ララティア編 魔王夫妻襲来?
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ララティア編
【魔王夫妻襲来?】
お楽しみください。
――クロード邸 朝 玄関前――
リアラにララティアの両親、魔王とその妃が挨拶に来ると告げられ、俺たちは緊張のなか玄関前で待機していた。
『挨拶』の名目なのだから、正装で身なりを整えてはいるが、みんな武器をどこかに忍ばせている状態だった。
そして、出迎えの準備が出来たことを魔王たちに伝えに行っていたリアラが戻ってきた。
「おっまたせ〜! 2人とも、すぐに来るって〜!」
「すぐにって、お前が連れてくるんじゃないのか?」
俺はてっきり、昨日のセレーネのようにリアラの開けた空間の穴で移動してくるのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「いや〜、ウチら以外にコレ使わせたら、また怒られちゃうからね〜、大丈夫! ホントにすぐだから!」
「だから、どうやって……」
その時――
何かを感じとったイリーナとルーシェが、とっさに声を上げた。
「クロさま! 上です!」「クロード! 上!」
ほぼ同時に聞こえた2人の言葉に、俺は反射的に上を見上げた……
うっすらと見える雲の向こう、晴れ渡る青い空のなかに、ただ1点だけ、真っ黒い何かが見えたと思うと、それは禍々しく、だんだんと大きく……
いや……落ちてきていたとわかった瞬間――
俺の視界は真っ黒になった……
【クロードの死亡を確認しました。スキル、『強くてニューゲーム』を発動します。セーブデータを強制ロードします。】
「……はっ!?」
真っ黒だった視界がゆっくりと晴れて……
違う! 『目を覚ます』とそこは、寝室のベッドの上だった……
とっさに体を起こして周囲を見回すが、やはりここは俺の寝室だった。
「……ロードしたのか……? なんで……?」
そう言って俺は、ロードするための発動条件を思い出していた。
◆強制ロードの発動条件
1:クロードが致命的な外傷、精神的苦痛、ヒロインとの関係悪化が修復不可能な状態に陥ったとき行われる。
あの状況で、みんなとの関係が悪化したとは思えない。
つまり……俺は……
「死んだ……のか……?」
その瞬間――腹のなかが捻れ、喉の奥から何かが込み上げてくる感覚を覚えて、とっさに口をふさいでいた。
すると俺の背後から、2人の声が聞こえてきた。
「クロードさん! 大丈夫ですか!?」
「クロっち! 大丈夫!?」
「……2人とも……俺は、死んだのか?」
「……はい……黒い何かが落ちてきて、そのまま……」
「いや、多分あれ、パピーだよ……」
「そうか、パピーか……て、ベルガドーラか!?」
あの黒い何かは、魔王ベルガドーラの一撃だった。
つまりそれは、俺たちに敵意を持って……
「あ〜、クロっち! 勘違いしないでね! 多分パピーは、クロっちたちの前で『着地』しただけだよ〜!」
「……はっ!? 着地!?」
「そう! ウチが、クロっちのいる場所を教えて、パピーがそこに向かってジャンプして着地しただけ! だから、攻撃の意思はないんだよ〜」
「嘘……だろ……?」
つまり俺は、命を狙われたとか、無差別に選ばれたとかでもなく、ただそこにいたから巻き込まれただけだった。
「な、なら、俺たちの居場所を教えてなければ……」
「あっちは、クロっちに会う気満々だから、あっちこっち飛び回って、クロっちを探すと思うよ〜」
「クロードさぁん、そんなことされたら、天災レベルの被害になりますよぉ!」
「マジかよ……」
そうなると、残された手段は1つ。
魔王の着地を受け止めることだった……
――クロード領 外れの平原――
俺は領地への被害を抑えるために、出迎え場所を玄関先から、領地から離れた場所に変更した。
そしてリアラに出迎えの準備が出来たことを、魔王たちに伝えに行ってもらっている状態だった。
「みんな、何かあったときの準備はいいか?」
俺はヒロインたちに戦闘準備を促した。
この後起きることを説明したかったが、スキルの制約でそれはできない。
だが、相手が相手だ。
ヒロインたちも緊張した面持ちで、俺の言葉にうなずいた。
そして……そのときはやってきた。
リアラが戻ってきたと同時に、俺たちに向かって声を上げた。
「みんな〜! パピーとマミーが来るよ〜!」
なんとも気が抜ける報せだが、俺はすぐに上を見上げ、晴天の空に動く黒点を見つけると、思いっきり声を張り上げた。
「イリーナ! 防御結界、出せるだけ出せぇ!」
「っ! はいっ!」
俺の言葉に即座に反応したイリーナは、上空に防御結界を何重にも展開した。
そして黒点が恐ろしい速度で落下し、それが禍々しい魔力の塊だと認識できた瞬間には、防御結界を次々と貫通していった。
「クレス! 風で押し返せ! ルーシェ! 目の前に壁と、水張れるか!?」
「わかった!」「まかせなさい!」
俺の指示に、クレスは風の精霊術を使って空へ押し返すように風を起こし、ルーシェが地面を抉るようにして、俺たちの目の前に土の壁と、その穴を使って水溜りを作った。
だが魔力の塊の落下速度に、あまり変化が見られなかった。
「全員! 衝撃に備えろ!」
俺たちは土壁に身を隠すように体勢を変えた瞬間――魔力の塊は水溜り目掛けて着弾した!
衝撃、風圧、水飛沫、飛び散る岩、地鳴りが、俺たちに一斉に襲いかかってきた。
だが直前に、イリーナが俺たちを包み込むようにして、結界を張ってくれたおかげで、それらを防ぐことができた。
そして静寂がその場を支配すると、俺は立ち上がって土煙の奥に見える巨大な何かを見つめた。
やがて土煙が晴れると同時に、その姿があらわになった。
赤黒い岩のような皮膚、赤褐色の逆立った髪、側頭部から伸びる王冠のような巨大な黒い角、黒い目に赤い瞳、牙が生えた凶悪な人外の顔立ち、巨大な両腕を覆うガントレット、右肩に着けられた巨大なショルダーガード、腰から下に着けられた重厚な黒鎧、そして露出した肌に付いた無数の傷跡。
まさしく、それは『魔王ベルガドーラ』だった。
そして魔王のすぐ側に、もう1人……
毛先が赤みがかった長い銀髪、血のように真っ赤な紅の瞳。
そして黒を基調として、胸元を露出させた妖艶な、しかしどこか品格を感じさせるドレスを着た女性が立っていた。
間違いない、その女性が『魔王妃ルクレツィア』、魔王の妃でララティアの母親だろう。
そう思っていると、魔王ベルガドーラが空気を震わせながら、短く言葉を発した。
「……勇者! ……やる!」
「くっ!」
言葉と一緒に放たれた圧に、俺は必死に堪えながら、腰につけた剣に手をかけた。
そして次の瞬間――
「待たせたな、"勇者"クロードよ! 壮健そうで何よりだ! 今日は、我が娘ララティアが世話になっているとのことで挨拶に参った! 我輩としては寂しく思うが、貴殿が望むなら、我が娘ララティアを"やる"こともやぶさかではないぞ! さあ! 今宵は語り明かそうぞ! ……っと、主人が申しております」
「…………えっ!?」
俺の気のせいか? 魔王が言った内容を、隣にいる女性が言い直していたが、その内容は気さくなものだった。
そう思っていると、また魔王が口を開いた。
「……国王! ……謝罪!」
「っ! 陛下に謝罪を要求するだと!?」
やはり俺の勘違いだ! 魔王は俺たちに敵対している。
……と思ったのも束の間、隣の女性が喋り出した。
「しかし、我が娘ララティアが本当に迷惑をかけたな! 貴殿の仕える王がいる城に押しかけて暴れたと聞いたが、本当にすまなかった! できれば"国王"にも"謝罪"と挨拶をしたいのだが、お会いすることは可能だろうか? ……っと、主人が申しております。」
「………………うん??」
魔王の言葉と、隣の女性の話とが噛み合わず、俺は訳がわからなくなった。
そしてララティアの方へと視線を向けると、彼女がオロオロした様子で教えてくれた。
「えっと、その……パパ、人見知りで……ママが代わりに、お話ししてくれる……」
その説明を聞いた俺は、ぎこちない話し方のララティアと、口数の少ない魔王を交互に見つめた。
そして、かつて死闘を繰り広げた相手がどういう男なのかを悟った俺は、空を見上げて深いため息をついていた……
――ララティア編 魔王夫妻襲来? 完――
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
最初期から決めていた魔王夫妻の構想を、やっと形にできて大満足です!!
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次回もよろしくお願いします。




