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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鮮紅に沈む少女

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ララティア編 結ぶは難し、解くは容易い

いつも読みに来てくれてありがとうございます。


ララティア編

【結ぶは難し、解くは容易い】


お楽しみください!



 憎悪と怨嗟はララティアに向けられる。

 

 その言葉に俺たちは、時が止まるような感覚に襲われた。


「ララティアは無関係じゃないのか?」


 俺はわずかな可能性を信じてルクレツィアに問いかけるが、返ってきた答えは予想通りのものだった。


「魔王ベルガドーラが倒されたとされている今、生き残りの魔族に怨みの矛先が向くのは道理でしょう……それが魔王の娘なら尚更です」


「なら! 魔王ベルガドーラは生きていたって言えば……」


「それは火に油を注ぐ行為です……主人は死んだものだと思わせた方が得策でしょう……実際に魔王を目にしていたのは、勇者パーティのみなさまだけですから、隠すのは難しくありません」


「……ララティアに逃げ道はないのか? 例えば、魔界からこちらに干渉しないとか?」


「クロードさま、私たちはどうやって人間界に来たと思いますか?」


「どうって、リアラに連れてきて……もしかして、人間界に来る方法が……魔王城にあるのか?」


 そうだ、リアラの能力なら、別世界との行き来は容易だろう。

 

 だけど、女神の能力を神以外の存在に使うのは、彼女たちの上位存在が許してはいない。

 

 だが先の大戦は、魔王が人間界に来たことから始まった。

 

 なら魔王がいた"そこ"には、何かがあるのは間違いなかった。


「はい、都合がいいからと別荘を建ててしまいましたが、あそこの地下には魔界と人間界を繋ぐ『門』が存在します」


「別荘って……」


「ええ、本当に困ったものです……こうなるとわかっていたら、もう少し考えて建築したのですが……」


 そう言ってルクレツィアは頬杖をつきながら、ため息混じりの愚痴を漏らした。

 

 ただその言葉に、少し気になることがあった。


「わかっていたらって、ルクレツィアの『全知』ってスキルでわからなかったのか?」


「クロードさま、私の持つスキル『全知』は、知ろうと思えば全ての知識を得られる能力であって、未来を『予知』できるスキルとは異なります……つまり、未来を予測できても、そうなる可能性が高いのか、それとも低いのかがわかる程度です」


「……俺たちが、魔王を倒すこともか?」


「……その通りです……"たかが引き籠りの女神"のために『勇者と聖女』が選出され、異常な努力で『猛毒無効』を得る冒険者に、世界を壊しかねない『禁術』をいくつも作る魔女が同じ時代に揃うなんて、誰が予測できましょう……」


 ルクレツィアの言葉からは、何か怒りが感じられた。

 

 が、フルコースに苦しんでいるセレーネに、視線を移していたから、多分気のせいではないだろう……


「つまり、ララティアが魔界に帰っても、いつか俺たちの方から、魔界に乗り込んでしまうってことだな?」


 ルクレツィアの言いたいことを理解し、彼女に答えを返したつもりだったが、また予想外な返答が返ってきた。


「はい、可能性の話ですが、『新たな勇者』が現れ、我が娘ララティアを殺すでしょう」


「……『新しい勇者』?」


「はい、クロードさまではない、『別の勇者』が現れるのです」


 その話を聞いて、俺もクレスもミリスも理解が追いついていなかったが、イリーナとルーシェだけは反応が違った。


「ルクレツィアさま! それは……」


「アンタ……本気で言ってるの!?」


「お、おい! 2人とも、どうしたんだ!?」


 イリーナとルーシェの反応に、俺は驚いたが、ルクレツィアはそれを予想してたようだった。


「さすが、『聖女』さまと『魔女』さまですね……アナタ方にも重要なことであると、すぐに理解してくださいましたね」


 3人だけが理解した状況に、たまらずルーシェが刺々しい口調で語り出した。


「ああ、もう! 勇者ってのはね、『世界に1人だけ』なの! そこに新しい勇者が誕生するってことは……」


 そこで、ルーシェが言葉に詰まるが、それを引き取るように、イリーナが続きを話し出した。


「『今いる勇者さまが亡くなられたとき』です……」


「えっ? いや、俺生きてるから大丈夫じゃ……」


 するとルクレツィアが、笑顔で恐ろしいことを語り出した。

 

「はい! なのでクロードさまは、過激派の差し金で暗殺されるでしょう! そして、過激派の息のかかった人間を『勇者の後任』として祭りあげるのです!」


「……マジで?」


「ですので、物事は急を要します……過激派が動き出す前に、先手を取らなければなりません」


「いや、ルクレツィア俺は……」


 俺はやり直しのスキルのことを説明しようとするが、ルクレツィアがさえぎるように人差し指を、俺の口に向けながら言葉を紡いだ。


「その話はするべきではありません……使えなくなったら一大事です……それに、永遠に命を狙われたいのですか?」


 ルクレツィアの言うことはもっともだった。

 

 仮にやり直しで対応しても、問題の解決になっていないし、ここでそれを説明したら、スキル自体が使えなくなるかもしれない。

 

 しかし、それすら知ってるとは、やはり侮れない人だった。


「そうだな、ありがとう……助かったよ」


「とんでもございません……では、話を本題に戻しましょう……冥界の話ですが、コチラはとてつもなく広いのです」


「広いって、どのくらいだ?」


「世界2つ分以上です」


「……は?」


「無理もありませんが、考えてみてください……死者とは、人間界と魔界で亡くなった、すべての生きていた者のことです……そんな数を収納するなら、世界の数だけ必要でしょう?」


「そうか、だから居場所がわからないと……」

 

 確かに、天界を除く2つの世界に対して冥界が1つなら、それを補えるほどの規模が必要になる。

 

 だからセレーネも、女神エイルが冥界にいるのはわかっていても、冥界のどこにいるのか? 広すぎて見当もつかない状態だと悟った。


「それと、クロードさま」


「うん? なんだ?」


「そろそろ会話のテンポが悪くなってきているので、まとめてお話させてください」


「……すみませんでした……お願いします」


「では……

 1.冥界へは、魔界・人間界のどちらにも門が存在しますが、場所のわかっている魔界から行きましょう。

 2. セレンディア王陛下と密会する機会を作ってください。

 3. 生身で冥界にいる死霊たちと相対するのは危険ですので、死霊耐性を獲得してください。

 4.エイルさまに会い、大戦時の死者を転生させることに確約を得てください。

 5.帰還したら、ララティアとの婚姻を発表してください。」


 そう言ってルクレツィアは、今後すべきことを簡潔に話し出した。

 

 そして彼女はソファから立ち上がり、俺の近くまで来ると、深々と頭を下げてきた。


「ル、ルクレツィア!? 何をしてるんだ!?」


「クロードさまにも利があることはお伝えしましたが、それでも、ララティアを救うにはないに等しいものです……ですからもし、この内容で受けていただけるのでしたら……」


 ルクレツィアは、下げた頭の奥から、その深紅の眼で俺を見つめると、まるで一切の迷いがない声色で話を続けた。


「魔王妃ルクレツィアの首を差しあげましょう」


「なっ!? 何言ってるんだ!? 自分の首を俺に差し出すなんて、なんでそうなる!?」


「クロードさまが冥界に行かずとも、魔族の殲滅か、過激派の鎮圧を行えば済む話だからです……しかし、そのどちらにも、ララティアの幸せはありません!」


 ルクレツィアの言うことは正しい。


 魔族の殲滅をすれば、過激派が俺を殺す理由が無くなるし、なんなら協力的にもなるだろう。

 

 逆に過激派を鎮圧しても、魔族への憎悪はなくならないから、ララティアの平穏を延長させただけに過ぎなくなる。


 ララティアの平穏を守るには、人間と魔族の和平は必須で、そのためには勇者である俺の協力が必要だ。

 

 だが、俺が率先して協力する理由がない。


「魔王が討たれたとされた今、これ以上の首はございません! ララティアも差し上げます! ですのでどうか、娘を助けるために、お力をお貸しください……」


 ルクレツィアの覚悟に、俺は圧倒されていた。


 そして、ふと扉の向こうに気配を感じて、視線を移すと、そこには寝ていたはずの、魔王ベルガドーラの姿があった。


「……勇者よ……」


「魔王!? これは……」


 ベルガドーラの登場に、俺は困惑しながら状況の説明をしようとした。

 

 だが、次の瞬間――魔王ベルガドーラが、俺の前に来て膝をつき、頭を下げていた。


「アナタッ!? 何を!?」


 俺たちもだが、魔王の行動に、今まで淡々とした態度だったルクレツィアが動揺して声を上げていた。


「勇者よ……我が……」


「っ! クロードさま、主人は……」


 魔王が話そうとする内容を悟ったルクレツィアが、代わりに話そうとするが、魔王がそれをさえぎった。


「勇者よ……我が、浅はかなことを……その償いをしたい……我が首を斬れ……だが、妻と娘は助けてほしい」


「なっ!? アンタまで……」


 俺は2人の言動と、魔族に対する認識が噛み合わずにいた。

 

 いや……思えば俺たちは、ララティアに魔族の影を見ていたか?


 そして目の前の2人は、我が子を思う親として、俺たち人間と何も変わらないと思わされた。


(……覚悟を決めるか……)

 

 観念した俺は一度だけ深呼吸をして、ヒロインたちに視線を移すと、申し訳ない気持ちになりながらつぶやいた。


「あのー、相談なんですが……『5人目』をお迎えするなんてのは、どうでしょう……?」


 自分で言ってて下衆な発言だと情けなくなるが、俺の取る道はこれしかないと思ってしまったのだ。


 そしてこういうとき、クレスが真っ先に俺の問いに答えてくれるし、それに続いてみんなも答えてくれた。


「えっと……実は、私はもうそう思ってたから、今更かなーって、えへへっ!」


「そうですね……王族の婚姻では、複数の妻を持つことも珍しくありませんので、わたくしに抵抗はありません」


「まったく……こうなったら1人増えたところで、なにも変わらないわよ!」


「お兄ちゃん、欲張り……けど、いいよ……」


 俺は、彼女たちの言葉を聞くと、魔王たちに視線を戻し、できるだけ穏やかな声で2人に話しかけた。


「顔を上げてくれ、もっと話をしよう……これからのことを、みんなにとって、最善の手段を取るために……」


「……勇者よ……感謝する……」


「感謝いたします、クロードさま……」


 2人は改めて頭を下げると、ルクレツィアはヒロインたちに微笑みながら話を切り出した。


「では、奥さま方……死霊耐性を付けるために、セレーネさまの唾液でも鼻水でもいいので、肌に塗ってください!」


「「「「……えっ!?」」」」


 俺たちの堅い結束に綻びができた気がした……




 ――ララティア編 結ぶは難し、解くは容易い 完――


 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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次回もよろしくお願いします。

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