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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と影に溶ける少女

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ミリス編 重なる影はアナタに染まる

いつも読んでくれてありがとうございます。


ミリス編

【重なる影はアナタに染まる】


お楽しみください!



 ――セレンディア城 東の塔 リビング――


 

 真っ白だった視界がだんだんと晴れてくると、そこには泣きじゃくるミリスの姿があった。

 

「ごめんなさい! 今のは忘れてください! 勇者さまになんてことを……」

 

 俺はすぐに、ミリスの肩を掴みなおして、声をかけた。

 

「ミリス、ありがとうな! お前はそうやってずっと俺たちを支えてくれてたんだな?」

 

「そ、そんな! 私はただ、道具として……」

 

 俺は彼女の言葉をさえぎり、言葉を続けた。

 

「まだ、魔法の石は持ってくれてるのか?」

 

「……えっ?」

 

「ほら、俺があげた石だよ! なんでも願いを叶えてくれる石だってプレゼントしたろ?」

 

 それを聞いたミリスは、ゆっくりと服の中から記憶の中で見た、首下げの袋を取り出して俺に差しだした。

 

「この中に、入れてあります……」

 

「ああ、大事にしてくれてるんだな、ありがとう」

 

 そう言って俺は、彼女の頭に手をおいて優しく撫でた。

 

「でもごめんな、その石ぜんぜん役に立ってないだろ?」

 

「そ、そんなことありません! この石があったから、私はここまで頑張ってこれたんです! 戦場で怯えてたときも、これがあったから……」

 

「そうか、頑張ったんだな、偉いぞ!」

 

「あ……あの……なんで……そんなに?」

 

 ミリスは俺の甘やかしに戸惑いながら、恥ずかしそうに聞いてきた。

 

「ミリスは、もう我慢しなくていいんだ! 俺がいっぱい甘やかしてやるからな!」

 

「……なん……で……?」

 

「なんでって、俺は将来、伝説の勇者になるクロードさまだぞ!」

 

 その言葉に、俺を見つめるミリスの目が大きく開き、唇を震わせながら言葉を紡いだ。

 

「クロード……さま?」

 

「おう! でも今はまだ、修行の身……さまと呼ぶにはまだ早いぜ!」

 

 俺のその返しに、ミリスは瞳を潤ませていた。

 

「……じゃあ、クロード?」

 

「まて! お前いくつだ?」

 

「……うんと、たしか……15……」

 

「じゃあ……20の俺が『お兄ちゃん』だな!」

 

「……グスッ……お兄……ちゃん?」

 

「おう! 将来の勇者クロードさまを『お兄ちゃん』と呼ぶ権利をお前にやろう!」

 

「……私の……お兄ちゃんに……なってくれるの?」

 

「…ああ、なってやる!」

 

 俺の言葉に、ミリスがまたぼろぼろと涙を流して、泣き出してしまった。

 

「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

 

「ああ、ここにいるぞ……だからお前も、ここにいろ……なにも我慢しなくていい、俺がいっぱい幸せにしてやる!」

 

 ミリスを、その呪縛から解放する方法は、やり直すことだった。

 

 彼女をあの日の少女に戻してあげればいい……

 

 まだ世界の終わりを知らず、幸せを噛みしめられていたあの日の少女に。

 

 だがそれは、俺じゃないとできないし、やったからには俺が一生お兄ちゃんとして、この子を受け止める。

 

 なら、やってやろう……俺にはその覚悟がある。

 

 そう気持ちを昂らせていると、落ち着いてきたミリスが、俺に話しかけてきた。

 

「……ねぇお兄ちゃん……」

 

「うん? なんだミリス?」

 

「……大好き」

 

 そう言うと、ミリスは俺の頬に口づけをして、抱きついてきた。

 

「お、おお、おい、ミリス!?」

 

 俺が戸惑っていると、背中から恐ろしく鋭い殺気を感じとった。

 

 こういうときは、だいたいクレスから口火を切るんだ。

 

「ねぇクロード……いくら仲間とはいえ、幼い女の子にお兄ちゃん呼びさせて、ほっぺにキ、キキ、キスとか……どういうことかなぁー」

 

「ク、クレスさん!? なんか手に持ってますけど、それは何かなー?」

 

「これー? 原液を入れた小瓶だけど?」

 

「何の!? 何の原液ですか!?」

 

 クレスが持つ謎の小瓶の正体を問いただしていると、ルーシェがゆっくりと近づいてくる。

 

「ねぇアンタ……歳下の若い女の子が好きってことかしら? じゃあ、歳上の私は、最初から無理だったってことかしら?」

 

「待てルーシェ!? それは話が飛躍し過ぎだ! てか、お前も手の上で何を作ってるんだ!?」

 

「安心しなさい……土を高温でドロドロに溶かした物をアンタにぶつけるだけだから、爆ぜたりはしないわ!」

 

「ただれるよ! それ! 火傷じゃ済まないよね!?」

 

 するとイリーナが興奮気味に、語り出した。

 

「ご安心ください、クロードさま! 魔力は十分にありますので、いつでも治療いたします!」

 

「いや! 止めようよ! そこは2人を止めようよ!」

 

「ですが、わたくしも思うところはあるといいますか……そうですわ! わたくしも1回くらい、お叩きしてもよろしいでしょうか?」

 

 そう言ってイリーナが、クルッと一回転すると、例のメイスを手に持って微笑んだ。

 

「ねぇ待って!? 今どこからそのメイス出した!? どこにしまってあったの!?」

 

「そんな! 恥ずかしいですわ、クロードさま! 乙女が隠せるところなんて、そう多くはありませんわよ?」

 

「だから、どこなんだよ!?」

 

 するとセレーネが俺に話しかけてくる。

 

「クロードさぁん! とりあえずホッペチューの感想聞かせてくださいよぉ〜」

 

(やめろ! 余計なことを考えさせるな! 今の状況わかってる!?)

 

「でもぉ、ここで私喋らないと出番ないですよねぇ?」

 

(なんの!? なにを心配してるの、お前は!?)

 

「お兄ちゃん……大丈夫ですか?」

 

 俺が3人と1柱の対応に追われていると、腕の中にいたミリスが心配そうに俺を見つめていた。

 

「……心配するな! だって俺は勇者でお兄ちゃんなんだぞ!」

 

「……うん!」

 

 俺の言葉にミリスは、また抱きつくことで信頼を表現してくれた……が俺の背後から迫る殺気が、限界を告げていた。

 

 だが、ミリスが何かを思いついたように俺から離れて立ち上がると、3人の前に出て語りかけた。

 

「……じゃあ、お兄ちゃんと結婚するみんなは……お姉、ちゃん?」

 

「「「……ゔっ!!!」」」

 

 その言葉に3人が硬直した……

 

 そしてクレスが駆け出した。

 

「もう! ミリスちゃん、可愛いんだから〜!」

 

 そう言ってクレスは、ミリスに思いっきり抱きついた。

 

「そ、そうね、ちょっと、歳の離れた姉妹ってのも悪くないわね!」

 

 そしてルーシェが、小動物でも触るかのように、優しくミリスの頭を撫でている。

 

「い、いけません! わたくしにはクロードさまが! あぁ、でもなにか、違う扉がぁ……」

 

 ……なぜかイリーナは、その場で崩れ落ちて身悶えていた。

 

「えっと……助かった……のか?」

 

 俺が事態の急変に戸惑っていると、ミリスが俺の方に向いて不敵に微笑んでいた……


 


 ――ミリスの本音――


 

 ずっと、ずっと寂しかった、誰かに甘えたかった。

 

 でも、お母さんはもういない、お兄ちゃんとはいられない。

 

 だから、思い出に浸って我慢した。

 

 お母さんと暮らした家に住み着いて、お兄ちゃんから貰った石を御守りにして。

 

 イリーナさまに引き取られてからは、お姉ちゃんができたみたいで、正直嬉しかった。

 

 ルーシェさまとクレスさまも、最初は怖かったけど、とてもよくしてくれて、お姉ちゃんが増えたみたいだった。

 

 だけど、やっぱり羨ましかった……

 

 お兄ちゃんと並んで歩けて、自分の気持ちに素直になれるお姉ちゃんたちが……

 

 でも、お兄ちゃんが我慢しなくていいと、いっぱい甘やかしてくれると言ってくれた。


 私は、アナタの側にいたい。

 

 だから私は、アナタと影を重ねたい。

 

 そして私の影を、アナタの影で染めてください……



 

 【スキルの使用を確認しました。スロット2のセーブポイントを作成いたします……スロット2のセーブポイントを作成いたしました】



 

 ――やり直し勇者と影に溶ける少女 完――



ここまでミリス編を読んでくださって、ありがとうございました。


この子の話はずっと書きたかったので、一区切りまで書けてほっとしています。


次回更新は4/20(月)21時予定です。

以降は月・水・金の21時更新で進めていきます。


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