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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と影に溶ける少女

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ミリス編 終わる世界

いつも読みに来てくれてありがとうございます。


ミリス編

【終わる世界】


お楽しみください。

 


 ――ミリスの記憶 モス村近くの廃屋――

 

 

 村の人たちに追い出されてから、お母さんと私はボロボロの家に住みついた。

 

 私は相変わらず、村の人に貰ったと嘘をついて、お母さんに盗んだ野菜や魚を持って帰った。

 

 村の人たちは、私たちにとても冷たかった。

 

 けど男の人がたまに、こっそり家に来ては、お母さんと2人で何かをすると、食べ物を置いて帰っていく。

 

「ねぇ、お母さん……いつもあの人たちと何してるの?」

 

「うん? ただ遊んで帰っていくだけよ……アナタは知らなくて大丈夫……」

 

「えー、遊ぶなら私もするー」

 

「ダ〜メ! さぁご飯にしましょう」

 

「えー、ズルいー」

 

 お母さんは、私に遊びのことをいつも教えてくれなかった……

 


 

 しばらくしてお母さんは、1日のほとんどを寝て過ごすようになった。

 

 男の人が家に来ると、お母さんは起きて私を外に出すけど、その回数も日に日に少なくなっていった。

 

「お母さん、お体大丈夫?」

 

「……えぇ、大丈夫よ……でもちょっと寝てるわね……ご飯は、そこにあるから……」

 

「うん! 元気が出るもの、また貰ってくるね!」

 

 そう言って私は家を後にした。

 

 もうわかっていた……お母さんはもうすぐ動かなくなる……


 お城にいたときもそうだった。

 

 体を悪くして寝たきりになると、少しして動かなくなる。

 

 きっとお母さんも、もうすぐ動かなくなる。

 

 そう思うと私は、川上の村に向かう途中で泣き出してしゃがみ込んでしまった。

 

 その時、茂みの方からガサガサと音がすると、誰かが顔を出して話しかけてきた。

 

「お前、こんなところで何やってるんだ?」

 

「……グスッ、アナタ、誰?」

 

「俺か! 俺は将来、伝説の勇者になる男! クロードさまだ!」

 

 その少年は、声高らかに大袈裟なポーズを取りながら、名乗りを上げた。

 

「クロード……さま?」

 

「おう! だが今は、まだ修行の身……さまと呼ばれるには、まだ早いぜ!」

 

「えっと……じゃあクロード?」

 

「……まて! お前いくつだ?」

 

「うんと、たしか3つ……」

 

「だよな! なら、8つの俺が『お兄ちゃん』だ!」

 

「お兄……ちゃん?」

 

「おう! 将来の勇者クロードさまを『お兄ちゃん』と呼ぶ権利をお前にやろう!」

 

 その男の子は、私のお兄ちゃんになってくれると言ってくれた。

 

「で、お前は何でここにいるんだ?」

 

「……村に食べ物を貰いに……」

 

「そっか! 腹減ってんならこれ食うか?」

 

 そう言ってお兄ちゃんは、ズボンのポケットから葉っぱに包まれた何かをくれた。

 

「……これ、なぁに?」

 

「お前知らないのか? これはな! 蜜芋って言って、潰した芋と蜂蜜を混ぜたお菓子だよ!」

 

 私はお兄ちゃんから渡された包みを剥がして、なかにあった甘い匂いがする蜜芋を、一口食べた。

 

「……うぅん!! 美味しい!!」

 

「だろ! まだあるけど食べるか?」

 

「うん! 食べる!」

 

 私はこのとき、お母さんが動かなくなる不安を、忘れていた……



 

 それから私は、お兄ちゃんに会うのが楽しみになっていた。

 

 一緒に遊んでもらったり、お菓子を食べさせてもらったり、とても楽しい日々を過ごしていた。

 

 でもやっぱり、そんな日は長くは続かなかった。

 

 お母さんがだんだん動かなくなってきた。

 

 朝起きて、お水をあげるけど、ほとんど口からこぼしてしまう。

 

 そうなるころには、男の人たちは誰も来なくなった。

 

 私はいつものように、村で食べ物を盗んで帰ってくると、お母さんが食べやすいよう、すり潰してから口に運んであげるけど、やっぱりほとんどこぼしてしまう。

 

 そんな日が続き、私はいつの間にか、お兄ちゃんに会った川でしゃがみ込んでいた。

 

「お母さん、もう動かないよぉ、どうしよう……」

 

 私は不安を口にすると、それと同時に涙があふれてきてしまった。

 

 その時、初めて会ったときのように、お兄ちゃんが茂みから現れた。

 

「おう! また泣いてんのか? どうした?」

 

「……お……兄ちゃん……」

 

 私はお兄ちゃんに、今起きていることを話し出した。

 

「あのね……お母さんが、ぜんぜん動かなくて……ご飯もぜんぜん食べてくれなくて……」

 

「えっと、お母さん病気なのか? どこか悪いとか?」

 

「ううん、わかんない……でも、ここにくる前からずっと悪いの……」


 

「う〜ん、お医者さんのところには行ったのか?」

 

「行ってない……お金ないから、行っても見てもらえない」

 

 お兄ちゃんは、私に色々提案してくれるのに、私はそれを否定することしかできず、お兄ちゃんを悩ませた。

 

「う〜ん、どうしようかなぁ」

 

「やっぱり、無理だよね……お母さん……動かなくなっちゃうんだ……うぇ〜ん……」

 

「お、おい泣くなよ……えっと、そうだ! お前にいい物をやるよ!」

 

 お兄ちゃんはそう言うと、ポケットの中から綺麗な石を取り出した。

 

「グスッ……これ、なぁに?」

「ふっふっふ、これは伝説の勇者だけが見つけられる、魔法の石だ!」

 

「魔法の……石?」

 

「そうだ! これを持っていると、何でも願いが叶うって伝説の石だぞ! 特別にお前にやるよ!」

 

「い、いいの!?」

 

「勇者に二言はない!」

 

「……ありがとう、お兄ちゃん!」

 

 それは、私の一生の宝物を手に入れた瞬間だった。

 

「おう! ああ、それとまた蜜芋持ってきてるからやるよ! これなら、お前の母ちゃんも絶対食うだろ!」

 

「本当!?」

 

「ああ! こんな美味えの残すなんてありえないだろ!」

 

「わかった! すぐにお母さんに持って行くね!」

 

「おう! またな!」

 

 私はお兄ちゃんにバイバイをすると、魔法の石と蜜芋を抱えて、急いで家に引き返した……

 


 

 家への帰り道、家の方から数人の男たちが歩いてきた。

 

 私はとっさに男たちから身を隠し、茂みに潜むと、男たちの声が聞こえてきた。

 

「これで、心配のたねが消えたな!」

 

「いやぁ、病気持ちじゃなければなぁ、惜しかったなぁ」

 

「いいじゃねぇかよ! いい思いはできたんだからさ!」

 

「それもそうだな! それに村の厄介払いができて、きっと村のみんなも喜ぶぜ」


「でもガキはどうする? どこにもいなかったけど……」

 

「何言ってんだ、お前? ガキなんていなかっただろ?」


「あれ? そうだっけ……?」

 

 あの人たちは何を言ってるんだろう? それより、早くお母さんのところに帰らなきゃ!

 

 男たちが通り過ぎたのを確認して、家に帰ろうと走っていると、家の方から黒い煙が上がっているのが見えた……



 

 その黒煙の正体は、私の家だったものから立ち上がる大きな炎だった。

 

「……あれ? なんで家が……燃えてるの?」

 

 目の前の光景が理解できず、私はその場で立ち尽くしていた。

 

「家が……お母さん……お母さん!?」

 

 私は我に返り、お母さんの寝ていた部屋に向かって駆け出すが、燃え盛る炎の勢いに抗えず、家に入れなかった。

 

 そこへ村の住民たちが慌てた様子で現れた。

 

「おいおい! やっぱり、あの女の家が、燃えてるぞ!」

 

「早く消さないと、森にも火が移っちまうぞ!」

 

 村の人たちが、大声で騒ぎながら、川の水を運んで炎を消して回りだした。

 

「ねぇ! お母さんがいないの! 誰かお母さんを助けて!」

 

 私は必死に村人に声をかけるが、誰も私に気づいてくれなかった……



 

 火は夜明けとともに、鎮火された。

 

 村人たちは、火の広がりがないことを確認すると、そそくさと帰っていく。

 

 私は、燃え尽きた家のなかを、お母さんの寝ていた場所に向かってとぼとぼと歩いていた……

 


 

 そこには、1本の鉄杭があった……


 鉄杭の頭には鎖が繋がっていて、柱だったものに巻き付いていた。


 そして私は、その鉄杭が刺さっている場所に、恐る恐る視線を移すと……


 


 人の形をした、真っ黒な何かが、鉄杭に穿たれていた……

 

「お……母さん……?」

 


 

 こうして私の世界が、終わりを迎えた……


 


 ――ミリス編 終わる世界 完――

 


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次回もよろしくお願いします。

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