表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と水辺の少女たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/115

番外編 少女たちの支度と男たちの沈黙

いつも読みにきてくれて、ありがとうございます。


番外編

【少女たちの支度と男たちの沈黙】


お楽しみください。



 ――セレンディア城 西の塔――



「みなさん! 王族の別荘へ行きましょう!」


「「「別荘?」」」


 俺たちがリビングでくつろいでいると、イリーナが急に提案を持ちかけてきた。


「はい! 旅に出るにはまだ時間がありますし、何より魔王とその奥方さまを城に匿うにも限度があります」


 そう言うとイリーナは、両手を合わせて笑顔で話を続けた。


「なので! いっそのこと、全員で湖畔にある別荘で羽を伸ばすのは、いかがでしょうか?」


 イリーナがみんなに問いかけると、いつものようにクレスが最初に反応を示した。


「別荘!? 行ってみたーい! ねぇ、みんなもいいよね!?」


「そうね、また城に籠るのかと思って、ちょっと飽き飽きしてたからちょうどいいんじゃない?」


 クレスの問いに、ルーシェも同意して答えると、俺はミリスにも意見を求めた。


「と言ってるけど、ミリスはどうだ?」


「私は、イリーナさまが行かれるところに、ご一緒するだけです……けど、楽しそうです……」


 そう言ってミリスは、どこか恥ずかしそうにしているが、最近、自分の意見を言うようになった気がして、俺は嬉しくなった。


「そうか……じゃあ後は、ララティアたちがなんて言うかだな!」


「ご安心ください、クロードさま! そこはすでに承諾を得ていますので!」


「えっ? そうなの?」


「はい! ルクレツィア王妃からは、『ぜひ、ご一緒させてください』とお言葉をいただいております!」


 さすがイリーナというか、地頭のよさはルーシェが一番なのだろうが、こと対人関係や政治的な部分は、王族として育ったイリーナが勝るのだろう。


「まぁ、そういうことなら俺もかまわないぞ!」


「ありがとうございます! では早速、クレスさん! ルーシェさん! ララちゃんの元に準備に行きましょう!」


「うん? 準備って俺はいいのか?」


 イリーナの話に疑問を感じて質問するが、彼女は何か含みのありそうな笑みを浮かべながら答えた。


「はい、クロードさまの分は、こちらで用意させていただきますが、他のみなさんの分はそうはいきません!」


「私たちの?」


 クレスも、不思議に思って問い返すが、横にいたルーシェは何かを察したみたいだった。


「なるほどね! だって『湖畔にある別荘』だもんね!」


「えぇ、『キレイな湖と砂浜』もありますよ!」


「……つまり、お兄ちゃんはお留守番……」


「はぁ……?」


「うん? クロード、どういうこと?」


 残念ながら、俺とクレスに頭のよさは期待できそうになかった……




 とりあえず俺たちは、ララティアを迎えに行くために、東の塔へと向かった。


「あっ! クロードさま……」


「やっほ〜! クロっち〜、久しぶりじゃ〜ん!」


 東の塔へと来た俺たちを、ララティアとリアラが迎え入れてくれた。


「聞いたよ〜、クロっち〜、別荘行くんでしょ? ララちーのこと変な目で見ちゃダメだぞ〜!」


「あん? 何言ってるんだ? ただ別荘でゆっくりするだけだろ?」


「えっ? ……あ〜、これマジで言ってる?」


 俺の言葉に、リアラが何か思うところがあるらしく、俺の後ろにいたヒロインたちに問いかけていた。


「はい! クロードさまはいつもこんな感じです!」


「呆れていいわよ! 私たちも最初そうだったから!」


「……お兄ちゃんは、いつもこう……」


「えっと……やっぱり、私だけわかってない感じかな……?」


 やっぱり俺とクレスだけ、状況を理解できていないらしい……


 すると、部屋の奥からルクレツィアが歩いてきた。


「これは勇者さま、よくぞいらっしゃいました……どうぞお上がりください」


「あ、ああ、すまない……」


 その時、ルクレツィアの装いがいつもと違うことに気がついた。


「……もしかして、アンタも一緒に出かけるのか?」


「はい、勇者さまはお気づきではないようですが、大事なことですので……」


 そう言って魔王妃は、ララティアとともにヒロインたちの元へと歩み寄った。


「みなさま、本日はどうぞよろしくお願いいたします……」


「……えっと、俺はじゃあこれで……」


 何か居心地の悪さを感じて、西の塔へ戻ろうとするが、ルクレツィアにまさかのお願いをされてしまう。


「あら! 勇者さまは主人のお相手をお願いいたします」


「……なっ!? 主人って、魔王をか!?」


「はい! 1人では寂しいと思いますので、ぜひこの機会に仲良くなってあげてくださいませ!」


「セレっち〜、どっちについてく〜?」


「もちろん! 女の子たちに決まってます!」


「では勇者さま、よろしくお願いいたします……」


 そう言って女性陣は、東の塔をあとにして出かけてしまった……




 俺は仕方なく、東の塔内のリビングへの扉を、恐る恐る開くと、そこに魔王の姿があった。


 魔王はリビングのソファにちょこんと座っていて、放っているオーラと見た目のギャップに、恐ろしさを感じればいいのか、親しみやすさを感じればいいのかわからなかった。


「勇者……座れ……」


 相変わらず、言葉足らずな話し方だったが、今のはさすがに理解することができた。


「あ、ああ、じゃあ失礼します……」


 俺は魔王と向かい合うようにソファへ腰掛けた。


「……………………」


「……………………」


(き、気まずい! めちゃくちゃ気まずい……)


 屋敷でも話したとはいえ、つい数ヶ月前に死闘を繰り広げた相手と部屋で二人っきり、緊張するなというほうが無理だ。


 そんなことを思っていると、魔王がまた何かを話し出した。


「勇者……感謝……する……」


「感謝?」


「うむ………………」


「……えっと、冥界に行くことを了承したことか?」


「……うむ…………ララティア…………感謝……」


「……まぁ、気にしないでくれ……俺も甘いからさ」


 そんな言葉足らずなやり取りを、俺と魔王は女性陣の帰りを待ちながら延々と続けたのだった……




「ただいまー、クロードー!」


「クロードさま、お待たせしました!」


「クロード、帰ったわよ!」


「お兄ちゃん、今戻りました……」


「えっと、ただいま……」

 

 もう何時間経ったのか……短い会話と沈黙の繰り返しに精神をすり減らしていた俺の元にヒロインたちが帰ってきてくれた。


「……ああ……おかえり……」


「ど、どうしたのクロード!? なんか全体的に薄くなってるよ!?」


「だ、大丈夫だ……それにしても、みんな何を持ってるんだ?」


 そう言って俺は、みんなが一つずつ抱えている紙袋を見て質問すると、クレスが慌てて紙袋を背中に隠した。


「あーこれは……ナイショ!」


「うん? なんだそりゃ?」


 俺がクレスの様子を不思議に思っていると、ルーシェがその場を仕切り出した。


「はい! 話はお終い! 明日は早いんだから、各々準備を済ませて、明日の朝ここに集合ね!」


 そう話題が変わってしまい、俺は質問する機会を失ってしまった。


 そんななか、魔王がまた重い口を開いた。


「勇者よ……また……」


 すると、すぐさまルクレツィアが翻訳を始めた。


「勇者クロードよ! とても有意義な時間であったぞ! 我が妻以外の者とあんなに語り合ったのは生まれて初めてだ! 機会があれば、また語り明かそうぞ! なに、我が愛娘ララティアの伴侶となるのだから、我のことは父のように気兼ねなく接するがよい! ……と主人が申しております」


「あ、ああ……その時は、みんなで話そうな……みんなで……」


 やはり魔王との会話は、ルクレツィアが一緒でないと成り立たない。


 魔王の真の恐ろしさを痛感した俺は、ヒロインたちと西の塔へと、帰るのだった……



 ――番外編 少女たちの支度と男たちの沈黙 完 ――




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ