ララティア編 天然物のスキル
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ララティア編
【天然物のスキル】
お楽しみください。
――セレンディア城 談話室――
新しいスキルを手に入れた俺は、ミリスにズボンを脱がされそうになるが、パンツ一丁か、鼻水付きのズボンかの苦渋の選択を迫られ、泣く泣くズボンを履き続けた。
「さて、セレーネの件はエイルさまを探すことで片がついた訳だが、次は彼女をどうするかだな……」
そう言って俺は、部屋の隅で大人しく椅子に座っていたララティアに視線を移した。
彼女は俺の視線に気が付くと、敵意剥き出しの表情で喋り出した。
「何よ? もう終わったの? で、アタシはもう帰っていいの?」
ララティアは早く帰りたそうにしているが、俺は彼女の期待を裏切る返答をした。
「それは、俺の独断では答えられない……もう少し大人しくして待っててくれ」
「もう! アタシの話聞いてたの!? コッチに戦争する意思なんてないのよ! アタシはアンタを連れて帰れればそれでいいの!」
ララティアが、不満を漏らし、自身の目的を口にしたその時――
明らかにヒロインたちの放つ空気が、重く冷たい、そして鋭いものに変わったのを感じた。
そしてクレスがララティアに近付いて、微笑みを崩さぬまま語りかけた。
「ララティアちゃん……今なんて言ったのかなぁ? ララティアちゃんが、誰を連れて行くって、言ったのかなぁ!?」
「えっ!? だ、だからアタシが……」
「ララティアちゃんがぁ?」
「……アイツを……」
「だぁれぇを!? かなぁ?」
「……あ、えっと……その……」
完全にクレスの気迫に、ララティアが気圧されて、言葉を詰まらせてしまった。
そこへ、イリーナがクレスになだめるように言葉をかけてきた。
「クレスさん、いけませんよ……相手は魔族とはいえ、まだ幼い女の子です……」
クレスをなだめようとするイリーナに、ララティアは安堵の表情を浮かべたが……それは、勘違いだったとすぐに思い知らされた。
イリーナはどこからともなく取り出しているのか、未だに不明なメイスを手に、満面の笑みで語り出した。
「人の想い人を奪う行為が、どれだけの重罪になるのか、骨の芯までしっかり叩き込まないといけません……」
「ひぃ!?」
ララティアは恐怖のあまり、この世の終わりのような表情になっていた。
その光景を見ていた俺は、あまりにも可哀想だと思い、2人を止めるようにルーシェに声をかけた。
「まったく……ルーシェ、お願いできるか?」
「はぁ、仕方ないわね……」
ルーシェはため息混じりの息を吐くと、クレスとイリーナの元に歩き出した。
「2人とも落ち着きなさい……今この子に何かしたら、それこそ魔族との戦争になるかもしれないのよ!」
さすがルーシェだ、落ち着いて物事を考えてくれるから助かった。
確かにララティアに非があるが、やり過ぎは火種の元になってしまう。
「だから殺る《やる》なら塵も残さずに、跡形もなく、痕跡も残さず、そんな子は知らないと、言い切れるようにしないと!」
「そっか! 酸性の毒って、まだ残ってたかな?」
「浄化して塵にすればなんとか……」
「最後に私が、全部空間魔法で、処分すれば完璧ね!」
「う〜ん! 違うよ!? 2人を止めてって、お願いしたんだよ!? 完全犯罪を仕立てないで!!」
俺が3人の凶行に慌て、ララティアは恐怖していると、その様子を見ていたミリスが3人に声をかけた。
「なんだか怖いよ……お姉ちゃん!」
「「「うぅんッ!?!?!?」」」
彼女の言葉に、3人に電流でも走ったかのように肩を跳ねらせると、態度が急変してミリスに話し出した。
「ごめんね! ミリスちゃん! 怖かったよねー!」
「そ、そうね! ごめんなさい、ミリス……」
「い、いけません! わたくしには、クロードさまが! でもぉ……お姉……ちゃん! いぃ!」
ミリスに抱きつくクレス、慌てて謝るルーシェ、なぜか悶えるイリーナと、三者三様の反応を見せていた。
事態が落ち着いたことに俺は安堵すると、ララティアの元に歩み寄った。
「ララティア、怖がらせてごめんな! お前が帰れるように、俺がなんとかしてやるから安心しろ!」
そう言って俺は、まだ幼い少女の頭に手を置いて、極力怖がらせないように、優しく頭を撫でた。
するとララティアは、その言葉に安心したのか、恐怖の表情は薄れ、安堵の涙が溢れてきた。
「ほ、ほんと? アタシ、ひどいことされない?」
「ああ! 任しとけ! 俺がそんなことさせないさ!」
俺はララティアに、満面の笑みで答えた……
――ララティア――
パパを倒した勇者に会いに来ただけなのに、すごく怖い目にあった。
もうアタシは家に帰れないし、ここで死んぢゃうかもしれない。
『戦って死ぬなら本望』なんて言ったけど、アタシより強い奴なんて、パパとママしかいなかったから、自分が負けるなんて思ってもいなかった。
『殺される!』 そう思ったとき、アタシは怖くて動けなくて、ただ怯えることしかできなくなっていた。
そこに勇者が助けてくれた……パパが認めた人、アタシのお婿さん、この人の元にいれば安全だ! アタシは守ってもらえる!
そう思ったアタシは、この人から離れたくなくなっていた……
「うっ、うえぇぇぇん! 怖かったよぉぉぉ!」
「よ、よーしよし! よくがんばったな!」
「グロードざまぁぁぁ!」
「ん? うん、まぁいいか!」
アタシは無意識に、この人のことを、『クロードさま』と呼んでいた……
――セレーネ――
「あ〜あ! やっぱりこうなりましたか……」
私は、勇者と魔王の娘を眺めるヒロインたちの元に近づいて語りかけた。
「みなさん、見ましたか? あれがクロードさんの生まれながらに持つスキル、『天然タラシ』です!」
ヒロインたちは、私の言葉に反応することなく、ただ一点を見つめていた。
「もちろん! このスキルは、みなさんにも影響したでしょうねぇ〜、知らず知らずに堕とされてた……誠に末恐ろしいスキルです! これから、どうなっていくのか? 見ものですねぇ〜」
私は勇者にされたことの仕返しに、ヒロインたちを煽ることにした。
さぁ! 哀れな勇者クロードよ! 女神をコケにし、あまつさえ土下座させたことを後悔するといい!
そう思っていると、哀れな勇者にたぶらかされたヒロインたちが、ようやく口を開いた。
「もう、クロードったら、仕方ないなぁ」
……あれ?
「魔族の娘さえも虜にするなんて、クロードさま、素敵です!」
……ちょっとぉ?
「まぁ、それ込みで堕とされちゃった私たちも私たちってことね!」
いやいやいや!
「……さすが、お兄ちゃん……」
「なんですかぁそれぇ!? 女神も驚きの器量のよさなんですけどぉ!?」
ヒロインたちの、予想外の反応に憤慨していると、私の肩にリアラが手を置いて、苦言を呈してきた。
「いやぁ〜、セレっち〜、往生際がわるいってぇ〜、女神も驚きの性根のわるさだよ〜」
「ムッキィィィ!!!」
私の作戦は失敗に終わりました……
【チェックポイントの更新を確認いたしました。セーブデータを更新します。】
――ララティア編 天然物のスキル――
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