは手と顔を降ろしてタケルに向き直った。

雨は小止みになり、雲が段々と薄くなってから消えていく。


「もう少し、しっかり降らす事も出来ますが、かなり魔法力を使いますので」


「ノックスさん、ありがとうございます。私もやってみます」


「?」


タケルは水の聖教石を右手に持ってイメージを固める。


(ワテル様、「クラウド」と叫びますので、空にある小さな水滴を一気に集めてください)


目を瞑って右手を天に向かって掲げる。


「クラウド!」


一気に空が暗くなった!


すぐに足元へ大粒の水滴が落ちてきた。

見上げた空は黒い雲で覆われ、タケルの顔に激しく雨粒が降りかかる。


「タケル様!」


ノックスの声を聞いて、慌てて右手を下ろした。


(ワテル様、今日も願いを叶えていただきありがとうございました)


神に感謝を捧げてノックスを見ると怯えた表情でタケルを見つめている。


「一度ご覧になっただけで・・・」


「ええ、神様は私のことが大好きみたいですから」



■ファミリーセブン 札幌駅前店倉庫     

~第7次派遣帰還~


西條はペットボトルのお茶をタケルに差し出した。


「ロッドの方はうまく行ったらしいじゃない」


「はい、今回は収穫が多かったです。なんと言っても、2種類の魔法を同時に発動できるようになったので、効果的に魔獣をやっつけられそうです」


「2種類同時にか・・・、単純な話だけどね。向こうの世界では禁じ手に近いんだろうね。前に言ったとおり師匠が一人だとそんな事をやろうとは思わないからね」


「やっぱりそうなんですよね。ワグナーさんも言っていましたけど、今までのやり方をそのままにした方が良いと考えているんでしょうか?」


「うん、教会の本部は間違いなくそう思っているね。だけど、教会の中でも一部では違うことに挑戦していく流れもある。南の大教会はそう言う人達が集まっているんだ」


-南方大教会、まだ行っていない州都か。


「で、次はどうするの?」


「はい、次もダイスケがお休みなので、修練に時間をかけたいと思います。ロッドと武器を回収してから新しい複合魔法にも挑戦してみます」


「なんだか楽しそうだね。僕も一緒に戻りたくなって来たよ」


「今度、一緒に戻りましょうよ。サイオンさんにも色々教えて欲しいし」


「・・・うん。でも、君たちを送るためには私が此処に居ないとね」


確かにそうだ。

だが、西條の口調が少し気になった。


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