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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と水辺の少女たち

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番外編 やり直し勇者と水辺の少女たち 鮮紅と黄金の章

いつも読みに来てくれてありがとうございます。


番外編

【番外編 やり直し勇者と水辺の少女たち 鮮紅と黄金の章】


お楽しみください。



 ――クレア湖 浜辺――



 日が少し下がり始めた頃、俺とミリスはララティアの手を引いて歩いていた。


「しかし、魔王とルクレツィアはどこに行ったんだ?」


 俺は辺りを見渡すが、開けた砂浜と湖だけが広がっていて、人を見失うような場所ではない。


 それに、ルクレツィアはともかく、魔王はあの見た目だ。


 嫌でも目につくはずなのに、その姿はどこにも見当たらなかった。


「確かに、どこにも見当たりませんね……ララ、お二人がどこに行かれたのか心当たりはありませんか?」


「えっと……わかんない……」


 ミリスがララティアに問いかけるが、ララティアらしい返答しか返ってこなかった。


「さて、どうしたものか……とりあえず、別荘に戻るか?」


 すると俺の提案に、ララティアが駄々をこね出してしまう。


「うぅぅ、やだ! 遊びたい……」


「やだって、言ってもなぁ……」


「……遊ぶ……」


「でもなぁ……」


 ララティアの対応に困っていると、ミリスが声をかけてきた。


「お兄ちゃん、ララのご両親は私がイリーナさまと合流して探すから、お兄ちゃんはララの遊び相手になってください」


「いや、それは申し訳ないというか……」


「問題ありません。それに……次はララの番だと思えばちょうどいいと思います……」


 そう言ってミリスは軽くお辞儀をした後、東屋のある方へと歩いて行ってしまった。


「バイバ〜イ!」


「……ララティアの両親を探しに行ったんだぞ……」


「……うん?」


 俺はララティアの自覚のなさに、少し不安を感じつつも、彼女の目線の高さになるようにしゃがんで話し出した。


「で、何して遊ぶ?」


「えっと、こっち……」


 そう言ってララティアが俺の手を取って走り出すと、波打ち際まで来て立ち止まってしまった。


 そして波の動きに合わせて、後ろに引いたり、前に進んだりを繰り返していた。


(……な、何が楽しいんだ、これ!?)


「それは、ララちーと同い年の子にしか、わからないんじゃないかなぁ」


「そうかぁ、て、リアラ!?」


 ララティアの遊びを不思議そうに見ていると、俺の背後でリアラが宙に浮いて話しかけてきた。


「よ、よっすぅ、クロっち……元気してた……?」


「あ、ああ、まあまあかな……」


「ふぅ〜ん、そっか……」


「…………」


「………………」


 俺とリアラは短い挨拶を交わすが、別荘でのこともあって、お互いに目を合わせることができないでいた。


(き、気まずい! あんなことあった後だから、めっちゃ気まずいぞ!)


 今でもはっきりと覚えている。


 偶然とはいえベッドにリアラを押し倒し、お互い雰囲気に流されていたとはいえ、危うく一線を超えてしまうところだった。


 だが、あんな恥ずかしいけど、何かを期待しているような見つめられ方をされ、微かに鼻をくすぐる甘い香りと、触れてしまった肌のきめ細やかな感触、そしてリアラのいつもと違ったか弱い声。


 セレーネの妨害があったとはいえ、よくこれで未遂で終わらせたと褒めてほしいくらいだ。


(てか、リアラもあのままどうするつもりだったんだ?)


 そんなことを考えながら、ふとリアラの顔を見ると、何かを我慢しているかのように震えていた。


(うん? どうした……あっ!?)


 そう、リアラもセレーネと同じ女神、そして女神は自身に向けられた言葉なら、口に出さなくても聞こえてしまう。


 ……つまり。


「き、聞こえて……た?」


「……ぜ、全部……」


「……す、すまない……」


「……う、うん……」


 そして、俺とリアラは互いに顔を合わせることができずにいると、ララティアが駆け寄ってきた。


「リ、リアラ! 一緒にいこ!」


 ララティアがリアラに声をかけると、リアラの手を引いて、また波打ち際まで走り出した。


「あ、ララちー、転ぶよぉ!」


 そして、ララティアがまた波打ち際で、よせては返す波の流れに合わせるように、後ずさったり進んだりを繰り返した。


「あははっ! ララちー、何がおもろいのかわかんないってぇ」


 俺は2人の様子を見て、余計なことを考えて気まずくしてしまったことを反省し、頭の中のモヤモヤを振り払うように首を左右に振って、2人のところに歩み寄った。


「リアラ、魔王とルクレツィアを見なかったか? ララティアが1人だったから探してたんだ」


 俺はいつものようにリアラに話しかけ、魔王たちのことを聞いた。


 するとリアラは不思議そうに、俺の質問に答えた。


「うん? 2人ならずっとそこにいるじゃん?」


 そう言ってリアラは、湖の方を指差していた。


「……え?」


 俺はリアラの指差す方へと視線を向けたが、何も見えない。


 湖を除いては。


「……なぁリアラ、もしかしてだけど、2人って……」


「そう、"湖の中"にいるじゃん!」


 その瞬間――リアラの指差していた場所を中心に、湖がだんだんと渦を巻き出した。


「なっ!? 2人とも! こっちだ!」


「えっ? ちょっ! クロっち!?」


「おぉー!」


 俺は慌ててリアラとララティアを抱えて砂浜まで移動し、渦の方へと視線を戻すと、渦の中央の底から何か……というか、魔王ベルガドーラと、魔王の曲げた腕に座る魔王妃ルクレツィアが姿を現した。


 ベルガドーラとルクレツィアは、どこで売っていたのか知らないが、2人ともサイズぴったしの水着姿だった。


 そしてルクレツィアが、俺たちを見つけると、人差し指を水面に向かって振り、湖が二つに割れて俺たちとの間に道ができた。


「アナタ」


「……うむ……」


 すると魔王がゆっくりと、こちらに歩き出した。


 さすがというべきか、害意はないと事前にわかっていなければ、その巨体が迫ってくる姿に圧倒されそうになるところだった。


 そして砂浜まで来ると、ルクレツィアが俺に話しかけてきた。


「これはクロードさま、そろそろいらっしゃる頃だと思っておりました」


「……あ、ああ、アンタらは相変わらず予想外な現れ方をするな……なんで湖の中に?」


「いえ、実は魔界にこのように澄んだ水辺は珍しくて、大人げないと思いながらも、遊泳を楽しませていただいておりました」


 そう言ってルクレツィアは、少し恥ずかしそうな表情を見せたが、すぐに落ち着いた面持ちに戻った。


「ですが、それも十分に楽しませていただきました……ここからは魔族を統べる者としての振る舞いを……」


「ママ、見て!」


 ルクレツィアが話している間に、ララティアが割って入ると、その場でくるんと1回転した。


「似合う?」


「…………えぇ、もうなんて愛らしいんでしょう! ねえ! アナタ、アナタもそう思いますよね!?」


「……うむ……」


「もう! アナタったら、そんなに絶賛して! それにララちゃんは、天使じゃなくて悪魔ですよ!」


「振る舞いはどうした!? 振る舞いは!?」


「ああ、申し訳ありません……今日はこれで六度目でしたが、気持ちが抑えきれずに……」


「待って!? 俺の知らないところで、5回もそのやり取りやってたの!?」


 さんざんツッコミを入れてしまったが、俺は2人が客人であったことを思い出して、軽くせき払いをしてから話を戻した。


「ま、まぁ、楽しんでくれているみたいでよかった……今日は、このまま別荘に泊まるから、みんなもゆっくりしていってくれ」


「お心遣い痛み入ります……ところでクロードさま、一つお尋ねしたいことと、進言したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


「うん? 俺が答えられることなら、なんでも答えるし、ルクレツィアの忠告なら無碍にはしないから安心してくれ!」


「では、お言葉に甘えて……」


 ルクレツィアが一瞬黙ってしまうので、俺も緊張して身構えてしまったが、すぐにルクレツィアの表情が含みのある笑顔になって話し出した。


「クロードさま、婚約者候補はあと何人、増やされるご予定でしょうか?」


「……はぁ!? な、何を聞いてるんだ!?」


「そ、そうだよマミー!?」


 俺は質問の意味がわからずに慌てて聞き返すが、なぜか隣にいたリアラも一緒になって聞き返していた。


「いえ、クロードさまには女難の相が見えますので、5人で十分なのか、それともまだまだ女性をはべらせたいと思われているのか確認せねばと思いまして……」


「……全知って、そんなこともわかるのか?」


「いえいえ、あくまで可能性の話でございます……でも、そうですね! もし増やされるなら……」


 そう言ってルクレツィアがまた一瞬黙り込み、俺も改めて緊張して身構えてしまった。


「……"7人"までに、してくださいませ」


「……7人、ずいぶん正確な数字だが、理由があるのか?」


 俺は不謹慎だとも思ったが、ルクレツィアの言うことには意味があると思い、彼女にその数字の意味を問いかけた。


「いえ、一日1人で夜伽(よとぎ)をされるなら、7人いれば一週間で一巡してもめないと思いまして! 5人なら、2〜3日に一度休憩でもいいと思いますが、やはりどなたかの相手をされている方が、みんなも納得なされると思いますので!」


「……そ、そうか……」


 ……意味なんて特になかった……


「いいですか? クロードさま……7人ですよ! まぁ、有力そうな方はすでにいらっしゃるようですが……しっかりとお悩みください」


「マ、マミーぃぃぃ」


 ルクレツィアの言葉に、リアラが唸るような声をあげていたが、俺は一つの疑問を抱いていた。


(今のメンバーでも十分に色濃いのに、今後そんな人物が現れるのか?)


 俺は少し悩んだが、考えただけで恐ろしくなっていると、ララティアが声をかけてきた。

 

「クロードさま? どうかしたの?」


「……いや、なんでもないよ! 次は何をして遊ぼうか?」


「えっとね、私も水の中に潜りたい!」


「……泳げる範囲で遊ぼうな」


 俺は一抹の不安を振り払い、ララティアたちと湖での遊泳を楽しむことにした。


 そして、別荘での1日を過ごした俺たちは、本来の目的を果たすため、冥界へ向かう準備を進めたのだった……

 


 

 ――番外編 やり直し勇者と水辺の少女たち 鮮紅と黄金の章 完――


 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


これで、番外編は終了となります。

次回の更新は8月からを予定していますので、しばらくお待ちください。


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次回もよろしくお願いします。

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