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102.バトラーの固有魔法

■スタートス聖教会

~第10次派遣1日目~


心配していたダイスケも予定通り参加して、マユミを加えた4人で10回目の派遣が始まった。

タケルはコーヘイを迎えにゲイルへ行く前に、マユミをノックスとマリンダに紹介するため、司教の部屋へ向かった。


「おはようございます、今回と次回はナカジーが休みなので、新しくマユミさんを連れてきました」


マユミとは朝4人揃った時に呼び方を決めていた。マユミは呼び捨てで言いと言い、その代わりマユミも全員呼び捨てで行きたいそうだ。

アキラさんも対象だが、とりあえず良しとしておいた。


「そうですか、私はノックスです、こちらはマリンダ。マユミさん、どうかよろしくお願いします」


ノックスは柔らかい笑顔で迎えてくれたが、マリンダは軽く頭を下げただけだった。


「マリンダさん、忙しいところ悪いけどミレーヌに紹介して、部屋とか着替えとかの案内してもらっていいかな?僕はゲイルに行ってくる用事があるから」


「わかりました。それでゲイルには何をされに行かれるのですか?」


マリンダがかなり詰問調で問いただしてくる。

ゲイルと言えば・・・、バトラーの逆セクハラを気にしているのかもしれない。


「ああ、向こうの勇者をこっちに連れてきて一緒に修練するつもりなんだよ」


「・・・そうですか、お気をつけて。お早めにお戻りくださいね」


全然目が笑っていない笑顔を向けるマリンダへ、タケルも引き攣った笑顔を返してから転移の間に向かった。


■東方州都ゲイル 東方大教会


ゲイルにはコーヘイを迎えに来たのだが、バトラーに聞きたいこともあった。石を持っていかないと帰してもらえないかもしれないが、そこはコーヘイにも助けてもらうことにしよう。


扉の開いているバトラーの部屋にノックしてから入ると、ソファーの向こうに座っていたバトラーがタケルに飛び掛ってきた。

豊満な全身でタケルを抱きしめてくれる。


「久しぶりじゃない、私の勇者様♪ 元気にしてた?」


「バトラーさん、槍を持っているから危ないですよ!」


夜のお店以上に歓迎してくれるバトラーを何とか押し離す。

コーヘイは唖然とした顔でソファーから二人のやり取りを見上げていた。

どうやら、バトラーはタケルに執着しているようだ。


「それで、うちの勇者から話は聞いたけど、一緒に修練するんだってね」


「ええ、せっかくなのでお互いの技を教えあおうと思っています」


「そうなのね、勇者様の思う通りでいいけど、うちの勇者が魔法に興味を持ってくれるなら嬉しいわ」


「そうですね、私もそうなると嬉しいと思います」


コーヘイも横で頷いている、魔法もやる気になったようだ。


「それで、バトラーさん、せっかく来たので・・・」


「何! 新しい石が出来たの!?」


「いえ、残念ながら石は作っていません。その代わりと言うか、教えてもらった魔法石で作った槍が出来たので、お見せしておこうと思いまして」


タケルはテーブル越しに槍を横にして渡した。


「綺麗な穂先ね・・・、腕のいい職人の仕事だわね・・・でも、見てても判んないから、二人とも付いて来なさい」


バトラーはタケルに槍を帰して、二人を教会の裏側にある大きな空き地-修練場-に連れて行った。


「ここで使って見せてよ」


「いいですよ」


タケルは立てて持っている槍の穂先に何も言わずに炎を灯した。

穂先の上半分が炎に包まれる。


「炎は一度つけば消えないのでふり回せば穂先が伸びます」


「ハッ!」


タケルは槍を腰に構えてから素早く前に突き出した。

炎の穂先が1メートルぐらい伸びた。

バトラーもコーヘイも目を丸くしている。


「でも、これはこの槍の力の1割程度です。炎の槍をもっと伸ばすことが可能です。あそこの切り株を破壊してもいいですか?」


30メートルぐらい向こうにある切り株を槍で差した。


「破壊? いいわよ、好きになさい」


バトラーは妖艶な笑みを浮かべてタケルと切り株を見比べている。


タケルは軽く頷いて、右足を半歩引いて槍を構えた。

息を少し吸ってから前に飛び出し、槍を切り株に向けて一気に突き出す!


「ファイアーランス!」


叫び声とともに槍の穂先から細い炎の線が切り株に直撃する。

轟音と共に切り株が根元から吹き飛んで、周囲に土埃が舞い上がった。


「何! 今の!?」


バトラーの顔から笑みが消えている。


「この槍の力と魔法の力を組み合わせた技です。元々普通の槍でやってたんですけど、一回やると疲れて・・・。でもこの槍なら疲れませんし、届く距離も伸びました」


「タケルさんは、やっぱり無茶苦茶なんですね」


「そうかな?魔竜討伐でしょ?俺は全員がこのぐらい出来るようにならないと勝てないと思ってるけど」


「やっぱり、俺とは目線が違ってたんですかね」


「目線?」


「ええ、俺は剣でどこまで出来るかしか考えてませんでしたけど、タケルさんの発想は青天井なんでしょうね」


確かにそうだろう、タケルはこの世界の魔法や魔法武具は思いついたモン勝ちだと思っている。


「これもバトラーさんが、魔法石について教えてくれるから使えるようになったので披露しておきたかったんですよ」


「あら、可愛いこと言うじゃない。部屋に戻ってゆっくりお茶でも飲みましょうか?」


「いえ、実はバトラーさんにはもう一つ教えて欲しいことがあるんです」


「何? タケルのお願いなら何でも聞くわよ。お代は聖教石でも体でもどっちでも良いわ」


「じゃあ、聖教石でお願いします。バトラーさんにも固有魔法って言うのがあるんですよね?どんな物か教えてもらえませんか?」


バトラーのセクハラトークは軽く受け流しておいた。


「固有魔法ねぇ・・・、それは人に教えないから固有魔法なのよ。それと、残念だけど私のは固有魔法じゃあないわね」


そうか、司教クラスなら全員が固有魔法を使うわけでもないのか・・・


「でも、風の魔法の使い方なら私より詳しい魔法士はいないから、タケルになら特別に教えてあげても良いわよ」


「ぜひ、教えてください」


風の魔法・・・、風を送る以外にどんな使い道があるのだろう。


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