ララティア編 魔王の悪癖
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ララティア編
【魔王の悪癖】
お楽しみください。
それから俺たちは、ルクレツィアの立てた和平計画のために、猛毒フルコースを食べて瀕死状態だったセレーネから、死霊耐性を授かり(どうやったかは、想像におまかせします)その日は眠りにつくことにした……
――クロード邸 リビング――
朝早くに目覚めた俺たちは、朝食を済ませると、陛下と魔王たちの密会の機会を作るために、ララティアの持つスキル『ファストトラベル』で、イリーナとミリスが、セレンディア城に向かうことにした。
「ではクロードさま、行ってまいります」
「ああ、頼んだぞイリーナ……ミリスも気を付けるんだぞ!」
「はい、行ってきます……」
「ララティアも、朝からすまないが、2人をよろしく頼む!」
「あ、うん……だいじょうぶ……」
3人は、俺への挨拶を済ませると、ララティアが作った空間の穴に入り、姿が見えなくなった。
少し心配な気持ちもあったが、俺はそれを振り切るようにして後ろを向くと、クレスとルーシェに声をかけた。
「いこう……俺たちもモタモタしてられないぞ!」
「はーい! っで、何するの?」
「まぁ、旅の準備じゃない? 冥界が広いっていうなら、それなりに準備はしておかないと……」
「そういうことだ! イリーナたちが戻ってきたら、次はみんなで王都に行って、最終的な準備を整えるが、その前にもできることはやっておこう!」
そう言って俺たちは、旅の準備を始めようとするが、そこにルクレツィアが俺に声をかけてきた。
「クロードさま、その前に一つよろしいでしょうか?」
「え? ああ、まだ何か話忘れたことでもあったのか?」
「いいえ、話は私ではなく、主人があるのです……」
「主人って……魔王が、俺に……?」
俺はルクレツィアの言葉に、緊張しながら聞き返すと、彼女はリビングの扉を開けて、俺についてくるように促した。
「ここではなんですので、申し訳ありませんが、客室までお願いいたします……」
そしてルクレツィアは、俺の返事を待たずに部屋から出て行ってしまった。
俺は仕方なく、彼女の後を追うようにリビングから出て、客室へと向かった。
そして客室の前に着くと、ルクレツィアが『コンッコンッ』と扉をノックしてから開け、先に入るように誘導した。
「し、失礼しまーす……」
緊張した俺は、かしこまりながら部屋に入ると、魔王が部屋の中央にある椅子に腰掛けていた。
「……勇者……待っていた……」
「勇者クロードよ、急な呼び出しで申し訳ない……待っていたぞ! さぁ、そこに座ってくれ! ……っと、主人が言っております」
「あ、ああ、失礼します……」
2人に促されて、俺は魔王の向かいの椅子に腰掛けた。
するとルクレツィアは、俺と魔王の前に空のワイングラスを2つ置くと、俺に問いかけてきた。
「クロードさま、お酒は苦手でしょうか?」
「いや……味はよくわからないが、飲めないことはない」
「そうですか、それならよかったです……」
そう言いながらルクレツィアは、それぞれのワイングラスにお酒を注ぐと、テーブルの近くに置いてあった袋に手を伸ばした。
「クロードさま、お手を……」
促されるがままに、俺は手を前に差し出すと、魔王も手を前に出してきた。
するとルクレツィアが、袋の中身を転がすように、俺の手のひらに石ころを落とすと、魔王の手のひらにも同じようにして石を落とした。
「これは、魔力を留める効果のある魔石です……武器への付与や、魔道具の作成などに使われます」
それを聞いて手のひらの石を見ると、確かにその石は俺の持つ魔力を少しだけだがその場に留めていた。
しかし、それで何がしたいのかわからず、俺は2人を交互に見て首を傾げてしまった。
「勇者よ……見ていろ……」
俺の困惑に答えるように、魔王は自分が持っていた石を俺の前にあったワイングラスのなかに入れてしまった。
すると魔王は、自分のワイングラスを俺の前に差し出し、俺の持っていた石を指差して話し出した。
「勇者よ……こちらに……」
「え? ああ、俺のを入れろってことか……?」
俺は魔王の意図を汲み取って、持っていた石を魔王のワイングラスのなかに入れた。
その行動に魔王は軽くうなずくと、手元にワイングラスを戻した。
するとルクレツィアが、合図をするかのように言葉を発した。
「それでは、どうぞひと口……」
その言葉に、俺が戸惑っていると、目の前の魔王が手に持っていたワインを豪快に飲み干した。
すると、『カランッ』と石だけがグラスのなかで転がっていた。
俺は、ワインを飲まないといけないことを理解したが、2人が何をしたいのかわからず疑問を抱いていると、目の前の魔王が喋り出した。
「勇者よ……飲めぬか……そうか……そう、か……」
その声はとても悲しそうに聞こえ、そのいたたまれなさに、俺は観念してワインを一気に飲み干すと、俺のグラスのなかでも『カランッ』と石だけが転がった。
「で、これはどういうことなんだ? 俺は一体何をやらされてるんだ?」
俺は不機嫌気味に、2人に問いかけると、ルクレツィアが微笑みながら答えた。
「ご安心ください、クロードさま! 今のは、魔族の間で行われる、義兄弟・師弟・家族の契りを交わすための儀式にございます!」
「……儀式?」
「はい! 互いの魔力が込められた酒を飲み交わすことで、特別な関係性を築いたことの証とする儀式です!」
つまり、ルクレツィアが言うには、俺と魔王はよくわからんうちに"義兄弟"になったらしい……
すると、魔王が重い口を開いた。
「ぶわっはっはー! 勇者よ! コレで貴公と我は真の兄弟となったのだー! まっことに、今日は素晴らしい日だな、ルクレツィアよ! さぁ! 今日は飲み明かそうぞォォォ!」
「お、おい!? 急にどうしたんだ!?」
魔王の急な変貌に、俺が戸惑いの表情を浮かべながらルクレツィアに視線を移すと、彼女は微笑みを崩さぬまま、俺に説明し出した。
「申し訳ありません、クロードさま……主人はお酒が入ると、豪快さがさらに増して、饒舌になられるのです」
「饒舌って、元から変わり過ぎだろ!?」
「どうした、兄弟よ!? 酒が足りんかったか!? ルクレツィアよ! 兄弟に酒を追加してやれ! 我の兄弟なら、もっと強い酒もいけようぞ!」
「あのぉ、俺旅の準備が……」
「クロードさま、私の予想では、1週間程度なら遅れが出ても問題ありません」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「兄弟よ! もしや、気に触ることでもあったかの? そうか……すまぬ、兄弟よ……我はよかれと思ったのだが……だが……本当にすまなかったぁぁぁ!!!」
「こ、今度はなんだ!?」
「主人はお酒が入ると、感情が豊かになられるのです!」
「んな、迷惑な酔い方あるかよ!?」
俺はつい魔王への苦言を漏らしてしまうが、ルクレツィアはまったく気にする様子もなく、魔王の隣に座って話し出した。
「クロードさま、あきらめてお付き合いください……大丈夫、主人は豪快に飲まれますので、すぐに酔い潰れますよ」
ルクレツィアのその言葉に、俺は魔王へ視線を向けた。
魔王は上機嫌にワインを飲み干し、ルクレツィアがすかさずワインを注ぐと、またそれを一気に飲み干していた。
「……はぁ、わかったよ……」
ルクレツィアの言う通り、俺はあきらめて、魔王の気が済む(眠りにつく)まで、飲み交わすことになった……
――ララティア編 魔王の悪癖 完 ――
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