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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と影を纏う少女との1日

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ミリス編 見栄を着飾る

読みに来てくれてありがとうございます。


ミリス編

【見栄を着飾る】


お楽しみください!



 ――セレンディア城 城門前――


 ミリスと出かけることになった今日、俺はミリスを待っていた。


 というのもヒロインたちから、『準備をするから待っていろ』と言われてしまったからだ。


「いやぁ、クロードさん! この感じ、なつかしいですねぇ、まさかミリスさんとのデート回も見れるとは思いませんでしたよぉ」


「えぇ〜! セレっち、デート回初めてじゃないのぉ!? いいなぁ!」


「お前らなぁ、一応今回はちゃんとおつかいの意味もあるんだぞ! てか、なんでお前らまで来てんだよ?」


「そんなの決まってるじゃないですか! ミリスさんとのイチャラブ展開が見れるかもしれないのに、お留守番してるわけないじゃないですかぁ! ちゃんとクロードさんにしか見えないようにしてますから、安心してイチャラブしてくださいね!」


「ウチはララちーを置いてくわけにいかないから見送りぃ〜! でもクロっちぃー、ミリっちって歳のわりには、ちゃんと出るとこ出てるけどぉ、まだ未成年なんだから変なことしちゃダメだよぉ〜」


「できるかぁ! って、出てるって何がだ!?」


 そんなやりとりをセレーネとリアラと続けていると、背後から急に気配を感じてとっさに振り返った。


「お、お待たせしました。クロ……お兄ちゃん……」


 そこには、いつも結んでいた髪は下ろされ、お淑やかさを感じる白いフリル付きのシャツに淡い青色のロングスカートを着たミリスがいた。


 だが少し気になったのが、服のサイズが合っていないようで、シャツは少し大きめで、スカートも腰のベルトをきつく締めて留めていた。


 俺の視線に気づいたのか、ミリスは頬を赤らめながら、か細い声で話し出した。


「その全部、イリーナさまのおさがり……で、初めて着たらサイズが合わなかった……です」


「あぁ、なるほど……」


「でも! イリーナさまからは、ちゃんとお給金はいただいてたので……その私が……興味がなかったから……」


 確かに、ミリスは自己肯定感というか幸福願望みたいなものが希薄だった。

 

 それを考えると、彼女がおさがりの服しか持ってなくても不思議ではなかった。


 そして主人であるイリーナも、当時はそこまで多くの服を持っていなかったのだろう……そのせいで、サイズの合わない服を着ることになったのかもしれない。


「クロードさん……」


(なんだセレーネ? 仕方ないだろ、急なことだったんだから……)


「何を言ってるんですか!? めっちゃ愛らしい見た目じゃないですか! なんですかこの、彼シャツとも違う破壊力は!? 大人びた服装のはずなのに、幼さの残る感じ……最高です!」


 ……どうやら、女神の性癖には刺さったらしい……


「ミリス、とても似合ってるよ!」


「っ! あ、ありがとう……ございます……」


「じゃあ、行こうか!」


「……はい……」


 立ち話もいいが、せっかくミリスと出かけるんだ。

 

 早くおつかいを済ませて、色々なところに連れて行ってやりたい。

 

 そう思った俺は、ミリスとともに戦勝記念館へと早々に向かうことにした。


 すると、リアラが俺たちに手を振りながら、大きな声で見送ってくれた。


「行ってらっしゃ〜い! クロっちぃ! 今度、ウチともデートしてねぇ!」


 リアラの言葉に、俺はつまずきそうになるのを堪えて、城を後にした……


 


 ――戦勝記念館――



 戦勝記念館はその名の通り、魔王討伐を果たした勇者パーティを讃えるために作られた建物だ。


 俺たちゆかりの武具や道具、戦争の内容を描いた伝記などが展示されていた。


 祭り事などの日に一般開放されるが、普段はまるで宝物庫のように扉を閉ざし、近衛騎士たちが厳重に警備を行っていた。


 そんな建物の一番奥、目玉として展示されているのが俺の剣、魔王を斬った勇者の剣だ。

 

 周囲は伝説の剣だとか、幻の鉱石が使われているとか思っているらしいが、残念ながら普通の剣だ。


 唯一それっぽいことといえば、名のある名工に作ってもらったくらいか……だが、とても手に馴染むいい剣だった。


 そして今、その剣をもう一度手に取るため、最奥の部屋に来たのだが……


「俺の剣……どこ……?」


「ない……ですね……」


 確かにその部屋の中央には、ガラスに囲まれた抜き身の剣と鞘の一組が飾られているが、鞘には豪華な飾り付けがされ、剣の鍔には大きな宝石がはめ込まれていた。


 そして、なぜか剣を立てる土台の前には『勇者クロードが愛用した聖剣』と書かれたプレートが置かれていた。


「うわぁクロードさん、趣味悪いっすねぇ……」


「……俺、こんな剣使ってなかったけど……」


 記憶にない剣を見て俺が困惑していると、背後から聞き覚えのある男の声がした。


「クロードさま! まだいらしてよかった!」


「その声……ハンスか!? どうしてここに?」


「はい! 実はここの管理も担当しておりまして、クロードさまがこの館に来られると聞いて、急いで来たのです! それで、その剣のことなのですが……」


「そうだ、ハンス! 聞いてくれ! 俺の剣がなくて、代わりに変な剣が飾られてるんだ! なにか知らないか!?」


 ハンスに愛剣の行方を聞くと、彼は俺を宥めるように説明し始めた。


「落ち着いてください、クロードさま! 確かにそれは偽物ですが、それが展示用の剣で間違いありません!」


「はぁ!? なに言ってるんだ!? 俺はあんな剣知らんぞ!」


 ハンスの言葉の意味が理解できずにいると、ミリスがなにかに気づいたようで会話に割って入ってきた。


「クロードさま……たぶんですが、本物は別で保管されている、と言いたいのではないでしょうか?」


「……え?」


「そ、そうなのです! さすがミリス嬢です!」


 ミリスの発言に激しくうなずくハンスに、俺は怪訝な表情を浮かべながら詰め寄った。


「ハンス! どういうことか、説明してくれるよな?」


「……はい、あのですね、クロードさまから愛剣を受け取ったのはいいのですが、見た目がちょっと地味といいますか、大衆向けではないといいますか……」


 俺の問いに口ごもるハンスの話を聞いて、ミリスがまた割って入るようにして話し出した。


「つまり、剣のよさがわからない大衆には、本物の剣では見映えしないと思い、わざと豪華な装飾がされた偽物を展示している、ということでしょうか?」


「……はい、その通りです……」


「そんなこと、剣を作った親方さんが納得しないんじゃ……」


「いえ! そこは勇者の剣を作っていただいた礼金とともに説明したら、快く承諾して下さいました!」


「……あぁ、そう……」


 



 そんなやりとりの後、俺たちはハンスの案内で無事に愛剣を受け取ることができた。


「うん! やっぱりいい剣だ! 本当に、いい剣なんだけどなぁ……」


 その剣は刀身が浅黒く、なんの飾り気もない直剣だが、それが気に入っていた。


 が、大切に保管されていたとはいえ、表舞台に飾られることがなかったのは少し悲しかった……



 

 ハンスに別れを告げて戦勝記念館を後にした俺たちは、城下町の方へと向かうことにした。


 まだ物資の買い出しが残っているが、それはミリスと色々回りながらでも可能だろう。


「ミリス、どこか行きたいところがあったら、気兼ねなく言ってくれ!」


「い、いえ、私はそんな、行きたい場所なんて……」


「遠慮するな! 今日はミリスと出かけたくて誘ったんだ、好きな所に連れていってやる!」


 ミリスは遠慮した態度をとっていたが、俺が意見を求めると、その場でうつむきながら少し考えたあと、小さな声で恐る恐る言葉を紡ぎ出した。


「……では、一つだけ……お兄ちゃんと、ケーキを食べに行きたいです……」


 それは苦い紅茶よりも甘いミルクティーが好きな、ミリスらしい可愛らしいお願いだった……




 ――ミリス編 見栄を着飾る 完――



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次回 ミリス編

【彼女は微妙なお年頃】


お楽しみに!!

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