101.派遣勇者リーダーの役割
■YUHA商会本部事務所 応接室
新しいメンバーとなる北川さんと面接した後は元勇者リーダーだった進藤と話をすることになっていた。
西條が言うには、リーダーとしてではなくメンバーとして向こうに行けないかと相談があったそうだ。
理由や経緯は西條の口から説明できないと言っていた。
勇者のあり方に干渉することは神との契約に反するらしい。
それなら、タケルに会わせることも微妙だと思うが、進藤の希望に基づくなら問題ないと言う。
そう言う訳で、目の前に元(?)リーダーの進藤光平が居る。
西條もタケルの横に座っているが、話は二人でするように言われた。
「どうも、進藤です」
「はじめまして、山田 武です。良ければタケルと呼んでください、向こうの世界ではそれで通してますので」
「だったら、俺もコーヘイで良いです」
「コーヘイは、バトラーさんのところにいたんだよね」
「ええ、東方州都のゲイルです」
「バトラーさんに絡まれなかった?」
タケルは抱きついてきた美人司教のことを思い出していた。
「最初はそうでしたけど、俺達が魔法に興味を示さなかったんで、そのうち殆ど会う事が無くなりましたね」
「コーヘイは魔法を全然やらなかったの?」
「最初にちょっとやったんですけど、見ていても大して戦いの役に立ちそうに無かったから、剣一本で行くことに決めて、ひたすら斬りまくってました」
「それは凄いね、でも魔法剣とかも凄いと思ったでしょ?」
「ええ、そうですけど、何かずるいような気がして、やっぱり剣なら剣一本で勝負したいじゃないですか?」
-そう言うものなのかな?
「元々、剣道をやっていたとか?」
「ええ、ずっと剣道やってたんで剣で倒すって言うのには憧れがあります」
「メンバーはどうだったの?」
「一応、俺の考えに賛同してくれる奴らでずっと行ってたんですけど・・・、みんな飽きちゃったみたいで」
「飽きる・・・か。コーヘイは派遣勇者の役割はどんな風に考えているのかな?」
「俺はひたすら剣の腕を磨いて魔竜を倒すのが俺の役割だと思ってます。だから、もしよければ、タケルさんのチームに入れてもらって、俺の力を活かせないかなと・・・。自分で言うのもなんですけど、8倍効果でかなり頑張ったんで、教会武術士ぐらいなら楽勝で倒せます」
- 本当なら剣技自体はすごいな。
「コーヘイ君の考えは良くわかったけど、僕の考えとは少し違うかな」
「どんな風に違うんです?」
「別に剣を否定するつもりは全く無いけど、剣とか魔法とかは『手段』だから何でも良いと思ってるんだよね」
「手段?」
「うん、要するに魔竜を討伐するのが目的で、それが派遣勇者の仕事だから、手段を優先するのでは無くて、目的を達成するための最適な手段を選択する。それが僕の考え方だね。そう言う意味では、剣だけで戦いたいなら一緒にやるのは難しいと思う。僕たちと一緒にやるなら、必要に応じて魔法も使って欲しいからね」
「目的・・・、手段・・・」
「もちろんこれは僕の考えだから、コーヘイにはコーヘイの考えがあっていいと思うよ」
「それだと、メンバーが好き勝手やるってことは無いんですかね?・・・何ていうのかな・・・リーダーシップを持って方向性を決めるのがリーダーの仕事ですよね?」
「方向性を決めるのは確かにそうだけど、僕の中では手段は別にして魔竜討伐に持っていくのがリーダーシップだと思ってる。そのために剣や魔法を使っていくっていう事かな。だけど、メンバーがやりたいことは出来るだけ聞くようにはしてるけどね。剣をやりたい、体術をやりたい、魔法をやりたい、それぞれの希望があればそれをやってもらう。だけど、必要に応じて剣+魔法とかもやってもらわないとチーム全体は強くならないからね」
「・・・やっぱり、俺はリーダーに向いてなかったんですかね?」
「そんなことは無いと思うけど・・・、コーヘイのスタイルと僕のやり方が違うだけじゃないかな?ひょっとすると、魔竜を討伐できるのはコーヘイ達かもしれないし」
「でも、一人じゃ無理ですからね・・・」
「また、メンバーを集めて行けば良いんじゃない? でも、僕としては魔法をやるのは勧めたいけどね」
「それですよ。西條さんは、はっきりと言わないんですけど、そっちは魔法が凄いらしいじゃないですか? 俺が見た凄い魔法は大きな火の玉が出せるヤツですけど、避けられたら終わりですよね?」
「そうだね、だから今は火炎放射器とか雷とか・・・」
「雷! 火炎放射器!? そんな魔法があるんですか!?」
「うん、出来るようになったよ。それに刀も炎が出っ放しだから、コーヘイが持てば無敵だと思うけどね」
「・・・、そんなの向こうの魔法士も出来ないですよね?」
「だって、僕たちは勇者なんだから誰よりも強くて当然だよね?」
「理屈はそうですけど、教えてもらってないことは・・・」
「性格なのかな?色々試してやってみるのが好きだから、魔法はどんどん覚えてみた。その代わり、体術は遅れているのかもしれないね。そう言う意味でも、コーヘイのやり方が間違ってるわけではないんじゃない?今からでも遅くないから、凄い剣術+凄い魔法なら・・・凄い勇者になれそうじゃない!」
「でも・・・、やっぱり俺をメンバーに入れるのは難しいんですかね?」
「そう言う訳ではないんだけど、もう一つアイディアがあってさ。合流できないかを西條さんと相談したいんだよね」
「合流って?タケル君はまた変なことを考えてるの?メンバーは4人までって決まってるよ。これは神との契約だから絶対変更できない」
横に座っていた西條が驚いた顔でタケルへ向き直った。
「ええ、それは理解しています。でも、コーヘイはリーダーとしてなら一人でもゲイルには派遣できますよね?」
「もちろん、それはできるけど?」
「だったら、僕と同じサイクルで派遣してくれれば僕が向こうでゲイルに迎えにいきます。そうすれば、現地で一緒に動けるじゃないですか? これなら神との契約に違反しないですよね」
「それは、勇者自身がそうしたいならできるはずだね。僕がその話を君たちに働きかけることはできなかったけどね」
- 西條さんも頭の中にはあったのか。
「だったら、コーヘイは今までどおりリーダーでゲイルに派遣しておけば、今後メンバーが増えた時も対応しやすくなるんじゃないですか?」
「コーヘイ君がそれでよければ、僕は構わないよ」
西條も喜んでいるようだ、西條たちは勇者の動きに干渉しない、いや、干渉できないからタケル達に具体的な指示は一切してこなかったが、こういうケースも考えていたのだろう。
「ちょ、ちょっと待ってください。ゲイルに迎えに・・・って言いましたけど、そっちの派遣されてるところって西の外れの方ですよね? 馬車で10日ぐらい・・・」
「ああ、僕は転移魔法が使えるから、一瞬でゲイルまで往復できるよ」
「転移魔法? ってそれは何ですか?」
「あれ?あんまりゲームやら無いんだっけ、遠距離の瞬間移動のことだけど」
「・・・タケルさんの魔法って無茶苦茶なんですね」
「ああ、そのセリフはメンバーからよく言われるんだ」
そう、ナカジーにいつも言われている。




