番外編 やり直し勇者と水辺の少女たち 後編
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番外編
【やり直し勇者と水辺の少女たち 後編】
お楽しみください。
――セレンディア領 クレア湖――
「ク、クロードさまー!」
「この声……ララティアか!?」
その声が聞こえる方へ視線を向けると、ララティアもいつもと違う格好をしていた。
真紅と黒を基調にしたワンピースタイプで、ドレスのようなスカートには、小さなフリルがあしらわれていて、年相応のなかにも気品を感じられる水着だった。
「えっと……クロードさま、似合ってますか?」
そう言ってララティアは、もじもじしながら俺の返答を待っていた。
「あ、ああ、とても似合っているよ……可愛いぞ!」
「か、かわいい……えへ……」
子供に向けるような口調で褒めたつもりだったが、ララティアはとても満足そうに、ヒロインたちの影に隠れてしまった。
するとやっぱり、セレーネが騒ぎ出した。
「ちょっ! クロードさん! 何ですか、あの生き物は!? 可愛いが天元突破してますよ! ロリ枠という、コンプライアンスが厳しいなかでも、ドロワーズタイプの水着を選ぶことで、広がったスカートから生足が見えても、それ以上は覗かせない鉄壁の防御力が可能にした見た目の可愛らしさ&妖しげな感じはまさに小悪魔! あぁやばい、眼福過ぎて死んじゃう……」
「うるさっ! てか、そろそろ説明しろ! 何でみんな水着なんて着てるんだ!?」
「はぁ、クロードさん……本当に鈍ちんですねぇ〜、いいですか! これは、俗に言う『水着回』です!」
「み、『水着回』だと!?」
「そうです! 下着姿とは違うけど、普段の姿からは想像もできないくらいに、お肌を露出しているのに健全な水着! それを披露するために設けられる『水着回』! それこそ我らがユートピア! そして最後に誰もが口を揃えてつぶやくのです……『あれ? もう30分経ったの!?』と……」
「は、はぁ……」
そう言ってセレーネの熱弁を聞いて呆れていると、いつの間にか、クレス・イリーナ・ルーシェ・ミリスの4人が、俺のそばまで集まっていた。
「ねぇ、クロードー、私たちには、何か言うことはないのかなー?」
「そうですね、せっかくみんなで選んだのに感想の一つも貰えないのは寂しいですね……」
「別に、アンタに褒めてほしいわけじゃないけど、何も言われないのはムカつくわ!」
「お兄ちゃん、似合ってる?」
「ああっと、そうだな……」
(おい! みんな何でこんなにぐいぐい来るんだよ!?)
「えっ? 当たり前じゃないですか! 場所が場所だからって、誰が好き好んで水着姿になりますか? 誰かさんに見てほしくて、水着になったに決まってるじゃないですか! 逆に何で褒めてあげないんですかぁ!?」
(いや、それはわかったんだけど……)
「わかったんだけどぉ?」
(……目のやり場に、困る……)
「……ヘタれむっつり」
【勇者クロードは『ヘタれでむっつりな勇者』の称号を手に入れました】
(おい!? だからなんでスキルの声が勝手にするんだよ!? てか、その称号はやめてくれ!)
……結局俺は、みんなの水着姿を『似合ってるよ』『キレイだ』『魅力的だ』『可愛いよ』と、彼女たち1人1人に伝えて満足してもらった。
そして、いつの間にか用意されていた水着を渡されたので、別荘に戻って着替えることとなった。
「はぁ、なんかどっと疲れたぞ……」
「クロっち、お疲れだね〜、やっぱりおっぱい揉んどくぅ?」
「リアラか……ララティアなら浜辺に……って、なんでここにいる!? 着替え中だぞ!」
「えぇん! スルーされた〜! 少ない出番だから体張ったのに〜」
そう言って泣き真似をするリアラだが、こちらはタオル1枚の状態でそれどころではなかった。
「わ、わるかったから、頼むから部屋から出てってくれ!」
「えぇ〜、いいじゃん! 減るもんじゃないしぃ〜、なんならウチも脱ごうかなぁ〜」
「やめろバカ! 何して……」
「えっ! ちょっ……」
肩の布をズラすリアラに慌てて駆け寄った瞬間、足がもつれて彼女をベッドに押し倒すようにして転んでしまった……
静まる部屋のなか、転んだ拍子に床に落ちたタオル、重なる体、そしてリアラから感じる甘い香り。
「す、すまない……すぐにどくから……」
そう言って俺は、リアラから離れるように体を起こすが、その時に彼女と目が合う……
いつもは陽気な笑顔で茶化してくるはずの彼女の顔は、目を大きく見開き、顔を赤らめて固まっていた。
俺は目を逸らすように視線を泳がせると、リアラの衣服が乱れ、元々開放的な格好だったのが、さらに露わになった胸元。
ふと、彼女の胸に顔を埋めてしまった事件を思い出す。
彼女から感じた温もりや感触を思い出してしまい、リアラから感じる香りが、その時の情景を鮮明に思い出させた。
(甘い香り……これは、やばいな……)
するとリアラが、恥じらうように視線を逸らすと、小さな声で話し出した。
「クロっち……女神とは、さすがにダメだよ……」
気のせいか、その声は少し震えていて、潤んだ瞳を隠すために横を向いているように見えた。
リアラの腕は自由なはずなのに、俺の腕に片手をそわせ、もう片手はベッドのシーツを軽く摘むようにしているだけだった。
そして俺の持ち上げた体が、彼女に吸い寄せられるように、だんだんと沈んでいく。
それに気づいたリアラが、逸らした視線を俺に戻すと、両手で俺の胸元を抑えるように動かすが、その手に力は込められていなかった。
「クロっち……ダメ……」
そう言うリアラの潤んだ瞳は、まぶたを閉じかけていて、俺もそれに倣うように、まぶたを閉じて、互いの唇を合わせようと――
「スットープ!! アンタら、なぁにやってんですかぁー!?」
「セ、セレーネ!? いや、これはだな……」
「セレっち!? いや、そのぉ〜、なんかいい感じになっちゃってぇ……」
「なぁにが、いい感じですか! 着替え中だと思って離れてたら、まさかこんなことになってるとは……クロードさんはさっさと着替えてください! いつまでフル○ンでいる気ですか!?」
「フル……あっ! す、すまない!」
セレーネの指摘で、ようやく自分の格好に気づいた俺は慌てて水着を履き出した。
「はい! 着替えたならさっさと行く! いつまでヒロインたちを待たせるんですか!」
「わ、わかった! すまん、リアラ! 今度、改めて謝罪する!」
「えっ、あ、うん! いってら〜」
俺はリアラの返事を聞くと、急いで浜辺へと戻った……
――セレーネ――
クロードさんが浜辺へと向かうのを確認すると、私はリアラに視線を戻して、彼女を問い詰めた。
「リアラ、何をしようとしたか、わかってるのですか? 神と人が交わるなんて、いったいどんなことが起きるか……」
「だ、大丈夫だってえ〜、さすがにキスくらいなら仕方ないって思ったけどぉ〜、その後なんて考えてないってぇ〜」
私が最後まで話し切る前に、リアラが割って入るが、私は気にせずに話を続けた。
「人と交われば『お母さま』がどんなことを言い出すか……最悪、アナタの『神格落ち』だってありえますよ!」
「わ、わかってるってぇ〜、ちょっと悪ふざけが過ぎただけだからぁ〜」
本当にわかっているのか? まだリアラには言ってやりたいことがあるが、私もクロードさんからあまり離れるわけにもいかない。
「はぁ、わかってるならいいですけど、アナタはノリで行動することがありますから気をつけてくださいね!」
「はぁ〜い! でもノリでってことなら、セレっちだってそうだしぃ〜」
「何か言いましたかぁ!?」
「いいえ〜、言ってないでぇ〜す! ごめんってぇ!」
「……まったく、アナタも身なりを整えたら早く来なさい!」
ふざけた様子で謝罪するリアラに、私は不安が拭えなかったが、クロードさんを追うために部屋を後にした……
――リアラ――
セレっちが部屋を出て行くのを見送った私は、肩の力が抜けたような感覚に襲われた。
さっきここで何が起こったのか? 私はその光景を思い出していた。
不用意に男の部屋に入ったら、クロっちが着替えてて、でも悲鳴を上げるようなキャラじゃないから、気にしてない風を装ってクロっちに話しかけて。
ちょっと調子に乗っちゃって、服を脱ぐような仕草を見せたら、クロっちが慌てちゃって、私の方に倒れ込んじゃって。
そんで都合よくベッドに押し倒されちゃって、そこから……
「キス……しちゃうとこだったなぁ……」
その瞬間、私の顔が真っ赤になり、体中からむずむずする感じがしてバタついてしまう。
正直、セレっちはクロっちをどう思っているのか考えたことがあるけど、さっきの反応を見る限りそれはなさそうだ。
だってセレっちのなかで、クロっちたちは"人"って区切りだったし、私の神格が落ちかねないことしか心配していなかった。
「じゃあ、ウチだけかぁ……うん?」
今、私なんて言った? ウチだけ? 何が? クロっちたちを変な区切りで見てないってこと? それとも……
私は、頭のなかの喧騒を落ち着かせるために、乱れた服を整えてから深くため息をつくと、天井を眺めながら独り言をつぶやいた。
「神格落ちって、どんなんだろ……」
なぜそう思って口に出してしまったのか、私は深く考えないようにして、部屋を出ることにした。
その答えは、もう出ているのだから……
――やり直し勇者と水辺の少女たち 後編 完――
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