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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鮮紅に沈む少女

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ララティア編 それは線香花火に似て

いつも読みにきてくれてありがとうございます。


ララティア編

【それは線香花火に似て】


お楽しみください。



 ――セーブデータロード後 談話室――



 いつものように真っ白になった視界が晴れると、そこにはララティアが、テーブルの上で不貞腐れた様子で立っていた。


「おい、これって!?」


 油断した……例の声が、セーブポイントを修正したと言った事で、もっと安全な場面からやり直せると思っていた。

 

 だが、そんな期待はララティアの一言で吹き飛んだ。


「うるさいなぁー、アンタたち……邪魔!」


 瞬間――


 少女から広がるように衝撃波が俺たちを飲み込み、部屋は『ドゴォォォン』と爆音を上げて吹き飛んだ。

 

 みんな、受け身こそ取っていたが、完全な不意打ちに対処し切れずに倒れ込んでいた。

 

 俺も剣を杖代わりにして、倒れそうになる体を支え、なんとか立っていた。


「クソッ、これじゃあさっきと同じじゃないか……」


 周囲の状況に、俺が苦言を漏らすと、土煙の中から誰かが立ち上がる姿が見えた。


「……クロードは、こんな事じゃ絶対に倒れない……だから私も倒れない……じゃないと一緒にいるなんてできない!」


 そこにはクレスが、自身の周囲に風のクッションを作って攻撃を防ぎ、両手の武器を構え直していた。

 

 すると、またどこかで瓦礫が動く音がする。


「……クロードさまとの、恋人生活を邪魔する者は、許しません!」


 そう言いながらイリーナが、俺たちに治癒術を施した後、どこからともなく取り出したメイスを構えていた。

 

 そして土煙が晴れてくると、城が崩れないように、巨大な土壁が部屋を覆っているのがわかった。


「まだ何も、クロードにしてもらってないのよ! このツケは高くつくわよ!」


 ルーシェが杖を振るって、氷塊と雷球をいくつも作り出していた。


「な、なに、コイツら!?」


 3人の急変した様子に怯んだララティアは、魔法の弾を作りながら部屋の中を飛ぶと、何かが足に絡みついて、顔面から墜落してしまった。

 

 ララティアは涙目になりながら体を起こして、自身の足を確認した。


「痛ったい……何!? ロープ? 何でアタシの足に?」


「お兄ちゃんの邪魔はさせない……」


 いつの間にか、ミリスがララティアの足にロープを結び付けていた。


 俺はその光景と、みんなの変貌ぶりを目の当たりにして、自分の持つスキルが、本当に変わってしまった事を理解した。

 

 『強くてニューゲーム』……セーブデータが強制的に統合されてしまった代わりに、彼女たちの個別での攻略内容も統合された『全員攻略済み』の状態だった。


(あれ? これって俺、詰んでないか?)


 その事に気付くと、治癒の力で回復したはずの体が、どんよりと重く感じた。

 

 とりあえず俺は、事態の収束を図るため、一度深呼吸をすると、ララティアに話しかけた。


「すまないな、ララティア……この後の予定が山積みなんだ……だからすぐに終わらせる」


「はぁ!? 山積みって何よ?」


「そうだな……まず壊れた城の修繕だろ、クレスに美味いもん食わして、イリーナに恋人らしい事してやって、ルーシェのわがまま聞いて、次にミリスの母親を殺した犯人を探して……後、俺の身辺整理も必要かも……」


「……目が死んでるわよ……」


「ははっ、大丈夫さ……そうだ! お前の親父さんの事もどうにかしないとな……あとララティアも、スキル的には攻略対象みたいだし、仲良くしような……」


「な、なに言ってんの? このっ!!」


 俺の言葉に反発するように、ララティアが足に結ばれたロープを魔法で破壊すると、俺に向かって飛びかかってきた。


 だが、クレスが俺との間に割って入ると、ララティアに双剣を振るった。

 

 ララティアはとっさに後ろに飛んで避けたが、ドレスの一部が、異臭を漂わせながら溶けていった。


「アタシのドレス! アンタ何したの!?」


「剣先に溶解液を仕込んでただけだよ! ドレス程度なら溶かせるから、気をつけてね!」


 クレスはそう言うと同時にララティアへ追撃を行った。

 

 ララティアは狭い部屋の中を飛び回っていたが、その不自由さに我慢ならず、わずかな隙をついて、魔力を帯びた突進で土壁を破壊して外に出た。

 

 その時――それを待っていたかのように、イリーナの守護結界がララティアを囲むように発生して、彼女を閉じ込めた。


「な!? なにこれ!?」


「クレスさんが、わざと作った隙に飛び込んでくれたおかげで、楽に閉じ込める事ができました……ありがとうございます……」


 そう言ってイリーナが、不敵な笑みをしたまま、静かに微笑んでいた。

 

 そして、ルーシェがいつの間にか、杖の先に魔力を収束させた状態で構えていた。


「ええそうね! 大っきな花火を上げる準備に集中できたわ!」

 

『おれのこのてがまっかにもえるぅ〜』『てなんてないよぉ〜』『そこはくうきをよんでこぉ〜』


 その様子に気付いたララティアが、必死に結界を壊そうとしたが、魔族にとって相性が悪い光の結界を壊すには、時間が足りなかった。


「なんで出れないの!? ワープもできないし……リアラどこ!? どうしよう……」


 気のせいだろうか、ララティアはワープで逃げることもできず、涙目になって狼狽えていた。

 

 そして、その様子を見ていた俺の横に、ミリスがティーセットを持って立っていた。

 

「お兄ちゃん、紅茶をどうぞ……」


「あ、ああ……ありがとう……」


 ミリスから紅茶を受け取ると、結界の中を必死に出ようとするララティアを眺めながら、紅茶を口に運んでいた。

 

(これ、もう決まったなぁ……)

 

 そして、ルーシェから終わりを告げる言葉が放たれた。


「じゃあね! 派手に爆ぜなさい!」

 

 『エクスゥゥゥ!』『プロォォォ!』


「ご、ごめんなさい! 謝るから許してぇー!」

 

『『『ジョン!!!』』』


 その瞬間――結界の中で、『ドォォォン』と凄まじい閃光と共に爆発が起きた。

 

 そして結界が光の塵になって消えると、おそらくララティアが、煙を上げながら落ちていった……


 


 ――ララティア編 それは線香花火に似て――


 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次回もよろしくお願いします。

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