ミリス編 君とあの日の約束をもう一度
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ミリス編
【君とあの日の約束をもう一度】
お楽しみください。
――セレンディア城下町 商家街――
ミリスを連れて商家街の服飾屋に移動した俺は、ミリスにセレーネが見えていないことなんてお構いなしに、セレーネと2人でミリスの服を買い漁っていた。
「あの、お兄ちゃん……こんなに買っていただかなくても……」
「いいや、ダメだ! 俺がミリスの服を買ってやるからな!」
「いやぁ! 女の子の着せ替えってたまんないですねぇ〜! で、次何にします? 今のお淑やか系もいいですけど、ちょっとセクシーにいきますか?」
(ミリスにそんな格好はさせん!)
「あらやだ、独占欲?」
『強くてニューゲーム』以降、ミリスのお兄ちゃん呼びが定着して気にしていなかったが、彼女も立派なヒロインだ。
今回の冥界攻略が終われば、他のヒロインたちとともに、俺の花嫁として迎え入れることになる。
そんな彼女は『気配遮断』のスキルで存在感が薄くて、『認識改変』のスキルで記憶から消えるとはいえ、周囲から服のなかが覗き放題なんてあってたまるか!
……という理由でしばらくの時間、ミリスを着せ替え人形のように、色々な服を着させては、ああでもないこうでもないと、セレーネと言い合っていた。
しかし! ここで俺は、ある問題が発生したことに気づいた。
(はっ! セレーネ、一大事だ!!)
「どうかしましたか、クロードさん!?」
俺はセレーネの方へゆっくり振り向き、それを言葉にしないようにしたが、うまい言い方が見つからなかった。
結局、諦めた俺は、そのままの言い回しで話し出した。
(ミリスに……どうやって肌着を選ばせればいい……)
「……ニチャァ、クロードさんの、ス・ケ・ベ!」
(茶化すな! これは最重要事項だぞ!)
「わかってますよぉ〜、でも、簡単だと思いますけど? ただ聞けばいいだけなんですから」
(そんなの無理に決まってるだろ!)
ニヤニヤと含み笑いを浮かべるセレーネのおちょくりに堪えながら、俺はどうやってミリスにこの話をするか考えていた。
「もうぉ! 仕方ないですねぇ! ちょっと失礼しますよ!」
そう言ってセレーネが俺の前を通り過ぎると、彼女の体が淡く光って、その姿がはっきりと見えるようになった。
急に現れたセレーネに、ミリスが驚きながら声をかけた。
「! セレーネさま、いらっしゃったのですか?」
「はいぃ〜、お二人の様子を楽しく拝見してましたよぉ〜! そんなことよりミリスさん! ちょっとお耳を貸してください!」
ミリスの問いにセレーネが答えると、彼女の耳元でセレーネが何かを話し始めた。
「じつ……ミリ……の……ぱい……みえ……ードさん……ドキして……」
そして、ミリスの顔がだんだんと赤らみ、胸元を両手で押さえるようにしながら、俺を見つめて小さな声で話し出した。
「……お兄ちゃん……えっち……」
「なっ!?……ちが……わないです……」
その後、俺はミリスに肌着を選んでもらい、無事に最重要項目を完了することができた……
【勇者クロードは『むっつりお兄ちゃん』の称号を手に入れました】
(まて!? なんで今、スキルの声がしたんだ!? てか『むっつりお兄ちゃん』てなんだ!?)
だが俺の問いに答えてくれるやつは、誰もいなかった……
「いっぱい、買いましたね……」
そう言って俺の持っている買い物袋を見ながら、ミリスが苦笑いしていた。
結局、服だけでなく靴やバッグなどの小物も合わせて一週間くらいは着回せる数を買っていた。
普通の女の子が持つ量に比べたら少ないかもしれないが、それならまた買いにいけばいい。
だが、荷物が多くなってしまったので、ミリスには申し訳ないが、雑貨屋でみんなへのお土産を買って、今日は帰ることにした。
「今日は、ありがとうございました……とても楽しかったです……」
雑貨屋へ向かう途中、ミリスが突然俺に感謝の言葉を伝えてきた。
「うん? どうしたんだ急に? 正直、ほとんど俺の用事に付き合わせたようなものだぞ?」
「いいえ、お兄ちゃんが私のために色々してくれたのが、とても嬉しかったんです……だから、ありがとうございます……」
「……そうか、どういたしまして、かな?」
「はい……」
そんなやりとりを交わして、俺たちはまた、目的の店に向かって歩き出した……
……その後、城に帰った俺たちは、みんなのお土産として、クレスには髪を結ぶ髪紐、イリーナには刺繍入りのハンカチ、ルーシェには猫の絵が描かれた栞、ララティアには子供が喜びそうなお菓子の詰め合わせを渡した。
そしてみんなとの会話も落ち着き、俺はこっそりと寝室に移動すると、ミリスを呼び出した。
「ミリス、いるか?」
「……はい、お呼びでしょうか?」
いつの間に着替えたのかわからないが、俺の呼びかけに反応して、メイド服姿に戻ったミリスが現れた。
「おぉ、呼び出しといてなんだが、本当にいるとは……」
「いえ、その……お兄ちゃんが、私の方を見てそわそわしている様子だったので……後をつけてみました」
「……そうか……それって、みんなも……?」
「……はい……」
恥ずかしいことに、俺の思惑はバレバレだった。
「その、気をつかわせてすまん……」
「いえ、それでいかがなされましたか? わざわざ寝室に呼び出すなんて……」
ミリスが話の途中でなにかに気づき、言葉が詰まった。
「申し訳ありません! まだ身を清め終えてなくて……すぐに済ませますので、少しお時間を……」
「まてまてまて! 違う、そうじゃない! そんな理由で呼び出さないから安心しろ!」
「えっ!? でも、セレーネさまが……」
「……セレーネが……?」
「その……『実は、ミリスさんのおっぱいが、チラ見えしてて、クロードさんったらドキドキしてるんですよぉ〜』って言われたので……お兄ちゃん、ムラムラしちゃってるのかと……」
「否定しきれない内容でつらい!!」
「でも大丈夫です! 私もイリーナさまの本で勉強しましたから、少しはお楽しみいただけるかと思います!」
「ぜんぜん大丈夫じゃない! 頼むミリス! イリーナは手遅れだが、お前はまだ無垢なままでいてくれ!」
「あのお兄ちゃん、イリーナさまは私の主人なので、その言い方はちょっと……」
「す、すまない……とりあえず! ミリスを呼び出したのは、これを渡したかったんだ」
そう言って俺は、ポケットのなかに忍ばせていた箱を、ミリスに差し出した。
「……私に、ですか?」
「ああ、開けてみてくれ……」
ミリスがうなずいて箱を受け取ると、箱を開けて中を確認した。
「これは、髪飾り……ですか?」
「そうだ、ミリスが試着で着替えてる時に見つけて買ったんだ……その、ミリスに似合うと思って……」
それは小さな石が1つはめ込まれただけの、とてもシンプルな形の髪飾りだったが、だからどんな服にも合わせられると思った。
そして俺は、あの日のことを思い出しながら、あの日の出来事を再現するように、髪飾りにはめ込まれた石を指差しながら話し出した。
「ふっふっふ、これは伝説の勇者だけが見つけられる、魔法の石だ!」
俺のその言葉に、ミリスの目が大きく開き、彼女もあの日の言葉を返してくれた。
「魔法の……石?」
ミリスの返しに、なにか込み上げるものを俺は感じたが、言葉を詰まらせないようにして話を続けた。
「そうだ! これを持っていると、何でも願いが叶うって伝説の石だぞ! 特別にお前にやるよ!」
そして俺は、今度こそ彼女が幸せに生きていけるように、あの日の言葉に続きを加えた。
「この石は勇者の加護が付いてるから、ずっとお前を守ってくれるぞ! なんなら幸せにもしてくれるから、ずっと大切にするんだぞ!」
……ちょっと余計なこと盛りすぎたかな? そんなことを思って、さっきとは別の恥ずかしさが込み上げてきた。
でも、俺のそんな様子なんて彼女は気にも留めずに、髪飾りが入った箱ごと両手で強く抱きしめ、うつむきながら喋り出した。
「……いいの?」
その声は、少し震えていた。
「……勇者に二言はない!」
でも俺はそれに、気づかないふりをしながら、ミリスの問いに答えた。
そして、彼女がゆっくりと顔を上げると、少しだけ瞳に涙を浮かべながら微笑んでくれた。
「……ありがとう、お兄ちゃん!」
――ミリス編 やり直し勇者と影を纏う少女との1日 完――
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
これにて、ミリスとのデート回は終了となります。
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▼次回予告
【番外編 やり直し勇者と水辺の少女たち】
次回もよろしくお願いします。




