ミり■編 はじめての距離
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ミり■編
【はじめての距離】
お楽しみください。
――セレンディア城 西の塔 寝室――
謎の4人目のヒロインと会うために、セレーネと意を決して寝室に入ると、ベッドシーツを整えている1人の少女がいた。
歳は10代半ばだろうか、小柄な体つきの少女は、夜の闇のように黒い長髪を頭の後ろで束ね、ロングスカートのメイド服を着ていた。
「クロードさん! 早く声をかけてください!」
「あ、ああ」
俺はセレーネに促され、必死に言葉を捻りだした。
「……な、なぁそこの君……えっと……お疲れさま……」
俺のつたない声かけに、そのメイドは動きを止め、俺に向き直すと頭を下げた。
「おかえりなさいませ、クロードさま……大変申し訳ありません、まだベッドの準備が済んでおりませんので、もうしばらくお待ちください」
その少女は淡々とした口調で、俺への挨拶と業務の報告をしてきた。
「あ、ああ……大丈夫……ゆっくりでいいぞ……」
「お心遣い、ありがとうございます」
そう言ってもう一度、俺に向かって一礼すると、彼女は作業に戻ってしまった。
「クロードさん! 何やってるんですか!? もっと話して! 口説いて! 押し倒して!」
(わ、わかってるって! いや、押し倒さないけど!)
セレーネの後押しに反論すると、俺はもう一度、そのメイドに話しかけた。
「その! 君は……えっと……」
するとセレーネがメイドの子について補足した。
「イリーナさんの侍女をしてる子ですよ!」
「えっと、イリーナの侍女の子……だよね?」
俺の言葉に一瞬――メイドの動きが止まった……
そして、また姿勢を俺に向けると、また頭を下げて返答した。
「はい……イリーナさまの侍女頭を務めております、『ミリス』と申します……」
「ミリス……か、よろしく……」
「はい、よろしくお願いいたします……」
「……あれ? イリーナの侍女って……」
「はい、私だけでございます……なので侍女頭と言っても、役職があるのみで、普通の侍女と変わりません」
「そ、そうか……でも偉いな! まだ若そうに見えるけど……いくつだ?」
「申し訳ありません……生まれがよくなく、おそらく15、6としか……」
「そ、そうか……それはすまなかった……」
「いえ、問題ございません」
そう言って、彼女はまた一礼すると作業に戻ってしまった。
(ダメだ! もっと突っ込んで話さないと、会話が続かない……でも、何を話せば……)
「クロードさん、安心してください……やはりミリスさんの存在を認識出来てる間は、スキルの影響を受けないみたいです」
そして、セレーネから衝撃の事実を突き付けられた。
「ミリスさんも、クロードさんと一緒に魔王討伐に参加したメンバーの1人です! 必ずどこかに突破口はあります!」
(……はっ!? お前今なんて言った? 一緒にって、いつからだ!?)
「……あっ! そうだ、説明してなかった! というより、説明しちゃうと記憶が飛ぶかもしれないからできなかったんです……」
(まっ、待て! じゃあもしかして、あの子は……)
そう、俺が旅に出たのは5年前……つまり彼女は……
「そうです……おそらく10歳の時に、クロードさんの旅に同行しています」
俺は驚愕してしまった……10歳といえば、俺とイリーナが勇者と聖女として運命付けられた歳だ。
そこから訓練を受けて旅に出た俺たちでさえ、魔王討伐の旅は過酷なものだった。
それをこの子は10歳で、しかも初めから一緒だったなんて……
「クロードさん、あの子のステータスを見ましたが、標準より少し高いくらいです……おそらく戦闘ではなく、身の回りのお世話をするために同行したのでは?」
(だとしても、仲間を忘れるなんて最低だろ!)
俺は自身を心の中で叱責し、ミリスに歩み寄りながら、声をかけた。
「ミリス、少し話をしないか?」
するとミリスは、明らかな動揺を見せながら、俺の方に向き直した。
「話、ですか?」
「ああ、そうだ! まだ、お前と何も話せていない……だから話をしよう!」
「……お戯れはお控えください、クロードさまにはイリーナさまたちがいらっしゃいます……シーツの交換が済みましたので、これで失礼いたします」
そう言って、俺の横を通り過ぎようとする彼女の腕を掴んで呼び止めた。
「待ってくれミリス! 話を……」
そのとき――俺は考えて行動するべきだった。
彼女は、幼く、そしてか弱かった……
「ひゃっ!?」
俺が掴んだ腕は、呼び止めるつもりが引き寄せる勢いになってしまい、ミリスは小さな悲鳴をあげながら体勢を崩し、仰向けになってベッドに倒れ込んでしまった。
傍から見ればそれは、自室のベッドにメイドを押し倒している主人のそれだった……
「す、すまないミリス! 大丈夫か!?」
俺がミリスに謝罪して起こそうと近づくと、彼女が弱々しくつぶやいた。
「おに……クロード、さま……その……夜伽は初めてで…………喜ばせ方が、わからなくて……なので…………お好きに……なさってください……」
「……な、何もしない……ぞ!」
「いや、揺れてますやん! 私ならいきますけど!?」
(黙れ! 変態女神! あと鼻血とよだれを拭け!)
俺は今度こそ、ミリスの体を起こして、彼女に謝罪した。
「ミリス、色々とすまなかった……怪我はないか?」
「……問題ありません……私こそ、お見苦しい姿を見せてしまい申し訳ありません」
彼女も勘違いだと気付いてくれたのか、逆に謝ってきた。
「いや、本当にすまなかった……話は戻るが、少し話さないか?」
「……かしこまりました、何かお飲み物を用意いたします」
「ああ、ありがとう」
ミリスの提案に同意した俺は、彼女を視界から外さないように気を付けながら、リビングへと戻った……
ここから、どうやってスキルから逃れるか、まだ何も思いつかない……
――はじめての距離 完――
最後までお読みいただきありがとうございます。
押し倒しシーン、アニメ化しねぇかなぁ~
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▼次回予告
ミリス編
『幸せの形』
明日 21時 投稿予定です!!




