ララティア編 輝く笑顔は女神のよう
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――セレンディア城 談話室――
お見合いの行末に、幕を下ろそうとしたその時、魔王ベルガドーラの娘を名乗る『ララティア』が、空間を裂いて現れた。
俺は剣を抜き構えると、4人に指示を出した。
「イリーナは全員に強化を! クレスは空に飛んだら迎撃を! ルーシェは2人の援護を! ミリスは陛下を頼む!」
「わかりました!」
「了解!」
「無茶言うわね!」
「かしこまりました……」
みんなが俺の声に合わせて行動に移った。
だが、テーブルの上で少女は踏ん反り返ったままだった。
そして少女は、周りの事など気にしていない様子で、俺に向かって語りかけてきた。
「ねぇアナタ! もしかしてだけど、アナタが勇者なの?」
「……ああ、そうだ……俺が勇者、クロードだ……」
俺は武器を構えたまま、少女の問いに答えた。
「そう……強そうに見えないけど、本当にお父さまをアンタが倒したの?」
「なんだ? 敵討ちにしては、相手の情報を調べてないのか?」
「うん? 何言ってるの? 敵討ちに来たなんて言ってないわよ?」
俺の返しに、少女は不思議そうに問い返してきた。
「冷酷なんだな……父親の仇が目の前にいるってのに……」
「だから! アンタは何を言ってるの? お父さまの敵討ちって、どういう……」
「問答はそれくらいにしろ! このまま去るならよし! 去らぬなら、ただでは……」
俺は、少女の話をさえぎり、戦闘の意思があるのか、再度確認すると――
「だからぁ! 聞いてって言ってるのぉぉぉ!!」
少女は子供がグズったように涙目で、泣き叫んだ。
「お、おう……すまん……」
なぜか俺は謝ると、少女が話し出すのを待っていた。
そして、少女が落ち着きを取り戻すと、語り出した。
「敵討ちって、仲間を殺された人が、殺した奴を倒そうとする奴でしょ?」
「まぁ、殺したかは別だが、だいたいそうだな……」
「なら、アタシは違うもん! パパ、生きてるもん!」
「……パパ? パパってベルガドーラの事か? でもお前さっきまでお父さまって……」
「ち、違うもん! お父さまって言ったもん! アンタの気のせいだもん!」
「わ、わかった……俺の聞き間違いだ! ……いや! ベルガドーラが生きてるって、どういう事だ!?」
「だーかーらー! お父さまは生きてるもん! それで、ママ……お母さまが言ってたもん!」
ママって言っちゃってるし、なんかもうグダッてる気がするが、とりあえず話を聞こう。
「それで、お前の母親がなんて言ってたんだ?」
「ふん! お父さまは、アンタと戦って怪我したから帰って来たのよ! そしたら、アンタを『婿養子』にするって張り切ってるって、お母さまが言ってたわよ!」
「……はぁ!? 誰が誰の婿養子になるって!?」
「アンタが! アタシの!」
「「「「「……はあぁぁぁ!?」」」」」
俺たちは、唐突な縁談話にただ驚きの声を上げていた。
するとクレスが少女に食ってかかった。
「ちょっと! クロードを婿養子にするってなに!?」
そこにイリーナも加わった。
「そうです! クロードさまは、わたくしたちと結婚するんですよ!」
そして、ルーシェが収納していた杖を取り出して構えた。
「冗談なら、早く撤回しなさい! 手加減するのは得意じゃないの!」
3人の言い分に、魔王の娘は不貞腐れるようにつぶやいた。
「うるさいなぁー、アンタたち……邪魔!」
瞬間――
少女から広がるように、衝撃波が俺たちを飲み込み、部屋は『ドゴォォォン』と爆音を上げて吹き飛んだ。
みんな、受け身こそ取っていたが、完全な不意打ちに対処し切れず、倒れ込んでいた。
俺も剣を杖代わりにして、なんとか立っていた。
「クソッ! ……なんてやつだ……」
少女は俺たちの姿を見回すと、また高らかに笑って、語り出した。
「はーっはっは! お父さまを倒したって聞いて、期待してたのに、雑魚でつまんなぁーい!」
少女の高笑いが、耳障りに響いていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「あ〜あ! ララちー、やりすぎだしぃ! マミーに気をつけろって、言われたっしょ?」
それは少女の出て来た空間の穴から聞こえ、また何かが姿を現そうとしていた。
「クソッ……まだなんかいるのかよ……」
俺は状況がさらに悪化することに焦り、悪態をつきながら武器を構え直した。
だが――次に現れた女の姿に、俺は別の意味で驚愕した。
腰まで伸びた金色の髪、小麦色の艶のある肌、そして薄紫色の瞳と唇が、魅惑的に感じられた。
そして首や腕に施された金の装飾と白いローブは、まるでセレーネの着ている物とよく似て……てか、柄こそ違えど、ほとんど一緒だった。
そう思ってセレーネを見ると、彼女はあわあわと口元を歪ませて、その女性に喋りかけていた。
「リ、リアラ!? やっぱりアナタの仕業だったんですね!?」
「よっすぅ、セレっち! 何百年ぶりぃ、元気してたぁ? ここで何してんのぉ?」
「おい、セレーネ! どういう事だ!? アレはお前の同類か!?」
2人(?)の会話に割り込むように、セレーネに問いただすと、陽気な感じの女性が、代わりに答えた。
「ちょっと、クロっち! アレとか失礼だしぃ!」
「ク、クロっち!?」
その女は、初対面のはずの俺に、馴れ馴れしくふざけた呼び方をした後、名乗りを上げた。
「リアラで〜す! 【空間の女神】やってま〜す! ララちーの付き添いで来ました〜、よろしくね〜……あっ! 彼氏はいませ〜ん、募集中〜!」
そう名乗った女は、魔王の娘の横で、ニコニコと笑っていた……
――輝く笑顔は女神のよう 完――
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