ララティア編 俺と5人と2柱で一軒家生活
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ララティア編
【俺と5人と2柱で一軒家生活】
お楽しみください。
――セレンディア城 談話室――
ララティアは、ヒロインたちが相当怖かったのだろう……
泣き止んだはいいが、俺のズボンを掴んで離さなくなっていた。
「ララティア、ズボンを離してくれないか?」
「……やだ」
さて、どうしたものかと考えていると、一つ思い出したことがあった。
「そういえばララティアは、なんでワープを使わないんだ? 確か、好きなところに移動できるんだろ?」
ララティアはリアラからワープのスキルを授かって、どこにでも自由に行ける能力を手に入れていたはずだ。
しかし彼女は、俺がロードしてから一度も、ワープして逃げようとしなかった。
するとララティアは、俺のズボンのすそを強く握りしめながら、弱々しくつぶやいた。
「……わかんないけど、使えないの……」
「……使えない? なにか、制限があるのか?」
俺の問いに、ララティアは首を何度も振って否定すると、ズボンに顔を埋めて、喋らなくなってしまった。
本当に先ほどまで、高笑いを上げて暴れた魔王の娘とは思えない様子に、俺は困り果ててしまったが、リアラならなにか知ってると思って声をかけた。
「ふぅ、困ったなぁ……リアラ! どうしてララティアはスキルを使えなくなったんだ?」
「う〜ん? ララちーのスキル? ……あっ!?」
「……なんだ、その『あっ!?』 は!?」
「いや〜、実はクロっちが、新しいスキルで戻った後なんだけど〜」
――クロード 強くてニューゲーム後 止まった世界――
クロードが新たなスキルで、ララティアとの戦闘に戻ったのだが、女神の二柱はその場にとどまっていた。
それは彼女たちの意思ではなく、さらに"大きな意志"によるものだった。
「ねぇ、セレっち〜、これって……?」
「えぇ、あの人でしょうね……」
セレーネとリアラが、お互いに自身の身に起きていることに、ある存在の介入を感じ取ると、それは現れた。
それは天空を裂き、空間を歪ませ太陽の光を集め、光の羽を舞い散らせながら、ゆっくりと舞い降りてきた。
日の光のような明るい白金の長髪、薄手の白いローブは体のラインをしっかりと浮かび上がらせ、その妖艶さを際立たせていた。
しかし、そんな神の表情は誰にもわからなかった。
目元を銀の仮面で隠し、口はシルクのような滑らかな布で覆われて、見ることも、話すこともできない。
挙句に両手は、布で包帯のように巻かれ、まるで封印されたなにかだった。
そのなにかは、セレーネとリアラの二柱に意志を伝えてきた。
《【時間の女神セレーネ、空間の女神リアラ、アナタたちの振る舞いについて、お話しがあります】》
セレーネとリアラは、目の前の存在から発せられているはずなのに、頭から響く声に嫌悪感を見せながら、セレーネはその存在に話しかけた。
「いやぁ〜、相変わらずの美声ですねぇ〜、"お母さま"」
そう……その存在は四女神を生み出した、母にして最高神。
その名を『世界の大母神マキナ』
《【嫌味のつもりですか、セレーネ? 仕方ありません。 わたくしの声は世界の声、安易なことを言えば世界がそうなり、世界がそれを否定しかねないのです】》
「そうだけどさ〜、たまには目を見て話したいじゃん?」
《【その結果、アナタたちを、醜い姿に変えてもいいのなら、喜んでこの仮面を外しましょう】》
セレーネとリアラの二柱は、その言葉に緊張が走った。
『世界の大母神マキナ』――それは口にしたこと、目で見たこと、触れて感じたこと、そのすべてが世界の意思としてそのようになってしまう。
だから話さず、目を覆い、口をふさぐ。
しかし彼女は、すべてを見通し理解している。
なぜなら世界は、彼女自身だからだ。
そしてそれは、娘である四女神にも例外なく行われる。
《【まずはセレーネ、アナタの自由過ぎる振る舞いで起きた、此度の騒動については保留といたします。その代わり、あの勇者と交わした契約をしっかり完遂させなさい】》
「……はい、お母さま」
《【次にリアラ、アナタにはお説教が必要ですね】》
「えっ!? なんでウチだけ!?」
《【魔王の娘になんの制約もなく、好きな場所に移動できるスキルなんて規格外なものを与えたからです。アナタには、魔王の娘に与えたスキルの改変と、その後の処理を任せます。あの子の元で上手くやりなさい……もちろん、手助けは許しません】》
「……は〜い!」
――現在に――
「て、ことがあってぇ、ララちーのスキルを変えちゃってたんだよね〜」
「変えちゃったって、どんなスキルになったんだ?」
「えっとね〜、行ったことがある場所なら行けるスキルだよ!」
「行ったことがあるって、それならなんでララティアは帰れないんだ?」
「あぁ、そうじゃなくて〜、そのスキルになってから、行ったことがある場所じゃないとダメなんよ〜」
「……はぁ!?」
リアラの説明が本当なら、ララティアがスキルを使って魔界に移動するには、一度魔界に行く必要がある。
だが、ララティアにそれができるのだろうか?
「ララティア、自力で帰れる方法はあるのか?」
「……ない……」
つまり、迷子だった……
「ちなみに、リアラが連れて帰るってのは……?」
「怒られるからムリ〜」
「ムリか〜」
俺は迷子と役に立たない女神が増えたことに、頭を悩ませていると、思ったよりも時間が過ぎていたらしく、陛下が部屋に戻ってきた。
「おお! 全員、揃っておるな! さて、クロードよ! 余の話の前に、そちらの報告をしてもらおうか……」
「はい、陛下! まずは、セレーネ……女神セレーネさまについてですが……」
俺は陛下に、セレーネへ『輪廻の女神』の捜索を命じたことと、ララティアが自力で魔界へ帰還するのが困難であることを説明した。
「まさか、死者の蘇生が可能とは……して、どのように見つけ出すのだ?」
「申し訳ありません……それはまだ……」
「そうか……いささか不安は残るが、女神セレーネに任せるしかないか。では、こちらの話だが、なにぶん急なことだ……集まれる者だけで話したが、なにも決まっていない、というのが本音だ」
陛下は申し訳なさそうに俺たちに説明するが、俺のなかでは逆に陛下を労いたい気分だった。
だが、陛下の話はそれで終わりではなかった……
「して、クロードよ……貴公に頼みがある!」
「は? 頼み……でしょうか?」
「うむ、そこの……魔王の娘についてだが、貴公の元で預かってはくれぬか?」
「……えっ!?」
「すぐに帰れぬのなら、貴賓として迎え入れるしかないが、相手は魔王の娘だ、城内に泊めるわけにもいかんだろう……だから、貴公の客人として、屋敷で面倒をみてくれまいか?」
陛下の意見はもっともだ。
敵国ではない可能性が出てきた魔族の姫を、無碍にはできない。
その妥協案で、勇者の屋敷に迎え入れるのは、当然の帰結ではあるかもしれないが、今その話になると……
「王さま! なら私も、クロードの屋敷にお泊まりします! お泊まりしたいです!」
やっぱり、クレスが真っ先に反応して、同行を申し出てきた。
「陛下、相手は女性です……クロードさまだけでは、行き届かないこともあるでしょう……ここはわたくしたちがお手伝いいたします!」
真っ当な理由を述べて、同行の提案をするイリーナ。
「荷物は私の精霊術で収納するから、1時間後に城門前で集合よ!」
すでに一緒に行く気満々で、支度の準備を始めるルーシェ。
「イリーナさま、お供いたします……用意もできております」
イリーナへの同行を理由に、ミリスも支度を……すでに終わらせていた。
「おぉ! そうか、そうか! では、久方ぶりの勇者パーティへ勅命を与える! 勇者の屋敷で、魔王の娘の面倒を見るのだ!」
「「「「はいっ!!!!」」」」
ヒロインたちは、陛下の勅命に高らかに返事をするなか、俺1人だけが遠い目をしていた。
「いやぁ〜、クロードさん! またセバスさんのご飯が食べられるんですね! やったぁ〜!」
「クロっち〜、女の子7人を一度に持ち帰るなんて、やるじゃ〜ん!」
「……クロードさま……アタシたち、どこに行くの?」
女神たちが騒ぐなか、ララティアが不安そうに俺を見上げて問いかけてきた。
「うーん、俺の家のはずなんだけど……人生の墓場かもしれん……」
その言葉に不安が増したララティアは、俺の足に抱きついて、顔を埋めてしまった……
――ララティア編 俺と5人と2柱で一軒家生活 完――
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