ミリス編 デートの誘い
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ミリス編
【デートの誘い】
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――セレンディア城 西の塔――
無事に陛下と魔王との密会は終わり、冥界に行く前の計画のすり合わせと、物資の準備のために、しばらくの間は城に滞在することになった。
「まさか、またここに来る日があるとは思わなかったな……」
「そうですねぇ〜、クロードさんと何度も夜を過ごしたここに戻って来るなんて、運命ですねぇ〜」
「誤解を生む言い方やめて! ってかそれどころじゃないんだ! どうすんだ"これ"!?」
そう言って俺は後ろにいるクレス、イリーナ、ルーシェ、ミリスの4人を指して、セレーネに助言を仰いでいた。
今、東の塔はベルガドーラとルクレツィア、そしてララティアとリアラの4人が使っている。
では、ヒロインたちはどこに泊まるのか? その答えが勇者と同室だった……
『婚約発表前のララティアはともかく、パーティメンバーの同室なら問題ないだろう』と陛下は考えての結果だった……
俺は久しぶりに、心のなかでセレーネに問いかけていた。
(どうするセレーネ!? これ絶対に夜が大変だぞ!)
「いやん! クロードさぁん、お盛んなんですからぁ〜」
(てめぇ! どう考えても俺が襲われないかって話だろ!)
「あぁ〜、そこは大丈夫だと思いますぅ〜……きっかけになるようなことはしても、襲ったりはしてこないと思います!」
(うん? なんでそう言い切れるんだ?)
俺はセレーネの意外な言葉に疑問を投げかけると、彼女は呆れたようにため息をつきながら説明し出した。
「はぁ、あのですねぇクロードさん! 彼女たちは乙女ですよ! しかも激重感情な! そんな子たちが、野獣みたいにクロードさんを襲うと思いますかぁ? どうせロマンチックな初めてを~、とか思ってるし、もしそうじゃないならクロードさんに強く求められて~、みたいな妄想してるっすよ! 多分! きっと! 私の予想は3割当たる!」
「だいたい外れてるじゃねぇか!!」
「アンタ、1人でなに叫んでるのよ?」
セレーネの根拠のない話に、つい言葉を出して反応してしまい、ルーシェが俺に声をかけてきた。
「あ、いや、大丈夫だ! 予想外の展開が多かったからついな!」
「ふーん、まぁ別に私はこんな状況どうってことないけど?」
ルーシェはいつものすましたような顔をして、そっぽを向いているが、こちらをチラチラと見ていた。
そしてクレスも、ソファのすみっこに座って、なんだかそわそわとしていた。
「お前ら、さっきっから様子が変だけど、どうかしたのか?」
「い、いや! 別になんでもないよ!」
「そ、そうよ! なんでもないわよ!」
「そうか? ならいいんだが……」
俺は2人の様子を疑問に思ったが、それを誤魔化すように、なんでもないと2人は口をそろえて否定した。
するとセレーネが俺だけに聞こえるように語りかけてきた。
「クロードさぁん、これは『強くてニューゲーム』の影響ですよ! 2人はここで攻略されてますからねぇ〜、初めて来た場所なのに大事な場所に感じるってところじゃないですかねぇ〜」
それを聞いた俺は、2人を攻略した時のことを思い出していた。
確かに2人とは、この部屋で大切なことを色々と話した。
そう思うとクレスの行き過ぎた生活管理も、ルーシェのビッシリと書き込まれた契約書も、やり直してたとはいえ、まだ数日前のことだ。
あの時は大変だったけど、今思い出すと、それもまたいい思い出だったと、自ずと口元がニヤついてしまった。
「クロード……なんだか気持ち悪い顔してるよ」
「えぇ、なぜかムカつく顔してるわ」
2人には悪いが仕方ないと思う。
だってみんなとは、城の庭で話し込んだり、城下町でデートを……
「うん? そういえば……」
そこで俺はあることに気付き考え込んでいると、それを見たイリーナに声をかけられた。
「クロードさま、なにか気になっているようですが、どうかされましたか?」
「いや、そういえばみんなと出かけたことはあっても、ミリスとはなかったなー、て……あっ!」
その時、みんなには城下町で過ごした記憶がないことを俺は思い出した。
だから口にした疑問が失言だったことに気付いて、俺は慌ててイリーナに言い訳をした。
「いや! 違うんだ! みんなとも出かけてないんだけど……」
「確かに、そうですわね!」
「……えっ?」
「わたくしたちは旅の途中などで、2人で買い出しなどに行ったことがあっても、ミリスはいつも別行動されてましたものね!」
「あー、そう! そうなんだよ! いやー、言葉足らずだったのに、よくわかったなー」
イリーナの勘違いに乗っかる形で誤魔化したが、俺のスキルのことは、知られてはいけない制約があるから気を付けなければいけない。
そう思っていると、イリーナがなにかを思い付き、誰もいない方に振り返り話し出した。
「そうですわ! ミリス!」
するとイリーナの目の前に、ミリスが姿を現した……というよりも、その場にいたのだろう。
目の前にいても気付けない【気配遮断】のスキルは相変わらずだった。
「はい、イリーナさま、お呼びでしょうか?」
「明日、クロードさまと一緒に貴族街にある戦勝記念館へ行って、クロードさまが寄贈した剣を受領してください!」
「あの、私がおに……クロードさまとですか?」
「えぇ、"2人だけ"で、お願いしますね!」
ミリスの戸惑いを気にもせず、話を伝え切ると俺の方に向き直し、含みのある笑顔を見せながらイリーナが喋り出した。
「クロードさまの明日のご予定は以上になりますが、もし予定が早くお済みになられたら、あとはご自由になさってください」
「ご自由にって……」
雑な予定の振られ方に、俺は呆れ気味に答えようとしていたが、イリーナに言葉を遮られてしまった。
「クロードさま……しっかりと、エスコートをお願いしますね!」
そうやって押し切られてしまってから断るのは、ミリスにも失礼だろう。
俺は深いため息をついてからイリーナに応えた。
「はぁ、わかったよ! そんなことしなくてもちゃんと誘うさ」
「ふふっ、申し訳ありません……妹のために、つい意地悪をしてしまいました……」
「"妹"か……ミリス!」
「は、はい……」
俺はミリスを呼ぶと、彼女のことをしっかりと見つめた。
イリーナの命令もあるから断られることはないし、言わないといけない理由もない。
だが、ミリスを4人目のヒロインとして迎え入れると決めていたのだから、こういうことは俺の口からもしっかり言うべきだと思った。
「明日、俺と一緒に出かけないか?」
「えっと、その……はい、お願いいたします……」
ミリスは戸惑いながらも、俺の誘いを受けてくれたのだった……
――ミリス編 デートの誘い 完――
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次回
【見栄を着飾る】
お楽しみに!!




