番外編 やり直し勇者と水辺の少女たち 琥珀の章
いつも読みに来てくれてありがとうございます。
番外編
【やり直し勇者と水辺の少女たち 琥珀の章】
お楽しみください。
――クレア湖 浜辺――
浜辺に戻ると、クレスとイリーナ、ルーシェとミリスの4人が俺のことを待っていた。
「ああ! クロード、遅いよー!」
俺に気づいたクレスが、手を振りながら大声で呼んできた。
「すまん! ちょっと、着替えに手間取ってさ……ララティアは?」
「何それ? 変なの! ララちゃんなら、パパさんとルクレツィアさんの3人で遊びに行っちゃったよ!」
「パパさん?」
「そう! だって、魔王呼びはなんか変だし、でもなんて呼べばいいかわからないから、パパなの!」
「……確かに」
彼女の言っていることに納得していると、クレスが急に話を変え出した。
「ねぇねぇ、それよりも泳ぎで勝負しよ!」
「勝負?」
「そう! ほら、あそこにボートが見えるでしょ! 桟橋にあったのが流れちゃったみたいなんだけど、ちょうどいいから、どっちが早くあそこまで泳げるか勝負しようよ!」
そう言ってクレスは、俺の手を引いて波打ち際まで移動した。
水が思ったより冷たくないことに、一瞬驚いたが、すぐ近くで体を捻らせて準備運動を始めるクレスを見て、俺も手足をぶらぶらさせて準備を始めた。
「アンタたち! 精霊術の使用は禁止よ! 合図はこれが弾けたらスタートね!」
そう言ってルーシェが手にした火球を空高く放り投げ、少しすると『パァン!』と弾けた音とともに、俺とクレスは湖に向かって走り出した。
駈けた足がだんだんと水の抵抗を受け、完全に止まってしまう前に、空気を思いっきり吸い込んで体を弾ませて水の中に飛び込む。
視界の隅で、湖に飛び込んで水飛沫を上げる姿が見えた。
俺はがむしゃらに足をバタつかせ、腕を何度も回転させボートを目指す。
少しずつ、だんだんと近づくボートにあと少しのところで手を伸ばし、船体に手がつき、船にぶつかるようにして泳ぎを止めた。
そして、俺の少し後にクレスもボートに手をついていた。
「はぁはぁ、クロード早いね! ビックリしちゃった!」
「ふぅ、まぁな……昔、重りを着けて泳ぐ訓練もあったからなー、思い出すだけで吐き気が……」
「あはは! 大丈夫?」
そんな他愛のないやり取りをクレスと交わしたあと、ボートを桟橋に戻すために、ボートに乗り込んだ。
先に俺がボートに乗り、そしてクレスに手を差し出して、彼女の手を引っ張り上げてボートに乗せた。
「ありがとう、クロード!」
そう言ってクレスがボートに立ち上がった瞬間――重心がずれたボートが大きくぐらついた。
するとボートの上に立っていたクレスが、バランスを崩して俺の方に倒れ込んできた。
俺はクレスを受け止めたが、ぐらつくボートの上では俺もバランスが取れず後ろに倒れてしまう。
ゆっくりと揺れがおさまるボートのなか、俺は倒れ込むクレスを抱きしめるようにしていた。
いつもなら抱きついてくるクレスに何も感じなかったが、今はお互い水着姿で、少し動くだけで肌と肌が触れ合って、落ち着かなかった。
「ご、ごめんね、クロード……重いよね?」
「いや、そんなことは……」
俺に話しかけるクレスの顔は、俺の胸元にあって目を合わせようとしない。
俺も彼女を抱きしめる手をどうすればいいのかわからず、クレスの肩と背中に置かれた手を動かせずにいた。
引き締まったなめらかな肌の触り心地と、俺の腹に感じる確かな柔らかさが、彼女も立派な女性であることを思い知らせてきた。
「ねぇ、クロード……私もちゃんと、女の子になってるでしょ?」
「えっ?」
「その、胸はイリーナやルーシェと比べられると困るけど、でもちゃんとあるんだよ!」
クレスはそう言いながら俺の方へ視線を向けると、瞳をうるませながら、少し震えたような小さな声で問いかけてきた。
「み、見たい……? それとも、触ってみる……?」
「ク、クレス……?」
「その、揉むと大きくなるって言うし、自分でやるより誰かにしてもらったほうがいいかなって……どうかな?」
そう言って彼女は、俺に身を委ねたまま動かなかった。
俺は行き場をなくしていた手をクレスの肩と腰に当て、彼女の反応を見た。
だが彼女は一瞬肩を震わせたが、すぐに力が抜けるのを感じた。
そして俺は、腰に当てた手をゆっくりと這うように上に移動させた。
するとクレスが俺の首に手を回すと、俺の顔に近づいてきた。
互いの唇が近づき、俺の這う手がクレスの水着の隙間へと潜ろうとしたその時――
「お二人ともー! 大丈夫ですかー!?」
遠くからイリーナの声が聞こえ、とっさにクレスが起き上がると、浜辺にいるみんなに向かって声を上げた。
「大丈夫ー! すぐに戻るねー!」
そしてクレスが一呼吸つくと、いつものように厳しい言葉が飛んできた。
「クロード、ちょっと筋肉落ちたんじゃない? ちゃんと鍛錬してる?」
「そ、そうか? ちゃんと日課の素振りはしてるんだけどな……」
「ううん、毎日しっかり食べてるから肥えてきてるんだよ! だから、ボートはクロードが漕いでね!」
「なんだそりゃ? まぁいいけど……」
クレスに言われるがまま、オールを手に取ってボートを漕ぎ出したが、彼女がいつもの調子に戻ってくれたことに、俺は内心ほっとしていた。
今の出来事もそうだが、リアラとの一件も含め、今日の俺は軽率な行動を取りかねない危うさを持っていた。
もしかしたらクレスも、それに気づいて話を紛らわせているのかもしれない。
全員婚約関係にあるのだから、問題ない話ではあるが、その場の勢いで進んでしまっているのはよくない。
「気をつけないとな……」
俺は自分に言い聞かせるように、つい口に出してしまったが、クレスはそれに反応することもなく、ただうつむいたままボートに揺られていた……
――やり直し勇者と水辺の少女たち 琥珀の章 完――
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。
次回もよろしくお願いします。




